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アニム王国の王都フィンクス

 僕は総勢30名ほどの女性達を連れて、アニム王国の王都フィンクスの郊外にテレポートした。



「懐かしいにゃ!私の住んでた街にゃ!」



 僕達が王都に入ろうとすると犬耳族の警備兵が声をかけてきた。



「なぜ人間がここにいる!この者達は一体何なんだ!」



 するとペルが前に出た。



「この方達は我らに協力してくれた英雄にゃ!失礼は許さないにゃ!」



 ペルを見て犬耳族の門兵が大声をあげた。



「ペルシャ様ではありませんか!よくぞ無事にお帰りくださいました!どうぞ中に!」



 どうやらペルは有名人のようだ。もしかしたら貴族なのかもしれない。僕達は街の中に入った。エルフ族の女性も獣人族の女性も、一旦アニム王国の王城に連れていくつもりだ。街を見渡すと人間の街ほど文明的ではない。だが、様々な種族の獣人族やエルフ族、ドワーフ族の姿があった。



「凄いね。フェアリー大陸は種族に関係なく一緒に生活してるんだね。」



 すると、アルが説明してくれた。



「当たり前だ!エルフ族も獣人族もドワーフ族もみんな妖精族だ。先祖が同じなんだ。妖精が様々な進化をしただけだ。」


「そ~なんだ~。知らなかったよ。」


「ショウ!マイヤー先生が授業で言っていたわよ。」


「え~!覚えてないよ~。」


「ショウも万能じゃ無かったにゃ!」


「当たり前じゃないか!僕のことをなんだと思ってるんだよ!」



 歩きながら街を見るといろいろな店が並んでいる。肉を売っている店、野菜を売っている店、金物を売っている店、服を売っている店。人族の国にもあったような店が並んでいた。同じような店が2軒、3軒とあるのに、武器を売っている店は1軒しかなかった。



「着いたにゃ!」



 今、僕達の目の前には大きなお屋敷がある。人族のお城のように高く聳え立つような建物ではなく、2階建てで横に大きな建物だ。ペルが門番のところに行って説明した。そして、僕達はペルに続いて建物に入った。案内された部屋の前までくると立派な扉があった。その扉を開くと、右側に槍を持った兵士達が立っている。左側には獣人族の各種族の代表のような人達がいた。そして中央にはアニム王国の国王レオンが座っていた。どうやら国王は獅子耳族のようだ。



「国王陛下!ただいま戻りましたにゃ!」


「ご苦労であった!ペル!」


「ハッ」



 ペルとアルが国王の前で片膝をついている。それ以外の女性達は平伏している。気がつけば立っているのは僕とリルだけだ。僕が慌てて片膝をつこうとすると、レオン国王が言ってきた。



「そのままにしてくれ!神の使徒様に片膝をつかせるわけにはいかないからな!ハッハッハッハッ」



 国王の言葉に両側にいた獣人族達が驚いた。



「申し訳ありませんが、僕は使徒を命じられたわけではないんですけど。」


「実はな。そなた達が来ることはわかっていたんだ。昨日、夢に生命神様が現れてな。『我ら神々の使いがフェンリルとともにここに来るであろう。彼らは攫われた女性達を解放した英雄である。労ってやるがよい。』と言われたんだ。」



“ライフ様が僕のためにわざわざ来てくれたんだ~。”


“そのようね。ショウは神々から相当信頼されてるようね。”



 国王の言葉を聞いてペルが首を傾げた。



「フェンリル様?フェンリル様なんてどこにもいないにゃ?」


「ペル!私のことよ!私は人の姿をしているけど、本当はフェンリルなのよ。」



 これにはアルもペルも驚いたようだ。



「えっ?!え————!!リルがフェンリル様~!!!」



 リルがフェンリルの姿に戻った。以前よりも一段と大きく神々しくなったような気がする。あの小さかった子犬のような面影はない。そして再び人の姿に変化した。



「どうりで強いわけにゃ~!」



 その後、獣人族の女性達はそれぞれ家に帰っていき、エルフ族の女性達はアルがエルフ王国に連れていくことになった。



「アル!困ったことがあったら念話で連絡してね。」


「ああ、わかった。感謝する!」


「私達もしばらくしたらエルフ王国に行くわね。」


「楽しみに待ってるな!その時はララノア様も国民達も大歓迎するだろうしな。」



 結局、残ったのは僕とリルとペルだけだ。



「私の実家に行くにゃ!私も早くお父様とお母様に会いたいにゃ!」



 ペルについて行くと10分もかからず着いた。なんと、城のすぐ隣の屋敷だったのだ。



「ペルって貴族の娘なの?」


「この国には貴族はいないにゃ。その代わり、各種族の代表がいろいろな役を受け持ってるにゃ。お父様はこの国の宰相にゃ。」


「宰相?偉い人じゃないか!」


「そうかにゃ?別に偉くないにゃ。いつもお母様に怒られてるにゃ!」



 なんかペルの家の状況がわかったような気がする。門を入ると、ペルを見た途端メイドが大きな声をあげた。



「ペル様!ペル様じゃないですか!よくご無事でお帰りくださいました!」



 メイドは慌てて家の中に入っていった。すると、家の中からお父さんとお母さんのような人達が走ってやってきた。



「ペル!よく帰ったな!」


「お父様!苦しいにゃ!」


「悪い悪い!」



 今度はお母さんがペルを強く抱きしめた。



「お母様も苦しいにゃ!」


「ごめんなさいね。つい嬉しくて。」



 両親が僕とリルを見た。2人とも見た目は人族だ。だんだん2人の目つきが鋭くなっていく。



「ペル!お前、まさか人族の男と付き合っているのか!まさか結婚しようってわけじゃないだろうな!」



 僕もリルもかなり焦った。僕にそんな気持ちは全くない。すると、ペルが両親に言った。



「お父様!お母様!失礼にゃ!ショウは神の使徒様にゃ!確かにショウのこと好きにゃ!でも、私が使徒様と結婚できるわけないにゃ!それに、ショウにはフェンリル様のリルがいるにゃ!」


「使徒様?」


「フェンリル様?」



 2人が僕達の顔を見た。そして慌てて地面に平伏した。



「も、申し訳ありません!使徒様とフェンリル様とは知らずに無礼をお許しください!」


「立ってください。二人とも。もしかしたらみんなが言う通り僕は神の使徒なのかもしれないけど、そんなに偉い人間じゃないですから。僕よりも偉い人はいくらでもいますよ。」


「そうよ。ショウの言う通りよ。確かにフェンリルは神獣だけど、ただそれだけよ。この世界の人々のために何かしたわけでもないんだから、別に偉いことなんかないわ。」

 


 二人が立ち上がった。次の瞬間、変な音が聞こえた。



ボコッ



「あなた!いつも言ってるでしょ!種族は関係ないって!どの種族にもいい人もいれば悪い人もいるのよ!あなたは宰相なんだからしっかりしなさい!」


「申し訳ない。祖父達から聞いた話を思い出すと、どうしても感情的になってしまうんだ。申し訳ありませんでした。」


「いいですよ。それより3日ほどお世話になりたいんですが。」


「どうぞどうぞ!」



 その後、僕達は居間に行っていろいろな話をした。ペルが厳しい修行をして、気術を使えるようになったこと。キングベアを討伐したこと。誘拐犯の貴族達を討伐したこと。ペルの両親は身体を乗り出して聞いていた。



「娘が大変お世話になったようですね。本当にありがとうございます。」


「そんなことないですよ。ペルが頑張った結果です。僕達はアドバイスしただけで、本当に頑張ったのは本人ですから。」



 するとニコニコしながらペルの母親が言った。



「ペルがショウさんを好きになった理由がわかる気がします。私ももう少し若かったら、好きになっていたかもしれませんから。」


「お母様!ダメにゃ!お母様にはお父様がいるにゃ!」


「わかってますよ。コラットは最高の夫ですからね。」



 なんだかんだ言いながら2人は仲がいい。



「そうだ!ソマリ!ペルに報告したのか?」


「あっ?!そうね。ペルに報告があるのよ。」


「いきなりどうしたにゃ?」


「あなたに妹か弟ができるのよ。」


「それ本当にゃ?」


「ええ、本当よ。」


「やったにゃ~!」



 その日は5人で一緒に食事をした。部屋はたくさんあるのに、なぜか僕とリルは同じ部屋が用意された。気を利かしてくれたのだろう。そして翌日は、王都フィンクスをペルが案内してくれた。 



「ペル。人族の家よりも大きいんだけど、どうして?」


「象耳族のように体が大きい種族がいるにゃ。」


「そっかー!」



 今度はリルが何かを見つけたようだ。



「ペル。ところどころに空き地があるんだけど。」



 確かに人族の街よりも空き地が目立つ。



「ああ、あれは有翼族が飛び立ったり、降りたりする場所にゃ。街中で翼を広げたら他人に迷惑にゃ。」



 そう言われてみると、頭に耳がない代わりに背中に翼のある人達がいる。彼らが有翼族なのだろう。それにしても、街の人達が僕とリルを睨んでくる。明らかに敵意のある目だ。



「すまないにゃ!」


「どうしてペルが謝るんだ?別に気にしないからいいよ。」


「そうよ。ペルが悪いわけじゃないんだから。」



 街を歩いていると肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。匂いのする方向を見ると、店の一角で串焼きを焼いていた。日本にいた時も同じような焼き鳥屋を見たことがある。



「国王からお礼をもらったし、何か食べようか?」


「いいわね~!」


「私もお腹が空いたにゃ!」



 ペルにお金を渡して肉串を5本買ってもらった。人族の僕やリルはよく思われていなさそうだからだ。5本のうち、食いしん坊のリルとペルには2本ずつだ。



「美味しいわ~!何の肉かしらね?」



 ペルが教えてくれた。



「これはアリガーターの肉にゃ。郊外にある湖で取れるにゃ。大きな口をしていてかなり凶暴な魔獣にゃ。」



 そんな話をしていると、広場の方が騒々しい。急いで行ってみると大きな像が倒れて、子どもが下敷きになっている。子どもに意識がなさそうだ。一刻を争う状況だ。象耳族の大男を中心に、男達が必死で像を持ち上げようとしているがビクともしない。もう時間がない。



『浮き上がれ!』



 僕は念を込めて言った。すると、びくともしなかった像が空中に浮きあがる。そして、像は誰もいない場所に移動した。



「リル!回復魔法を頼む!」


「わかったわ!」



 リルが男の子の近くに行ってヒールをかけると、意識を取り戻した男の子が大声で泣き始めた。



「よかった~!間に合ったよ。」



 広場にいた人達が僕とリルを見た。不思議そうな目をしている。人族の僕達が獣人族の子どもを救ったのが不思議なのかもしれない。すると、人混みの中から慌てて僕達の前に来て平伏する人がいた。



「ありがとうございます。使徒様!」



 解放された女性達から僕達の噂が流れていたのだろう。その場の全員が僕達に平伏した。



「あの~。皆さん。立ってください。僕はそんなに偉い人間じゃないですから!一生懸命助けようとしていた皆さんの方が偉いと思います。僕のことは使徒とかじゃなくて、仲間と思ってくれたら嬉しいです。」



 すると一人立ち上がり、また一人と次々に立ち上がっていく。そして、大歓声が起きた。



「バンザーイ バンザーイ バンザーイ」



 何故万歳なのかはわからない。でも、この国の人達の人の良さだけは伝わってきた。僕達がその場から立ち去ろうとすると、先ほどの串焼きの店の店主が両手にいっぱいの串焼きを持ってきた。 



「さっきは睨んでわらかったな。これはお詫びの印だ。食べてくれ!」


「いいんですか?なら、遠慮なくいただきます。ありがとうございます。」


「いいってことよ!それより、ありがとうな。子どもを助けてくれて。」



 店主は走って戻っていった。僕は手に持っている肉串を魔法袋に仕舞った。



「食べないの?」


「食べすぎだよ!また後で食べようよ。」


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