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懐かしい人達との再会

 翌日の早朝、ボルフ達がやけに騒々しい。お陰で目が覚めてしまった。ボルフ達のところに行くとなにやら言いたげだ。もしかしたら何かあったのかもしれない。慌ててリルを起こしてボルフ達について行くことにした。すると、兵士風の男達がキングベアと交戦中だった。



「リル!あれってロベルトさん達じゃない?」


「そんなことより助けるんでしょ!」


「そうだよね。」



 僕は念動力でキングベアを持ち上げて、そのまま地面に叩きつけた。フラフラになって立ち上がったところを、リルが背中の剣を抜いて首をはねた。



ドッタン



 キングベアが絶命したのを見て男達が僕達のところにやってきた。



「やっと会えたな!ショウ!」


「やっぱりロベルトさん達でしたか。でも、どうしてここに?」


「お前を探しに何度もここまで来たんだ!やっとだ!やっと会えた!」


「僕に何か用ですか?」


「ああ、その前に、そちらの美少女は誰だ?」



 美少女と言われたのがよほど嬉しかったのだろう。リルが自分で名乗った。



「私はリルよ。久しぶりね。ロベルト!」


「もしかして、————あの子犬、いやフェンリル様なのか?」


「そうよ。」



 これには、ミック、ローランド、ジョニー、ヨハンの全員が驚いた。



「俺の膝に乗って甘えていた子犬が、こんな美少女になったのか~?」


「そうよ。何かおかしい?ミック!」


「いやいや。おかしくはないが、驚いただけだ。」



 それから古代遺跡の家に戻っていろいろ話を聞いた。どうやら、ヨハネス王国では国王がなくなって、第1王子のフィリップが新たな国王に就任したらしい。若干18歳の若き国王だ。だが、2年が経つにもかかわらず、隣国のオリント聖教国から未だに国王の承認書が届かないらしい。



「国王になるのに聖教国の承認書が必要なの?」


「別に聖教国の承認書だから必要ってわけじゃなくてな。新たに国の代表になった場合は、人族の国に親書を送るんだ。そして、各国から『代表として認めた』という承認書をもらうのが普通なんだよ。」


「もしもらえなかったらどうなるの?」


「つまり、国の代表として認められないんだから、侵略の可能性があると判断されて最悪戦争になることもありえるさ。」



 すると、リルが呆れた顔で言った。



「ようするに、ウオーレン辺境伯は戦争になった場合に私とショウに助けて欲しいってことでしょ!」



 どうやら図星のようだ。全員が黙ってしまった。



「僕もリルもどちらかの国に加担するようなことはしませんよ。でも、戦争にならないようになら協力しますけど。」


「いいの?ショウ。フェアリー大陸から帰ってきたばかりなのよ。当分休養するって言ってたじゃない。」


「仕方ないよ。アテナ様やライフ様、フドウ様、みんなに頼まれたんだから。」



 ロベルト達が僕とリルの会話を唖然として聞いていた。



「フェアリー大陸と聞こえたんだが。それに、アテナ様って最高神様のことか?」


「細かいことはいいじゃないですか。それより僕の近くに集まってくれますか!ロベルトさん!」



 僕の近くにロベルト達に集まってもらった。



「ボルフ!また帰ってくるから!留守は頼んだよ!」



ワォン



『テレポート』



 あたりの景色がゆがんでいく、目の前が真っ白になったと思ったら見慣れた場所に出た。ウオーレン辺境伯の治める領都ギザの城門だ。



「着きましたよ。」


「お・・・・・・おー」



 ロベルトもミックもみんなフラフラしている。



「情けないわねー!こんなんで酔ってどうするのよ!」



 どうやら、彼らは初めてのテレポートで酔ってしまったようだ。僕も最初のころはエレベーターに乗っている感覚が続いた。多分同じなんだろう。街に入る前に少し休むことにした。



「それにしてもショウは一体何者なんだ?リルはフェンリル様だとわかったが。」


「前にも言いましたけど、僕は普通の人族ですよ。ただ、記憶が未だに戻りませんが。」


「そうだったな。記憶が戻らないか~。もしかしたら領主様が言われる通り使徒様かもしれんな。」


「どうでしょう。いろんな場所で同じようなことを言われましたが、自分には自覚がないんですよね。」


「まあ、『私は使徒である!控えろ!』なんて言われるよりはいいけどな。ハッハッハッハッ」



 落ち着いたようなので僕達は領都に入った。領主様の屋敷に行くと、応接室にウオーレン辺境伯がいた。どうやらエリーナは王都の王立学院に通っているようだ。



「よく来てくれたな。ショウ殿。そちらの少女は、まさか・・・」


「ええ。お察しの通りです。フェンリルのリルです。」


「やはりそうであったか。」



 なんか領主様は僕のことを使徒だと思っているようだ。いきなり『殿』をつけてきた。居候していた時のように普通に話して欲しい。



「領主様。その節は申し訳ありませんでした。お礼も言わずに突然姿を消してしまい、ごめんなさい。それから、僕は魔王でも使徒でもありませんから、今までのように普通に話をしていただけると嬉しいです。」



 辺境伯はニコニコしながら言った。



「変わらんな。ショウは。一つ言っておくが、そなたのことを魔王だなんて思ったことは一度もないからな!あの優しい少年が魔王であるはずがなかろうよ。後で孤児院を見てくるがいい。そなたが提案した孤児院は今やこの国の全土にあるぞ!そなたのお陰だ。感謝する。」


「頭をあげてください。僕は疑問に思ったことを言っただけですから。それを実現した人達の方が立派ですよ。」


「ハッハッハッハッ 安心したよ。ショウ。ところで話があるのだが、食事をしながら話そうか。」


「はい。」



 辺境伯に誘われて食堂に行った。久しぶりの領主邸の料理だ。味付けは薄いが素材の味を大切にしていて、僕は結構好きだ。



「ロベルトに聞いたと思うが、実は隣国のオリント聖教国との関係がギクシャクしているんだ。貴族の中にはすぐに戦争の準備をするべきだという馬鹿者もいてな。まったく愚かな話だ。それにしても、なぜ聖教国は我が王を承認しないのか、私には不思議でならないのだ。」



 するとリルが言った。



「戦争させたい奴がいるのよ。ルシフの復活のためにね。」



バタン



 ウオーレン辺境伯がナイフとフォークを落とした。そして、どんどん顔が青くなっていく。



「ちょっと待ってくれ!リル殿!ルシフとはまさか、大戦を引き起こしたと言われる悪魔のことか?」


「そうよ。そろそろ復活するみたいよ。」


「そうなのか?!ショウ!」



 この際、悪魔について話をしておこうと思った。



「実はスチュワート帝国に行ったときに、クレナイと呼ばれる女悪魔を討伐したんです。そして、シルベニア王国では四天王の一人ディアブを討伐しました。その際、ディアブが言ったんです。そろそろルシフが復活するって。」



 ウオーレン辺境伯は信じられないといった顔をしている。



「ショウの言うことだ。真実なのだろう。だが、ショウは悪魔を討伐したのか?しかも四天王を名乗る悪魔を。」


「ええ。それなりに強かったですけど。」


「ショウ。君は一体何者で、どれだけの力を秘めているんだ?」



 何か僕は不思議なことを言ったのだろうか。



「悪魔ってそんなに強いんですか?」



 ウオーレン辺境伯は半ばあきらめ顔だ。



「ショウ。悪魔と天使は対になる存在なんだ。普通の悪魔だって、兵士3000人と同じ兵力だと言われているんだ。それが四天王ともなれば、国一つを亡ぼせるほどの力を持った存在なんだよ。」



 何か僕には実感がない。確かに強かったが、こちらの生命を脅かされるほどの強者ではなかったからだ。


 すると、リルがニコニコしながらふざけたように言った。



「ショウは神獣であるフェンリルの私より強いわよ。ショウが本気を出せばこの大陸を消せるんじゃないの?」


「ま、ま、まさかそこまで・・・」


「リル!やめろよ!僕はそんなことしないから!辺境伯様が信じちゃうだろ!」


「エヘ」



 何やらウオーレン辺境伯が考え込んでいたが、急に席を立って頭を下げてきた。



「お願いする。私と一緒に王都に行ってくれないか!是非国王陛下に会っていただきたいんだが。」



 なんかとんでもない話になってきた。僕は悪者を退治しながら普通に旅をしたいだけだ。そして、この世界が平和になったら目立たないようにリルと二人でゆっくり暮らしたい。ただそれだけが希望なのだ。



「どうするの?」


「辺境伯様。申し訳ありません。僕は城にはいきません。でも、王都にはいきます。今回の件に悪魔が関係しているかどうか調べないといけないので。」


「そうか。そうだよな~。ショウの性格を考えればそうなるな~。」


 

 そして数日後、僕とリルは辺境伯様と一緒にヨハネス王国の王都サワイに向かった。ロベルト達は領都を守護する任務があるので残った。僕とリルがいるから護衛はいらないと判断したのだろう。王都までは数日かかる。さすがに野宿することはないが、途中の街で何日か休息を取らないといけない。



「今日はこの街で宿を取るか。」


「ええ。」


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