エピローグ
昔々、ある世界のある所に、一人の旅好きの魔法使いがいました。
魔法使いは西へ東へ、気の向くままに。
北へ南へ、風吹く方へ。
ただひたすらに大した目的もなく、旅を続けました。
幾星霜の時が流ようと、旅を続けました。
やがて、未踏の地が無くなる時が来る時が来ました。
どこへ行こうと既知の風景。
何が起きようと新鮮味の欠片も無い。
そんな旅路に魔法使いは嫌気が差しました。
魔法使いは未踏の地を求めて、あまねく知識を貪り始めました。
しかし、この世の全ての知識を貪ろうと未踏の地は見つかりませんでした。
たとえ、どれだけ知識を得ようと、星は何も変わらない。
未踏の地が、ある日突然現れるなど、あり得ないのです。
やがて、あの世の知識にも手を出し始めました。
神の住まう天界へ、罪人集う地獄の底へ。
生きたまま、死者の赴く地へ赴いて。
数多の知識を求めて貪り尽くし、全ての未踏を踏み尽くして。
やがて、気が遠くなるほどの時が過ぎ、魔法使いは未踏の地を見つけました。
魔法使いは研究を始めました。未踏の地、異世界への行き方を求めて。
研究は意外な事に案外早く終わりました。
道のりは、驚くほどに単純で。
頭が痛くなるほどに困難なものでした。
しかし、魔法使いにとってそんな障害は些事に等しいモノでした。
魔法使いは愛した者がいた地を離れて、故郷に別れを告げ、未踏の大地へ歩み始めました。
エピローグと1話目は導入なので短いです。