ショウ、現人神になる?!
僕とリルの天界での修業が始まった。リルと僕とでは強化の目的も違えばその訓練方法も違う。だが、厳しさはどちらも同じだ。リルも僕も弱音を吐くことなく続けた。二度とお互いを失いたくないからだ。
「リル!あなたはもう魔法は使えないのよ!魔法は体中に魔力を流すだけで使えたんだろうけど、神力は別物なの!精神集中が足りないわ!」
「ありがとうございます。ライフ様。」
ここでリルも少し気づいたようだ。気術を使えるように訓練した時、精神の集中力を高めることが重要だった。実は気術の訓練と神力の訓練はかなり似ている。ただ、その集中するレベルが圧倒的に違うだけなのだ。
その頃、僕はフドウ様のもとで実践的な訓練を積んでいた。フドウ様が作り出す強力な魔獣と戦うのだ。中には僕の神力が全く通用しないドラゴンがいたり、いくら気術を使って斬っても傷一つつかないゴーレムがいたりした。
「ショウ。以前のお前は神力の1万分の1程度、修行した今だって1000分の1程度しか使えてないんだ。もっと精神を集中してみろ!」
サターニと戦った時、最初から全力を出したが互角だった。だが、リルが傷を負った瞬間、僕の中で何かが弾けた。あの時の感覚はせき止められていたものが、一気に流れたような感覚だった。あの時の感覚を取り戻そうと必死に精神集中しながら訓練に臨んだ。
「だんだん良くなってるな。だが、まだまだだ。その程度の力ではルシフには勝てないぞ!もっとだ!もっと集中しろ!」
するとアテナ様が僕の訓練の様子を見に来た。そして、アテナ様が手を前に向けるとドラゴンの口元に無残な姿のリルがいた。物凄くリアルだ。リルの垂れ下がった手からポタポタと血が流れている。そしてドラゴンはそのままリルを噛み砕いた。
「やめろー!」
次の瞬間、僕の身体の中でせき止められていたものが一気に流れだした。僕の身体が神々しく光始め、背中に黄金の翼が出た。
『消えろ!』
僕の言葉と同時に、今まで僕の神力ではどうにもできなかったドラゴンがどんどん薄くなっていく。そして光の粒子となって消えてしまった。さらにゴーレムが5体現れた。1体も倒すこともできなかった相手だ。僕が意識を集中すると右手に神々しく光る剣が現れた。その剣に気を流し込み、ゴーレムに向かって行った。
バキン ガキン スパッ シュッ
5体のゴーレムは胴体2つに分かれ、光の粒子となって消えていく。
パチパチパチ
拍手の方向を見ると、そこにはアテナ様とフドウ様がいた。
「なるほど。ショウの力の源は愛でしたか。」
「そうみたいね。」
2人の言葉を聞いて納得した。前世でもこの世界でも僕は愛に飢えていたのかもしれない。誰かから愛されたいとずっと思い続けていたのかもしれない。だからこそ、愛する者の命が脅かされたとき、僕は持っている以上の力を発揮するのだろう。
「ショウ。今の感覚を忘れるな!今の力を使いこなせるようになるまで修行だ!」
「はい!」
その頃、リルの修行でも変化が見られた。どこからともなく飛んでくる石を避けるのだが、目や耳に頼っているのでは間に合わない。神力を纏わせて予測することができなければ不可能なのだ。
バコッ ボコッ バコン
グハッ
傷だらけになったリルの身体に変化が起こり始めた。身体が少しづつ光始めているのだ。
「リル!あなたこのままでいいの!あなたはショウの足手まといなのよ!あなたのせいでしょうがルシフに殺されてもいいの!」
「嫌!嫌!絶対に嫌!」
「ならもっと集中しなさい!」
リルの身体から神々しい光が放たれた。そしてリルの身体を光の球が覆っていく。
スッ スッ スッ サッ
「やればできるじゃない!その感覚を忘れないで!」
「はい!」
その後、僕はドラゴン数体とゴーレム数体を同時に相手できるまでになった。リルは神力を使って物を燃やしたり移動させたりテレポートさせたりと、今までの僕と同じことができるようになっていた。
「では、フドウ様。お願いします。」
「おお、どっからでもかかってこい!」
アテナ様、ライフ様、他の神々やリルが見守る中、僕とフドウ様の模擬戦が始まった。前回は僕がフドウ様に触れれば勝ちだったが今回は違う。真剣勝負だ。
カキン バキン ドッカーン バリバリバリ
グハッ ゲボッ
バキバキバキ カキン ドッカーン
「ハーハーハー 強くなったな。ショウ。だがこれで最後だ!受け止めてみよ!」
「ハーハーハー」
フドウの身体が巨大な光りの竜へと変化した。神々しい光を放ちながら大きな口を開けて僕に向かってくる。
僕は全エネルギーを解放した。背中にから黄金の翼が出て、全身が眩しく光っている。僕の右手に眩しい光を放つ巨大な剣が現れた。
『止まれ!』
光の竜が僕を飲み込もうとした時に、僕は竜の口に剣を当てて念じた。すると、剣から出た眩しい光の糸が竜の身体を拘束していく。そして竜は動きを止めた。
パチパチパチパチ
神々から拍手が沸き起こった。竜の姿になっていた武神のフドウ様も元の姿に戻ってやってきた。
「ショウ!まさかここまで成長するとはな。驚いたぞ!もはや現人神だな。ハッハッハッハッ」
最高神のアテナ様がやってきた。
「ショウ。リル。よく頑張ったわね。これであなた達の修行も終わりよ。地上のことは任せたわ。よろしくね。」
「はい!」
「あとね。ショウは自分の寿命のことを気にしているようだけど、その必要はないわ。」
「どういうことですか?」
「そのうちわかるわよ。じゃあまたね。」
僕とリルは地上に戻された。気付けば古代遺跡にあった祭壇の前にいた。外からボルフ達の鳴き声が聞こえてきた。どうやら僕達が戻ってきたことに気付いたようだ。
「久しぶりだったな。ボルフ。」
ウォン ウォン
ボルフを筆頭にシルバーウルフ達が集まってきた。見ると群れの数も増えて30匹ほどいた。
「これからどうするの?」
「オリント聖教国にいくさ。奴を放っておけないからね。」
「ルシフのこと?」
「そうさ。多分、聖教国にはルシフと残りの四天王がいるはずだからね。」
「わかったわ。なら、ヨハネス王国に行かないと。」
「でも、今日は久しぶりにここでゆっくりしようか。」
「そうね。」
リルが僕の手を握ってきた。僕も握り返す。そしてその日はボルフ達を連れて森の中を散策した。たまにホーンラビットやレッドボアと出くわすが、僕達を見て慌てて逃げていく。昔と逆だ。レッドボアに追いかけられていた時が懐かしく感じられた。
「ショウ。あなたいくつになったの?」
「よくわからないけど、多分18歳ぐらいじゃないかな~。自分の年を気にしてる暇がなかったからね。」
「そうね。でも、アテナ様が最後に言ったことが気になるのよね。あれってどういう意味なの?」
「ああ、年のことね。リルは神獣のフェンリルだったから寿命がないけど、僕は普通の人間だから100歳ぐらいまでしか生きられないよね。それに年とともに老化するからさ。アル達と会った時から気になってたんだよ。」
「そうだったんだ~。全然気が付かなかったわ。ごめんね。」
「でも、アテナ様がもう心配する必要はないとか言ってたよね?どういう意味なんだろう?」
「もしかしたら本当に現人神になったんじゃない?」
「まっさか~!初代皇帝のタケル様だって寿命を終えたんだから、平凡な日本人だった僕が現人神なんてありえないよ。」
リルと繋いでいる手が温かく感じられた。そして、偶然出くわしたキングボアを討伐して古代遺跡まで戻った。やはりキングボアの肉は最高だ。レッドボアよりもはるかに柔らかい。シルバーウルフ達も満足そうに食べている。シルバーウルフ達の数が増えて肉が足りなそうだったので、今まで討伐した魔獣を魔法袋から取り出してシルバーウルフ達にあげた。
そして翌朝、僕達は再びヨハネス王国の王都にテレポートした。
「ウオーレンさんに挨拶していこうか。」
「そうね。エリーナにも会いたいしね。」
僕達はウオーレン辺境伯の屋敷に向かった。すると屋敷の庭にロベルト達がいた。
「お久しぶりです。ロベルトさん。どうしてここに?」
「ショウにリルじゃないか!しばらく見ないうちに大きくなったな~!もう俺達と変わらないじゃないか!」
「そうですか~。」
するとミックが教えてくれた。
「ウオーレン様は今やこの国の侯爵になられて宰相なんだよ。孤児院の件で、この国に多大なる貢献をしたって認められたんだよ。フィリップ国王から直々に任命されたらしいぜ!」
「そうなんですか~。よかったです。それでウオーレンさんはいらっしゃいますか?」
「ああ、いるよ。エリーナ様の家族もいるぞ。」
「家族?」
再びロベルトが説明し始めた。
「そうか~。ショウ達は知らないよな~。エリーナ様は第2皇子でフィリップ陛下の弟のナダル様と結婚したんだよ。もう子どももいるんだぜ。」
「そうなんですか~。良かったです。」
「ああ、これもすべてショウとリルのおかげだな。感謝する。ありがとうな。」
「別に僕達は何もしてませんよ。」
「変わらんな。ショウは。」
ロベルト達と話をしていて気づいたが、どうやら今回僕とリルが天界にいる間に2年が経過したようだ。本当なら天界に行った日時で地上界に戻れると思っていたが、何かアテナ様に意図があるのかもしれない。それとも、単純にリルの復活や僕達の修行に時間がかかったのかもしれない。いずれにしても、地上界では様々な変化が起きているのだろう。




