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オリント聖教国の浄化

 司教が説明を始めた。ある日突然空の様子がおかしくなったと思ったら、日照りが続いて作物が育たなくなったようだ。さらに魔獣達が街を襲うようになって、住民の大半が街から逃げ出したらしい。ここ最近では、夜になると死霊系の魔物達が現れ、人々を襲っている。街でなくなった人達はゾンビとして復活し、さらに人々を襲っているのだ。



「ショウ。死霊系の魔物は悪魔族の眷属よ。特にリッチは厄介ね。」


「リッチか~。僕、ゴーストとかガイコツとか苦手なんだよな~。ましてやゾンビなんかが出てきたら最悪だよ。」


「何言ってるのよ。人々を苦しめる魔物じゃない。放っておけないわよ。」



 死霊系の魔物達は夕方から現れるようだった。そこで夕方までは司祭にオリント聖教国について話を聞いて過ごした。



「そろそろね。」


「皆さんはここに隠れていてください。すべて終わったら声を掛けますから。」


「ありがとうございます。どうかお気を付けて。」



 僕とリルは教会の地下から外に出た。すでに日が暮れかかり薄暗くなっていた。辺り一帯には青白い炎、日本で言う人魂が浮いている。そしてその青白い炎がゴーストやゾンビに変化していった。



「リル。行こうか。」


「了解よ。」



 僕達が歩き始めるとゴースト達が近寄ってくる。そして僕達を囲み始めた。物凄い数だ。もしかしたらこの街の犠牲者だけではないのかもしれない。この死霊系のモンスター達は突然命を絶たれ、成仏できずに悲しみ苦しみの中にいるのだろう。悲しすぎる。


 モンスター達の中からどす黒いオーラを放ちながら膨大な魔力を持った存在が姿を見せた。骸骨の姿をしている。



「リッチよ。」


「四天王と同程度のようだね。僕が相手をするよ。」


「わかったわ。なら、他のモンスター達は私が浄化するわ。」


「お願いするよ。」



 僕がリッチのもとに向かうといきなり炎で攻撃してきた。



「危ないな~。」


「ハッハッハッハッ 流石に避けるか。だが、この攻撃からは逃れられまい。」



 リッチが何やら唱えながら手を僕に向けた。すると、僕の身体の周りに黒い靄が現れ、僕の身体を拘束していく。以前にも同じようなことがあったことを思い出した。僕は同じようにテレポートで逃れようとしたがテレポートができない。



「無駄だ!私の魔力量は四天王で最強のサターニ様よりも多いのだ。私の魔法から逃れることなどできぬ。」



 リッチの手にデスサイズが現れた。ゆらゆらと黒いオーラを放っている。リッチはデスサイズを持って僕に近づいてきた。



「しょうがないな~。」



 僕は身体の底に眠るエネルギーを解放した。すると身体から眩しい光が放たれ、僕を拘束している黒い靄がどんどん消えていく。



「お前は一体何者だ?!その力は何なんだ!」


「お前も元々人間だったんだろ?何か理由があってルシフの配下になったんだろ?」


「それがどうした!俺を苦しみ、憎しみから救ってくれたのはルシフ様なのだ!俺はルシフ様のためなら地獄に落ちてもよいのだ!」


「哀れな奴だな。自分が苦しみから逃れるために人を苦しませるとはな。どうやら容赦する必要はなさそうだな。」


「ハッハッハッハッ たかが拘束を解いたぐらいで偉そうにするな。死ね!」



 リッチがデスサイズで攻撃してきた。どうやらこのデスサイズは物質だけでなく、空間まで斬るようだ。デスサイズの振られた後の空間が一瞬揺らいでいた。僕は剣を取り出して気ではなく神力を注ぎ込んだ。デスサイズが黒色のオーラを放っているのに対して、僕の剣からは虹色の光が出ている。



「死ね~!」


カッキン バキッ



 デスサイズと僕の剣がぶつかり合った。その衝撃でデスサイズが2つに折れてしまった。そして僕はリッチを上段から斬った。



『万物を切り裂け!』



 スパッ



「お、お、おのれ~・・・」



 リッチはそのまま消えてしまった。



「終わったな。リルはどうかな。」



 リルのもとに行くと、リルが純白の翼を出して神々しいオーラを地上に向けてはなっているところだった。神々しい光に触れてゴースト達が浄化され、光の粒子となって消えていく。



「終わったようだね。リル。」


「まあね。結構大変だったわよ。最初は普通に相手をしていたけどきりがなくて・・・。」


「それで神力を解放したんだね。」


「そうよ。私もまだまだね。」


「僕だって神力を使ったよ。」


「ショウが力を解放したってことは結構強かったのね。」


「まあね。リッチには普通の物理攻撃は効かないからさ。」



 上空に舞い上がって辺り一帯を見渡すと、郊外にあっただろうと思われる畑も砂漠化している。魔物達がいなくなっても、このままではここで生活していくのは難しいだろう。



「リル。この辺り一帯を浄化したいんだけど手伝ってくれるかな。」


「もちろんよ。だったら精霊達にも協力してもらった方がいいわね。」


「精霊?」


「そうよ。」


「精霊がいるの?」


「ショウ。あなた何言ってるのよ。神獣がいるのよ。精霊だっているに決まってるじゃない。」


「でも一度も精霊の話なんかしなかったし、あったこともないんだから知ってるはずないだろ。」


「ま~、確かにね。」



 リルが目を閉じて精神を集中し始めた。するとリルの周りに小さな光がどんどん集まってくる。そして人の姿へと変化した。



「な~んだ。フェンリルじゃない。私を呼んだ?」



 そこに現れたのは緑の髪をした大人の美女だ。



「ドライアド。呼びかけに答えてくれてありがとうね。でも、私はもうフェンリルじゃないわよ。」


「そうなの?」


「そうよ。天界で修行して天使になったのよ。」


「うっそー!天使に?!」



 リルが変身するとドライアドも納得したようだ。



「なんか信じられない!」


「お願いがあるんだけど、ここにいるショウと一緒にこの辺りを浄化するから、森や草原、それに土地を復元して欲しいのよ。」



 ドライアドが僕を見た。そして固まってしまった。



「どうしてアテナ様がここに?!」


「僕はアテナ様じゃないですよ。人族のショウです。」


「そうなのね。わかったわ。でも私だけじゃ無理だから、ウンディーネとノームも呼ぶわね。」


「そうよね。水の精霊と大地の精霊がいた方がいいわね。」



 ドライアドが目をつむってしばらくすると再び小さな光があつまってきた。そして水色の髪をした美女とかなりマッチョな男性が現れた。2人にも状況を説明して協力してもらうことにした。



「リルさん。いくら天使になったからって、あなただけでこれだけの大地を浄化できるの?」


「大丈夫よ。ショウにも協力してもらうから。」


 

 3人は不思議そうに僕を見た。



「ショウ。やるわよ。」


「そうだね。」



 リルも僕も神力を解放した。リルに身体がまぶしい光に包まれ背中に純白の翼が現れ、そして僕の身体は一段と神々しい光に包まれ背中に黄金の翼が現れた。僕達の様子を見ていた3人は、驚きのあまり固まってしまった。



「行くわよ。」



 僕とリルは上空に舞い上がり辺り一帯を見渡した。酷いありさまだ。見える範囲の大地は一面荒廃している。僕とリルは心に清らかな大地を思い描きながら同時に念じた。



『清らかなれ!』 


 

 すると、空から光の粒子が雨のように降り注ぎ始めた。その光は暖かく、まるでゆりかごの中にいるような心地よさが辺りを満たしていく。



「私達も負けてられないわ。」



 ドライアドとウンディーネ、ノームの身体が光始めた。そして空から雨が降り注ぎ、大地が肥沃さを取り戻し、草木が生い茂り始めた。畑の跡地には今まで育っていただろう野菜が実り始めた。



「終わったわよ。」


「ありがとうね。ドライアド、ウンディーネ、ノーム。」


「お安い御用よ。でもこのあたりは大丈夫だけど、この国全体が元に戻ったわけじゃないわよ。」


「そうですね。これからリルとルシフを討伐するんです。そうしたらもう一度お願いできますか?」


「ルシフを討伐?!やっぱりあなたはただの人族じゃなさそうね。」



 するとノームが話しかけてきた。



「俺も黄金の翼なんて初めて見たぜ!お前さん、本当に人族か?」


「ショウは天界で修行して現人神になったのよ。」



 すると3人が僕に片膝をついた。



「知らぬこととはいえ、申し訳ありませんでした。」


「やめてくださいよ。さっきも言いましたけど、僕は人族ですから。精霊様達に敬語使われるような存在じゃないですから。」



 ノームが大声で笑い始めた。



「ハッハッハッハッ 気に入ったぞ!ショウ!ただ一つ言っておくが、我らはただの精霊ではない。大精霊だ。」


「大精霊って天使と同等の存在じゃないですか。なら余計に立場が逆ですよ。」


「フッフッフッ 面白いわね。私もあなたを気に入ったわ。ショウ君。」



 ウンディーネが僕を抱きしめてきた。息ができない。するとリルが怒り始めた。



「ウンディーネ!ショウは私の婚約者なんだからね!」


「ごめんなさい。でもかわいいんだもん。」



 そんなこんなで3人は帰っていった。僕とリルは隠れている人達を呼びに教会の地下に行った。


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