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鉱山に到着

 アニム王国を出た後、5日ほどかけてエルフ王国に到着した。エルフ王国に到着すると、アルをはじめ多くのエルフの人達が迎え入れてくれた。そして、僕とリルはアルの案内で宮殿に向かった。その途中、ペルの話になった。



「そうか~。ペルの姿がないからどうしたのかと思ったんだけどな。ペルはアニム王国に残ったのか~。」



 ペルのことを聞いてアルは何か思うところがあったようだ。そして、宮殿に到着した。エルフ族の宮殿は人族の宮殿に似ていたが、それほど大きくなかった。だが、中に入ると絵画や置物などの装飾品がたくさん飾られていた。芸術的なものに興味のある種族なのかもしれない。


 

「凄いわね。ショウ。」


「うん。なんか美術館に来たみたいだよ。」


「美術館?」


「ああ、ごめん。僕のいた世界ではこうした絵画や彫刻品なんかを展示しているところがあったんだよ。」


「そうなのね。私もショウのいた世界を見てみたいわ。」



 アルにつれられて謁見の間までやってきた。扉を開けるとそこには絶世の美女が座っていた。僕達の姿を見て椅子から立ち上がってやってきた。



「あなたがショウさんね。アルから聞いたとおりすごくきれいなお顔ね。」


「ありがとうございます。」


「リルさんは人の姿をしてるようだけど、神聖なオーラは隠せてないわね。」



 どうやらリルがフェンリルだということを知っているようだ。



「お二人にはなんと感謝を申し上げてよいやら。同胞達を助けてくれてありがとうございました。しかもアルに修行までつけていただいたようで。本当に感謝します。」



 レオン国王同様に深々と頭を下げてきた。



「頭をあげてください。僕もリルもできることをしただけですから。」



 それから、宮殿内で僕とリルの歓迎会が開かれた。獣人族達と違って人族の僕や人の姿をしたリルに抵抗はないようだった。だれもが気軽に話しかけてきた。中には僕に言い寄ってくる女性もいた。隣でリルが気が気でないようだ。なんせエルフ族達はみんな美女ばかりなのだから。



「ショウ。鼻の下が伸びてるわよ。」


「そんなことないよ。でもどうして僕なんかに。エルフ族の男の人達だってきれいな顔してるのに。」



 リルが何か悩んでいるようだ。どうしたのだろう?



「あなた気が付いてないの?」


「なにが?」


「あなたって最高神のアテナ様に似てるのよ。言っちゃいけないと思ってたから言わなかったんだけどね。」


「リルもそう思う?僕も初めてアテナ様にあった時、そう思ったんだよね。前世の僕とは全然顔が違うんだよ。」


「そうなのね。ならこの世界に転生するときに、生命神のライフ様がそうしたのかもね。」


「どうして?」


「そんなこと私が知るわけないでしょ!」



 歓迎会が終わりに近づいたころ、エルフ族の兵士がドワーフ族の兵士と一緒にやってきた。どうやら女王に緊急の要件があるようだ。歓迎会が終わった後、僕とリルは部屋に案内されて寛いでいた。



「これからどうするの?」


「深淵の森に戻ってしばらく休もうかな。」


「そうね。ここ最近、のんびりしてないもんね。」



 そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けるとそこにはアルがいた。



「どうしたの?」


「応接室に来てほしいんだ。」



 僕とリルは応接室に行った。すると、部屋には女王ララノアとドワーフの兵士がいた。



「ショウさん。リルさん。そちらにお掛けになって。」



 椅子に座ると飲み物が用意された。アルも話に加わるようだ。



「ショウさんとリルさんに頼みたいことがあるんです。」


「なんでしょう?」



 ドワーフの兵士が不安そうに僕達を見ている。僕達のことを信じていないようだ。



「大丈夫ですよ。ガラン殿。このお二人は人族でありながら我が同胞達を救い出してくれた英雄ですから。」


「そうだが、本当に人族なんかで大丈夫かの~。相手は地竜だ。わしらだって手に負えないで困っとるんだが。」



 ここでララノアが説明を始めた。エルフ国の先にドワーフ王国があるのだが、そのドワーフ王国の鉱山に地竜が現れたようだ。ドワーフ族だけで討伐にあたっていたが、犠牲者が多く出たために討伐を断念したそうだ。そこで、エルフ族に力を借りたいと言ってきたらしい。



「いいですよ。僕とリルで何とかします。」


「ありがとうございます。では、アルも一緒に行かせましょう。」


「いいえ。地竜だけなら僕達だけで十分ですから。」



 するとアルが不機嫌になった。



「どうせ私は足手まといよ!別にいいけどね!」


「こら!アル!使徒様とフェンリル様に失礼でしょ!」



 やはり女王様はすべてを知っていた様だ。だが、女王様の言葉に驚いたのはドワーフ族の男性だ。



「使徒様とフェンリル様だと?!」


「そうよ。ショウさんは使徒様よ。それにリルさんはフェンリル様なのよ。どう?これで納得していただけましたか?」



 するとドワーフ族の男性は席を飛びあがり僕達に平伏した。



「申し訳ありませんでした!お二人を疑っておりました!」


「椅子に座ってください。気にしてませんから。」



 その後、ドワーフ族の男性が自己紹介をしてきた。ガランはドワーフ国の第1王子だった。髭を生やして老けて見えたせいか、まさか王子だとは思わなかった。


 その翌日、僕達はガランの案内でドワーフ王国の鉱山に向かうことになった。説明では、ドワーフ王国もエルフ王国と同様に王都ザンエンだけの都市国家のようだ。そうなると、このフェアリー大陸の広大な森林地帯はどこの国に属するのだろう。



「おはようございます。ガランさん。ちょっと聞いてもいいですか?」


「なんだな?」


「ドワーフ王国やエルフ王国に属さない場所ってどこの国のものなんですか?」


「そんなの決まっとる。みんなのもんだ。」


「みんなのものですか?」


「そうだ。大森林の木々も動物達も鉱石なんかも、神様が我々に与えてくれたもんなんだから。土地も含めて我々は神様から預かっているだけだ。だから誰のもんでもないんだ。」



 恐らく日本にいた僕ならガランの言っている意味が分からなかっただろう。資源や国境のことで、世界中のいろんな場所で紛争があったりしたのだから。でもこの世界に来て、ガランの言っている意味が分かる気がする。この世のすべては神々に創造されたものであり、自分達は生きている間それを使わせてもらっているだけなんだ。


 どれくらい歩いただろうか。リルと二人だけなら走って向かうところだが、ガランがいるのでそういうわけにもいかない。それに、森の中を歩いて野宿するのも意外と楽しい。食べ物は途中で見つけた果物やホーンラビットだ。



「あとどれくらいかかるんですか?」


「そうだな~。明日には到着できるだろうな。」


「結構遠いのね。もう3日よ。」


「そうだな~。わしも早くみんなのところに戻りたいんだよ。酒が恋しくてな~。」



 みんなの心配をするのかと思ったら、どうやらお酒を飲みたいだけのようだ。すると、鼻のいいリルが言った。



「向こうからお酒の匂いがするわよ。どうする?行ってみる?」



 お酒と聞いてガランの目つきが変わった。地面に置いていた斧を手に持ち立ち上がった。



「どこだ?早く酒の匂いのする場所に案内してくれ!」


 

 リルが鼻をクンクンさせながら森の中に入っていく。僕とガランはその後をついて行くだけだ。



「近いわよ!」



 すると、ブルースネイクとピーチモンキーの群れが戦闘していた。どうやら、ピーチモンキーを狙ってブルースネイクが攻撃を仕掛けたようだ。ピーチモンキーがブルースネイクに石を投げつけているが、全く役に立っていない。逆に、ブルースネイクが毒液を吐き出した。ピーチモンキーは木に登って避けている。



「このままじゃピーチモンキーが食べられちゃうわね。」



 リルがブルースネイクに向かって魔法を放った。



「切り裂け!『ウインドカッター』」



 ブルースネイクの鎧のような皮膚から血が噴き出した。どうやらキングスネイクほどは強くないようだ。



「わしも頑張ってみるかの~。」



 ガランが地面に手を付けて魔法を唱えた。



「出でよ!土の槍!」



 すると地面から鋭い槍のような突起物が現れ、ブルースネイクを串刺しにした。戦いの様子を見ていたピーチモンキー達はキャキャと大喜びだ。そして、僕達の周りに集まってきた。



「なんか、ついて来いとか言ってるみたいよ!」


「行ってみようか。」



 ピーチモンキーの後ろをついて行くと泉のような場所があった。そこから酒の匂いが漂ってくる。



「もしかして、これってお酒?」


「そうみたいね。不思議だけどお酒が湧き出てるみたいね。」



 ガランはジュルリと垂れそうなよだれを手で拭きながら茫然としている。

 


「これ、飲んでいいのかの~?」


「いいんじゃない。ピーチモンキーがわざわざここまで連れて来てくれたんだから。多分、お礼のつもりなのよ。」



 すると、ガランは湧き出ているお酒を手ですくって飲み始めた。僕とリルが地面に座って休んでいると、ピーチモンキーが子どもを連れてやって来た。人懐っこい。中には桃やミカンの実を持ってきてくれる者もいる。


 そして、その日はピーチモンキー達と一緒に野宿することにした。ガランが酔いつぶれて歩けなかったのだ。ピーチモンキー達がいてくれたおかげで森の中でも熟睡できた。そして翌朝、僕達は再び目的の鉱山に向かって出発した。



「昨日はつい飲み過ぎてしまった。申し訳なかったの~。」


「いいですよ。それにしても、お酒が好きなんですね。」


「わしはドワーフだからな。ドワーフ族は酒から生まれたと言っていいほど酒好きだ。ハッハッハッハッ」



 遠くに小高い山が見えてきた。どうやら鉱山のある山の模様だ。山肌の一部がむき出しになっている。



「あの山だ。やっと戻ってきたの~。みんなが心配だ。」



 僕達は鉱山まで急いだ。僕とリルは訓練しているので山に登るのも苦ではないが、意外にもガランも息も切らさずにどんどん登っていく。さすがだ。



「ガラン!やっと帰って来たか!待ちわびたぞ!それで、エルフ族はどこにいるんだ?」


「エルフ族は来ないんだ。」


「どういうことだ?われらドワーフ族には協力できんということか!」


「違うわ!話を聞かんか!」



 みんなが一瞬静まり返った。そして、僕達をじろじろと見始めた。



「実はここにいる2人だがな。」


「何で人族がここにおるんだ!ガラン!お前は正気か!」



 するともう一度ガランが大声で言った。



「だ・か・ら!わしの話を聞かんか!」



 またまたドワーフ族が静かになった。



「ここにいるショウ殿は使徒様だ。それにリル殿はフェンリル様だ。」



 ドワーフ族達が疑わしい目で見ている。仕方ないので僕は彼らの後ろにある大きな岩を念力で持ち上げた。すると、ドワーフ達は目を丸くして驚いた。



「本物だ。本物の使徒様だ。」


「そうだな。なら、今日は使徒様達と飲み会だな。」


「おお、そうだ。そうだ。」



 すると、ガランが言った。



「お前達は何を言っておるんだ!地竜の盗伐にわざわざ使徒様とフェンリル様が来てくださったのだぞ!先に地竜討伐だろうが!」


「そうだ!そうだ!地竜を討伐するぞ!」


「地竜を討伐して宴会だ!」



 なんかドワーフ族というのは陽気な種族のようだ。全員が陽気でまっすぐな人達のように思えた。だからこそ土の大精霊ノームに愛されているのだろう。


 僕達は今、採掘場から少し離れた館の中にいる。採掘者達の中ための建物のようだ。個室などない。大きな部屋が2つあるだけだ。そこで全員が布団を引いて寝ているのだろう。その隣には食堂を兼ねた会議室のような場所があり、そこで説明が始まった。



「ガランが出かけた後、何もやることがなかったから。地竜の出た坑道から少し離れた場所を掘っていたんだ。そっちには地竜は出ていないぞ。」


「なら、地竜は最初に現れた坑道の奥にいるということだな。」


「それはわからん。なんせもう10日ほどはあの坑道に入ってないからな。」



 本で読んだが、地竜の行動範囲はそれほど広くないはずだ。ねぐらを見つけるとそこから半径5㎞の圏内で食料を調達するのが普通だ。だとすると森の中で魔獣を食料にして、夜はねぐらに戻っているのかもしれない。



「ガランさん。僕達これから坑道の様子を見てきますよ。」


「今から行くのか?もう暗くなるぞ!」


「大丈夫ですよ。行こうか!リル!」


「そうね。ここで大勢の男達に囲まれて寝るよりいいかもね。」


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