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久しぶりの深淵の森

 王城に到着すると、兵士が案内してくれた。恐らくそこには国王バルクがいるのだろう。僕達が部屋に入ると、隣に立っているはずのガランが目の前の椅子に座っていた。



「えっ?!」



 僕とリルは慌てて横を見た。そこにはガランが立っている。どういうことだろう?



「ガラン。ご苦労だったな。」


「はい。父上。」



 僕達が片膝をつこうとすると国王が声をかけてきた。どうやら親子だったようだ。それにしてもまるで双子の兄弟のようだ。確かにドワーフ族はエルフ族同様に長命だが、まるで年齢の差を感じなかった。



「そのままにしてくだされ。使徒様とフェンリル様を地面に座らせるわけにはいかんからの~。」


「では、お言葉に甘えてそのままにさせていただきます。」



 やはり国王は僕達の事情を知っているようだ。



「この度は地竜を盗伐していただき感謝申し上げる。ところで、お礼の品は受け取っていただいたかな。」



 するとリンが背中の剣を抜いて見せた。



「こんなにすごい剣をもらってもいいのかな~。恐らくこれが人族の国に伝われば間違いなく国宝になるわよ。」


「さすがはフェンリル様ですな。その剣は、この国でも最高の鍛冶師であるギトンが最高の素材ミスリルで作った剣ですからな。」



 僕はリルが喜んでくれたのであればそれでよかった。だが、国王バルクが僕に言ってきた。



「ショウ殿にも何かお礼を差し上げたいのだが、我が娘はどうかな?」



 リルが僕を睨みつけてきた。その殺気を感じながら僕は慌ててお断りした。

 


「いいえ。僕にはまだまだ女性は早いですから。」


「そうかの~。なら、他に欲しいものはないかな?褒美なしというわけにもいかないからな。」


「いいえ。大丈夫ですよ。」



 すると、ガランが言った。



「ショウ殿。この際だ。何でも言った方がいいぞ!」



 ここでむげに断ったら相手の立場がない。かといって欲しいものは・・・あった!



「では、1つお願いします。持ち運びできるような風呂なんかがあれば嬉しいです。」


「風呂か!すぐに作らせよう。だが、すぐには無理だ。2,3日、ゆっくりと休んで待っていてくれるか?その間、この城に泊まってゆるりとされるがいい。」



 僕とリルは部屋に案内された。一部屋にベッドを2つ用意してもらった。部屋で寛いでいるとメイドが呼びに来た。どうやら僕達の歓迎パーティーが催されるようだ。会場に行ってみると、ドワーフ族の男女が大勢いた。テーブルには酒と肉料理が大量に置かれている。パーティーというよりも宴会と言った方がよさそうだ。



「さて諸君!今夜は使徒様とフェンリル様がおられる!夜通し飲み明かそうぞ!」


「おお!!!」



 やはり宴会だ。国王のあいさつの後、いきなり酒を飲み始めた。お酒の苦手な僕とリルは果実水だ。それを見たドワーフ達は残念そうにしていたが、ひとたび酒が入ればもう大騒ぎだ。



「どうするの?このままずっとここにいるの?」


「いいや。彼らはお酒が飲めればいいみたいだし。少ししたら部屋に戻るよ。」


「そうね。」



 それからしばらくして部屋に戻った。ベッドに寝転んでいるとリルが話しかけてきた。



「ショウはこの世界に来て何年たったの?」


「6年か7年ぐらいじゃないかな~?」



 自分でも何年たったかはっきりと覚えていない。この世界では、日本のように四季が明確なわけではない。それに、カレンダーはあるがそれを意識して生活することがなかったからだ。



「そうすると、ショウも17歳ぐらいってことよね?」


「まあね。でもどうしたの?急に。」


「この世界では国によってばらばらだけど、18歳は成人なのよ。ショウももうじき成人でしょ?だったらそろそろどこかの国に落ち着いた方がいいかなって思ったのよ。」


「でもさ~。大戦のときに封印されたルシフとかいう悪魔が復活しそうなんでしょ?四天王とかいう悪魔が『ルシフ様』とかいってたし、もしかしたらルシフっていうのは悪魔族の王のような存在なんじゃないかな~。だとしたら相当強いと思うんだよね。ルシフが復活する前に再封印した方がいいんじゃない?」


「でもどこに封印されてるかわからないでしょ?」


「そうだけどさ~。このままってわけにもいかないよ。—————そうだ!四天王を見つければいいんだよ!」


「そうね。でもそう簡単に見つけられるかしら。相手は四天王なのよ。どうやって見つけるつもりなの?。」



 僕は思い出してみた。クレナイという女悪魔は何をしたかったのだろう。それにディアブだ。エルフ族や獣人族を攫って何の意味があるのだろう。女悪魔のクレナイはヨハネス王国を乗っ取ろうとしていた。四天王のディアブはエルフ族達を誘拐していた。もしかしたら2人とも戦争を起こしたかったのか?



「リル!もしかしたら、ルシフの復活の条件って戦争かもしれないよ。でもどうして戦争なんだろう?」


「ショウ!その通りよ!悪魔のエネルギー源は悲しみ、憎しみ、苦しみのような悪感情なのよ。戦争を起こせばたくさんの悲しみや憎しみが生まれるわ。」


「だとしたら他の四天王達もあの女悪魔のようにどこかの国に入り込んでるかもしれないね。」


「そうね。怪しいのはオリント聖教国かデンブルク王国じゃない?」


「デビッド魔王国は?」


「さすがにそれはないと思うわ。悪魔達も魔族には手をださないでしょ。」


「どうして?」


「魔族はこの世界の最強の種族よ。特に魔族の王は相当強いわ。」


「ふ~ん。」



 そして翌朝、僕とリルはドワーフ王国の王都を散策した。さすがに人族が珍しいようで、みんながじろじろと見てくる。子ども達も興味があるのか、僕達にくっついてきた。



「ドワーフ族ってなんか怖いイメージだったけど、結構人懐っこい種族なんだね。」


「そうよ。ドワーフ族は気さくでおおらかな種族なのよ。見た目でだいぶ損してるのよね。」



それから数日が過ぎ、僕とリルはお風呂を受け取った後、バルク国王とガランに挨拶をしてエルフ王国までテレポートした。エルフ王国ではララノア女王とアルにドワーフ王国のことを説明した。そして深淵の森に戻ろうとしたのだが、ララノア女王に引き留められた。



「ショウさん。お願いがあるんですけど。」



 女王の隣でアルがモジモジしている。なんとなく予想がついた。ペルと同じで僕と一緒に来たいということだろう。でも、僕はアルの気持ちにこたえられない。心を鬼にして言った。



「僕にとってはリルがかけがえのない女性なんです。それに、これから僕達が相手をするのは悪魔達です。もしかしたらルシフも復活するかもしれません。この世界に2度と戦争を起こさせないようにするのが僕達の使命なんです。」



 ララノアがアルを見た。アルの目は真っ赤だ。



「わかっていたさ!・・・・・悪魔なんかに負けるんじゃないぞ!いざという時は私とペルを呼べ!いつでもかけつけるからな!」


「ありがとう。アル。」



 それから僕とリルは久しぶりに深淵の森に帰った。久しぶりということもあって、ボルフ達シルバーウルフは大はしゃぎだ。子どものシルバーウルフ達もすっかり成長していた。



「久しぶりにのんびりしようか?」


「いいわね~。やっと二人きりになれたんだもん。」



 リルが僕に肩を寄せてくっついてくる。ボルフ達も僕達の前で寛いでいる。すると、身体が大きくなった子ども達が僕とリルに甘えてきた。遊んで欲しいらしく、僕とリルの間に割り込んでくる。



「二人きりじゃないみたいだね。」


「仕方ないわ。」



暫くして、久しぶりにボルフ達と一緒に深淵の森で狩りをすることにした。リルに魔力感知で調べてもらったが、近くに魔獣の反応はない。仕方がないので、スチュワート帝国に行く途中にあった湖まで来た。湖まで来て、以前ここにキングスネイクがいたのを思い出した。



「この辺りから強力な魔獣の魔力を感じるんだけど~。」



 キングスネイクがいなくなった後、もしかしたら強力な魔獣が住み着いたのかもしれない。しばらく湖畔で座っていると、水面にブクブクと泡が浮かんできた。



「何かが来るよ!注意して!」



 リルもボルフ達もすぐに戦闘態勢に入った。すると、水面から見たこともない魔獣が姿を現した。頭が大蛇で背中に翼を生やし、身体はティラノサウルスのような魔獣だ。



「リル!あれはヤクルスだ!相当厄介な奴だよ!あいつの目から出る光に注意して!」


「光を浴びるとどうなるの?」


「石化するんだ!」



 遺跡の中にあった本の知識が役に立った。ヤクルスは獲物を石化した後、唾液で石化を解きながら食べるのだ。


 どうやらヤクルスは僕達を獲物と判断したようだ。こちらにじわじわと近づいてくる。もしかしたら、光の攻撃の届く範囲が狭いのかもしれない。



「リル!あいつの目を潰してくれる?」


「わかったわ。」



 リルが水魔法でヤクルスの目を攻撃した。だが、ヤクルスの目が光って水が石になってしまう。攻撃を受けたヤクルスが背中の翼をはためかせ空中に舞い上がろうとしている。恐らく上空から僕達に石化の光線で攻撃するつもりなのだろう。



「ボルフ!翼を狙って!」



ワォン



 ボルフの身体が光り、上空に氷の槍が複数現れた。氷の槍はヤクルスめがけて飛んでいく。ヤクルスは翼をはためかせてそれを叩き落そうとしていた。



『止まれ!』



 僕の念を込めた言葉でヤクルスが完全に止まり、ボルフの放った氷の矢が翼を貫いた。



ギャー ギャー


バッチャン



 空中に舞い上がろうとしていたヤクルスが湖に落下した。そしてリルが背中の剣を抜いてヤクルスに向かってジャンプする。



『獄炎斬』



 青いミスリルの剣から轟轟と炎が噴き出している。その剣をヤクルスの頭めがけて振り下ろした。



ズバッ


ギャー ギャ



 ヤクルスはその場で2つに分かれて絶命した。湖に浮かんでいるヤクルスを僕は念動力で湖畔まで運んだが、死体を見てもかなりグロテスクな魔獣だ。だが、ヤクルスには貴重な素材がある。



「こいつの唾液は普通のポーションよりもはるかに効果が高いんだよ。」


「そうなの?」


「うん。解毒や病気の回復効果が半端ないんだ。」



 僕はヤクルスの唾液を回収して魔法袋に仕舞った。そしてヤクルスを解体して食材と素材に分け、湖畔でボルフ達とバーベキューすることにした。



「美味しい!柔らかくてジューシーよ!」


「そんなに?」


「ほら、あーんして!」


「恥ずかしいよ!自分で食べられるから!」


「誰もいないんだからいいじゃない!」


「あーん」



 一口食べてみるとかなり美味しい。食べたことはないけど、恐らくA5ランクの和牛も同じなんだろう。ボルフ達も黙々と食べている。



「私にもあーんして!」


「わかったよ。はい。」


「あーん」



 お腹いっぱいになったところで、食べきれないお肉と素材は魔法袋に入れた。そして、古代遺跡まで戻った。



「そうだ!ショウ!お風呂もらったんでしょ?出してよ!」



 ドワーフ王国を出発する前にお風呂をもらったのを思い出した。僕は魔法袋からお風呂を取り出した。お風呂にお湯を溜めるのはリルの役目だ。



「じゃあ、お湯を頼むよ。」



 リルがお風呂にお湯を溜めていく。すると、湯気がモクモクと立ち上り始めた。僕は服を脱いで浴槽の外で身体を流してから湯船に浸かった。すると、リルがいつものように服を脱いでそのままお風呂に入ってきた。



「リル!湯船に入る前に体を流さないとダメだよ。」


「別にいいじゃない。私、汚れてないもん。さっきクリーンの魔法をかけといたんだから。」


「だったらお風呂に入る必要ないよね?」


「ショウと一緒に入りたかったんだもん。」



 リルがくっついてきた。お風呂の熱さよりもリルの方が強烈だ。思わずのぼせてしまった。風呂から上がって少し涼んでから寝ることにした。


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