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地竜の盗伐

 僕とリルはドワーフ国の鉱山に現れた地竜を討伐するために、ドワーフ国の王子ガランと一緒に鉱山にやってきた。その日はすでに夜になってしまったということもあり、ドワーフ達は宿泊施設で休んでしまった。だが、僕とリルは坑道に向かった。もしかしたら地竜が住処に戻っているかもしれないと考えたのだ。



「リル!何か感じるか?」



 魔石で明かりはついているが坑道内はうす暗い。こんな時はリルの魔力感知が役に立つ。



「この辺りにはいないみたいね。」


「やっぱりどこかに住処を移動したのかな~。」



 すると、坑道の奥に蟻地獄のようなすり鉢状の穴が開いていた。



「ちょっと中を調べてみるよ。」



 僕が降りて中の様子を見てみると、そこには大量の骨が散らばっている。魔獣の骨がほとんどだが、犠牲になったドワーフの骨と思われるものもあった。



「ショウ。どう?いそう?」


「うん。多分、まだここにいると思う。結構新しい骨も落ちてるから。」


「なら、明日森の中を探索ね。」



 僕達が引き返して坑道から出た時、ドワーフ達の悲鳴が聞こえた。急いで宿泊施設に駆け付けると、宿泊施設が傾いて巨大なすり鉢状の穴に吸い込まれようとしている。ドワーフ達が慌てて中から逃げ出してきた。



「なんだ?どうなってるんだ?」


「多分、地竜ですよ。みんなを狙ってるんですよ。」


「森の中の魔獣を食べつくしたんだわ!だから、保存食として見逃していたあなた達を食べるつもりなのよ。」


「我々が保存食だと~!許さん!みんな!武器を持て!」



 ドワーフ達が手に斧や剣を持った。その時宿泊施設が完全に破壊され、穴の底から地竜が顔を出した。初めて見る地竜だ。ドラゴンというよりも地球にいた恐竜に似ている。地竜が穴の中から這い出てきた。8mはあるだろう。まさにティラノサウルスのようだ。大きな顎に鋭い牙が何本も見える。手には黒くて硬そうな鋭い爪がある。地面の鉱石や岩を砕きながら移動するのだから当然かもしれない。



「槍を放て!」



 ドワーフ達が槍を投げつけた。だが、ことごとく地竜の硬い皮膚に跳ね返される。逆に地竜が長い尾を振り回してきた。



ドカッ

グハッ



 近くにいたドワーフ達が大きく吹っ飛ばされた。



「リル!やるよ!」


「わかったわ!」



『止まれ!』



 僕は念動力で地竜の動きを止めた。だが、思った以上に地竜の力が強い。天界で修業して大分力をつけたはずの僕だが、かなり厳しい。



「リル!こいつ凄い力だ!早く魔法を!」



 僕はこめかみに青筋を立ててこらえている。それを見て、リルがクスッとしながら魔法を唱えた。



「すべてを切り裂け!『ウインドカッター』」



 あたりの空気をゆがませながら、空気の刃が地竜めがけて飛んでいく。



ギャー



 地竜の足から血が流れだした。だが、大きなダメージを受けている様子はない。逆に、地竜が僕の拘束から逃れて向かってきた。僕は咄嗟に背中の剣を抜いて気を流し込んだ。



グオー



 地竜も必死だ。固い尻尾を振り回してきた。僕はすかさず後ろに避けた。次の瞬間、リルが再びウインドカッターを放つ。だが、地竜は固い爪でそれを防いだ。



「地竜のことをなめてたよ。こいつかなり強いよ。」


「そうね。それでどうするの?」



 僕が地竜を倒す方法を考えていると、頭の中に声が聞こえた。



“神力を解放しなさい!”



「えっ?!」


「こんな時にどうしたのよ。」


「今、ライフ様の声が聞こえたんだよ!」



 地竜が鋭い爪で攻撃してきた。僕とリルは素早く避ける。



「リル!結界で足止めしてくれる?」


「どうするの?」


「ちょっと集中したいんだ!」


「わかったわ!」



 リルが地竜の周りに結界を張った。地竜はその中で激しく暴れている。その間に僕は精神を集中させていく。身体の奥底から力がみなぎってきた。



「ショウ!まだなの?もう限界よ!」



 バリン



 結界が破壊され、地竜が僕達に向かって突進してきた。



「ショウ!避けて!」



僕は身体の奥底に眠っていた力を解放した。すると、僕の身体が空中に浮きあがり、眩しい光を放射している。



『浮き上がれ』



 信じられないことに地竜がどんどん空中に浮いていく。手や足をじたばたさせているがどうにもできない。



『爆散!』



 僕が念を込めて言うと、地竜の身体が内側から爆発した。そして、地面に落下した。



グチャ ベチャ ドッサン



 地竜を討伐する様子を見ていたドワーフ達は固まっている。そして、一人が僕に平伏すると次々と平伏し始めた。



「皆さん!立ってください!僕はただの人族ですから!」



 リルがやってきた。



「さすがね。ショウ。」


「ギリギリだったよ。もう、体力の限界だ~。」



 力を使い果たしたのか、僕は意識を失った。


 目が覚めるとすでに夜が明けていた。宿泊施設が破壊されたため、僕はリルの膝枕で野宿したようだ。



「リル~。もしかして寝なかったの?」


「私はフェンリルよ。寝なくても大丈夫なのよ。」


「ありがと。」



 リルが僕の額に手を置いて、髪を手でとかし始めた。



「お風呂に入りたいわね。」


「まあね。」



 するとガランが近くで聞いていたのか、言ってきた。



「温泉ならあるぞ!この反対側だがな。」



 僕は嬉しくて思わず跳ね起きた。



「本当?ガランさん!案内してくれる?」


「お安い御用だ!」



 僕とリルはガランに案内されて温泉に向かった。他のドワーフ達は、破壊された宿泊施設を再建するようだ。

 


「温泉、楽しみね。」


「まあね。」



 ここでひとつ懸念されることがあった。僕だけならまだしも、ガランがいる。まさかリルが人の姿のまま裸になるということはないだろうかと。


 温泉の独特の匂いがしてきた。少し先では湯気があがっている。



「さあ、入るわよ!」



 リルが服を脱ぎ始めた。



「ちょっと!リル!そのままの・・・・・」



 ザッブーン



 湯気の先を見るとやはり人の姿のままだ。ガランを見るとリルをガン見している。



「こりゃ、いいものが見れた!父上に教えねばな!まさかフェンリル様の裸体を見れるとは夢のようだ!」


「何言ってるよ!二人とも早く入ってきなよ!」



 僕はリルの近くに行った。



「リル!ガランさんがいるんだよ!フェンリルの姿に戻った方がいいんじゃない。」


「いいのよ!なんでショウはそんなに裸を気にするの?生まれてきた時はみんな裸じゃない。」


「そうだけどさ~。人には羞恥心っていうものがあるんだよ。」


「わからないけど、まあいいわ。」



 リルがフェンリルの姿に戻った。ガランは少し寂しそうだ。


 そして宿泊施設まで戻った後、すぐにドワーフ国の王都ザンエンに向かった。国王に会って地竜の盗伐を報告するためだ。



「ガランさん。どうしてもいかなきゃダメかな?」


「ダメに決まっておるだろ!何のお礼もしなかったら、わしが父上に叱られてしまうわ!」





 地竜を討伐した後、王都に行くことになった僕達は3時間ほど山を下った。すると、王都を囲む城壁が見えてきた。ガランが門兵に何やら話をすると、門兵が慌てて走って行った。街の様子を見てみると、やはり男女ともに背丈が低く、筋肉質の体形をしている。そのためかエルフ族の人達と違ってお洒落に気を使っている人はいない。



「女性は髭を生やしてないんですね。」


「ショウ。あなた何言ってるの!女性に髭があるわけないでしょ!」



 日本にいた時も異世界のアニメをよく見ていたが、ドワーフの女性が出てくるものがほとんどなかった。だから、そもそもドワーフ族に女性がいるとも思っていなかったのだ。



「あの店に寄ってみるか。」



 ガランがいきなり武器屋に向かって歩き始めた。僕とリルが後ろをついて行く。店先には、短剣や長剣、大剣が並んでいた。どれも素晴らしいものだ。



「僕はいらないけど、リルは?」


「そうね~。いい物があれば欲しいけど。」



 ガランが店の奥に入っていく。僕とリルもついて行った。すると、店の奥にドワーフの男性がいた。



「よう!ガランじゃねぇか!」


「ああ、ギトン。久しぶりだな。」


「お前がここにいるってことは、地竜の盗伐が終わったってことだな。そこの人族が倒したのか?」


「よくわかったな。そうだ。この二人が討伐してくれたんだ。」


「なら、ここに来た要件はこれだな。」



 ギトンが机の下から1本の剣を取り出した。金属製なのに水色に輝いている。するとリルが聞いた。



「これってミスリルの剣?」


「そうだ。よくわかったな。お前さん達に渡す報酬なんだが、1本しか用意してないんだ。どうしたもんかな~。」


「僕はいいですよ。この剣がありますから。」


「なら、これはリル殿のものだな。」


「リル。握ってごらん。」



 リルがミスリルの剣を握ると剣が一瞬光った。そして、光がどんどん弱くなっていく。



「ガラン。そっちのお嬢さんは何者なんだ?魔力を流したようには見えなかったんだがな。」


「ああ、わしも驚いた!魔力を流さずに剣が光るのを見たのは初めてだ!」



 リルもミスリルの剣がかなり気に入ったようだ。古い剣は僕の魔法袋に入れて、ミスリルの剣を常備するようにした。そして武器屋を後にした僕達は、立派に聳え立つ王城に行った。


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