旅立ち
今日は良い日、実に素晴らしい日だ。
なんせ今日は旅立ちの日。久方ぶりに未踏の地に足を踏み出せる日だ。
胸が高鳴り気分が高揚し続けている。本当に久しぶりに心が富んでいる。
「準備は万端、気分は上々、天気は快晴。今日は絶好の旅日和!!さぁさぁ行くぞ未知の地へ!!レッツゴー異世界!!」
あまりの心の高鳴りに、私は誰もいない部屋で一人で騒ぎ出した。
しかし無理もないだろう。なんせ今日は幾千年幾万年待ちかねた日なのだから。
「顔見知りに別れは告げた。やり残したことなど有りはしない。さぁさぁ開け異世界への扉よ!!」
私は開門用の魔法の類ではなく、全力の魔力砲を発動する。
異世界への行き方は至極簡単。世界に穴を開ければいい。
異世界まで届くほどの深い穴を、空間を破り割いて掘ればいいだけだ。簡単簡単。
一瞬の間視界を覆う魔力砲の輝き。凄まじい音と光が部屋を蹂躙する。
音と光が落ち着いた頃、目の前には真っ黒な穴が空間に開いていた。
すべてを飲み込む暗黒が、部屋の空気を吸いつくす。
「初めて開くけどむっちゃ既視感あるなコレ。ブラックホールみたいだけど弱いし色々びみょ~に違うし。とりま入ってみますか~。怖いけど」
私は猛烈な勢いで部屋の空気を吸いつくす暗黒の穴へ足を踏み入れた。