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聖都ビザンツに到着

 僕とリルがオリント聖教国に入ると、聞いていた以上に悲惨な状況だった。大地は荒廃し、川の水は枯れ、畑の作物もすべてしおれた状態だ。そして僕達は最初の街に立ち寄って、そこでルシフの手先のリッチを討伐した。その後、大地の浄化を行い、大精霊達にお願いして今まで通りに復元してもらった。



「終わったわよ。」


「本当ですか?!」


「上に来てみればわかるわ!」



 司教を先頭に教会の地下に避難していた住民達がぞろぞろと外に出てきた。そして、街を見て感動した。



「街に緑があるわ!信じられない!」


「こっちの水路には水が流れているぞ!」



 もう、住民達は大騒ぎだ。



「郊外の畑も元通りになってるわよ。」


「畑がですか?!」



 リルの言葉を聞いて住民達が慌てて郊外へと走り出す。そして郊外の景色を見て座り込んでしまった。そこには、今まで育てていた野菜や果物が新鮮な状態で実っていたのだ。



「おお!神よ!感謝します!」



 感動していた住民達がリルに平伏した。



「あなた達何か誤解しているようだけど、私はただの天使よ。畑や街を元に戻したのは大精霊達なんだから。それにリッチを倒したのはショ・・・」


「リル!それ以上は言わないで!」


「わかったわよ。」

 


 その日の夜は、日中に畑から収穫した野菜や果実、それと僕の魔法袋から出した肉でお祭りとなった。祭りと言ってもお酒はない。大人達は残念がっていたが、これからみんなで力を合わせてお酒も造れるようになるだろう。


 そして僕とリルはみんなに見送られながら聖都ビザンツに向けて出発した。郊外に出た僕達は上空へと飛翔したのだが、下に見える景色は以前とは全然違っていた。



「結構な範囲を浄化したみたいね。」


「それはそうさ。二人で力を合わせたんだからね。」



 その後、再び荒廃した地域に入った。少し先に紫色をした湖が見える。何故紫色をしているのか不思議に思いながら湖の真上まで来た。すると、湖から突然紫色の液体が僕達に向かって放たれた。下を見ると湖にヒドラがいる。だが、普通のヒドラとは様子が違う。どす黒い色をしていたのだ。



「あのヒドラ、もしかしたらルシフの影響を受けてるかもね。」


「間違いないと思うわ。あいつから感じられる魔力に気味悪い冷たさを感じるもの。」



 僕とリルは地上に舞い降りた。辺り一帯に毒々しい空気が漂っている。僕とリルは、神力で身の回りにシールドを張っている。



「この辺り一帯の毒はこいつが原因のようね。」



 ヒドラの口から紫色の空気が外に出ていた。恐らく、息をするだけでこの辺りに毒をまき散らしているのだろう。



「私にやらせてくれる?」


「いいけど。大丈夫?」


「余裕よ。」



 リルが神力を解放して再び舞い上がった。突然現れた神聖な光の球にヒドラは戸惑ったようだったがすぐさま攻撃してきた。



ビュッ ドバッ ベチャ



 リルは吐き出された毒液を軽々と避けて、剣でヒドラの首を斬り落とした。



スパッン



「えっ?!どういうこと?」



 斬り落とされたはずのヒドラの首が元に戻っていく。恐らく再生能力があるのだ。目の前にいるヒドラの首は7つ。もしかしたら7つを同時に斬り落とさないと再生するのかもしれない。


 残りの6つの首から炎、氷、風、土槍、雷、光線で攻撃を仕掛けてきた。今度は避けるのが容易ではない。



『レインボーシールド』



 リルは自分の身体の前にシールドを張って防いだ。



「リル!7つの首を同時斬り落とすんだ!」


「そんなの無茶よ!」


「神力を最大限にしてイメージしてごらん!リルならできるから!」


「わかったわ!」



 リルは手に持つ剣を仕舞い、精神を集中させていく。すると、リルの体を覆っていた光が一段と眩しく輝き始め、そして手に光り輝く大剣が現れた。

  


『神剣斬』



 リルが大剣を振ると、光の大剣は巨大化して辺り一帯の枯れた木々をなぎ倒し、目の前にいたヒドラの首を斬ると思いきや、ヒドラそのものを消滅させてしまった。



「リル!凄いよ!見てごらんよ!はるか向こうまで更地になってるよ。」


「まあ、こんなもんよ。」



 腰に手を当てて自慢げにしているリルが物凄く可愛く思えた。



「リル。この辺りも浄化していこうか。」


「そうね。このままじゃ生き物が住めそうもないもんね。」



 僕達は辺り一体を浄化して再び聖都に向かった。その後も途中で瘴気に侵された魔獣を討伐したり、大地を浄化しながら進んできた。そしていよいよ聖都の近くまでたどり着いたのだが、聖都に近づくにつれて瘴気が濃くなっている。



「恐らくこの様子だと聖都の住民は絶望的ね。」


「逃げ出してくれていればいいんだけどな~。」


「無理かも。聖都にはケルベロスがいるんでしょ?あいつが逃げ出すのを見逃すとは思えないわ。」



 僕とリルは再び体の周りにシールドを張って聖都の中に入った。悲惨な状況だ。ほとんどの建物は原形をとどめていない。街のあちらこちらに白骨化した死体が転がっている。まるで日本にいた時に見た地獄絵のようだ。



「どうやら敵さんのお出ましのようだよ。」



 大聖堂から黒い雲のようなものがモクモクと沸き上がり、そこからおびただしい悪魔の群がこちらに向かってきた。先頭にはケルベロスが空中を歩くようにしている。そして一番後ろには、ひと際大きなオーラをした存在が控えていた。



「あの奥にいるのが最後の四天王のようね。」


「ああ、結構な力を感じるよ。」


「多分、ルシフの影響で強化されているのかも。」



 悪魔達を見ていると、僕とリルの周りに小さな光が無数に集まり始めた。そして、その小さな光が集まりいくつもの人型となっていく。そしてひと際明るい光が絶世の美女へと変化した。



「ショウさん。リルさん。初めまして。私は精霊女王のソフィアです。生命神ライフ様から言われてあなた方のお手伝いに来ました。」


「ありがとうございます。」


「ウンディーネが言った通り、ショウさんは本当にアテナ様に似てるんですね。不思議な感覚ですよ。」



 周りを見ると、先日協力してくれたウンディーネ、ドライアド、ノームの他に、燃えるような赤い髪をした火の大精霊サラマンダー、白い髪をした風の大精霊シルフ、双子で白い服を着た光の大精霊ウイスプ、双子で黒い服を着た闇の大精霊シェイドの7大精霊がいた。



「また会ったわね。あいつらが相手なのね。私達も協力するわよ。」


「お願いします。」



 悪魔達の数が多すぎてどうしようかと考えていたが、これでもう安心だ。するとリルが言った。



「ここは私達に任せて、ショウはルシフのところに行って!」


「わかったよ。」



 リルと大精霊達が悪魔を蹴散らして僕の進む道を作ってくれた。僕はそのまま大聖堂に向かった。



「待てー!ルシフ様のところにはいかせんぞ!」



 四天王の命令を受けて、ケルベロスが僕に向かってこようとしている。だが、精霊女王のソフィアがケルベロスの前に立ち塞がった。



「くっそー!こうなれば俺様が直ぐに貴様らを皆殺しにしてくれるわ!」



 リルが四天王の前に出た。



「あなたの相手は私よ。」


「小癪な奴だ!ルシフ様の側近のこのマモンに勝てるとでも思っているのか!大精霊どもなど相手ではないわ!」



 マモンの身体から瘴気が溢れ出し、漆黒のオーラがどんどん大きくなる。やはりルシフの影響をかなり受けているようだ。



「ルシフ様を復活させるために、この国の連中に悲しみ憎しみ苦しみ、それに恐怖を与えたからな。その甲斐があったぞ!見ろ!この力を!どんどん溢れてくるわ!ハッハッハッハッ」



 リルの顔が真っ赤になり、全身から眩しい光が辺り一帯を照らし始めた。そして背中には純白の翼が出た。



「き、き、貴様!天使だったか!神々の犬め!」



 マモンの身体から黒い手が何本も出て、その黒い触手がリルの身体を拘束した。そしてマモンの腹に毒々しい口が現れた。



「お前など食い殺してくれるわ!」



 周りにいた大精霊達は戦いながらリルを心配そうに見ている。だが、リルはみんなの心配をよそに笑いながら言った。



「あなた本当に四天王なの?サターニやディアブの方がはるかに強かったわよ。」


「許さん!絶対に許さん!」



 黒い触手がリルを口に引きずり込もうとしている。リルが全身から神力を放出した。すると黒い触手は光の粒子になって消えていき、マモンはその眩しさに後ずさりした。



「これはどう?うけきれる?」



 リルが光り輝く剣を振り下ろした。マモンは慌てて避けたが間に合わない。左腕が斬り落とされた。



グハッ



「やはり大したことないわね。」


「おのれー!」



 マモンは腕を再生しようとしとする。だが、腕は再生しない。



「何故だ?なぜ再生しない!」


「無駄よ!魂ごと斬ったから!」


「そんな馬鹿な!ただの天使にそんな力があるはずが————どういうことだ?!」


「いたぶるのは好きじゃないから終わりにしてあげるわ!」



『滅びなさい!』



 リルが下段から剣を振りあげた。すると剣の軌道に沿って空気も音を出しながら斬れていく。



バリバリバリバリ



グハッ グオー


「ルシフ様—————!!!」



 マモンはそのまま光の粒子となって消えてしまった。


 同じころ精霊女王はケルベロスと対峙していた。ケルベロスが黒い瘴気を纏わせながら鋭い爪と牙で攻撃をしかける。だが精霊女王には届かない。精霊女王の前には厚い結界が張られているのだ。



バキッ



「醜いわね。」



 牙や爪での攻撃が無駄だと分かったのか、ケルベロスは3つある頭からそれぞれ違う攻撃を仕掛けた。1つは黒炎、1つは黒氷、1つは黒雷だ。するとそこに双子の大精霊ウイスプとシェイプが現れた。



「女王様!危ない!」



ソフィアを守るように前に立った双子の大精霊が同時に手を前に出した。すると、突然黒い渦が発生して3つの攻撃を次々と吸い込んでしまった。



「大丈夫?ソフィア様!」


「大丈夫よ!ありがとう。」


「えへ!褒められちゃった!」



 ソフィアがケルベロスに向かって魔法を唱えた。



「すべてを浄化しなさい!『レインボークラッシュ』」



 すると上空から七色の光がケルベロスに降り注ぐ。ケルベロスは苦しみもがくが逃げられない。そして光の粒子となって消えていった。ソフィアが辺りを見渡すと、ちょうどリルも戦い終わり、サラマンダーが最後の悪魔達を炎の攻撃で消滅させていた。



「どうやら終わったようですね。ショウさんは大丈夫かしら。」


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