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作戦実行

 攫われたエルフ族、獣人族の救出方法を相談をするため、僕達は久しぶりに深淵の森の古代遺跡に戻ってきた。そこでシルバーウルフ達と再会して、1日寛いで過ごすことにした。ただし、アルとペルには滝打ち修行をさせている。



「ペルはよく恥ずかしくないわね!」


「別に恥ずかしくないにゃ!誰にも見られてないにゃ!」


「そうだけど~。やっぱり外で裸になるのには抵抗があるわよ!」


「アルは胸も大きいし、美人なんだからもっと自信を持つべきにゃ!」


「そんなの関係ないわよ!」



 午後になって二人が滝から戻ってきた。当然服は着ている。



「どうだった?結構精神集中できたんじゃない?」


「恥ずかしくてそれどころじゃなかったわよ!」


「私はバッチリにゃ!」



 シルバーウルフ達が甘えてくる。



「なら、森の中に行って魔獣でも討伐しようか?二人にはもっと強くなってもらわないといけないからね。」



 4人で森の中に入っていく。ボルフとシルバーウルフの成獣3匹が僕達についてきた。森の中を探したが魔獣が見つからない。もしかしたらこの近くの魔獣はボルフ達が討伐してしまったのかもしれない。そんなことを考えていると、ボルフが急に走り始めた。その後ろにシルバーウルフ達がついていく。



ウーウーヴーウォン



 ボルフ達に追いつくと巨大なキングベアがいた。ベア種の最上位種だ。頭から角が生え、両手の爪は鋭く長い。あの爪で攻撃されたら簡単に切り裂かれてしまうだろう。



「アル!ペル!君達の獲物だ!」


「えっ?!私達だけで倒すのか!」


「当たり前でしょ!あの程度の魔獣を倒せなかったら、フェアリー大陸を守ることなんてできないわよ!」



 リルの言う通りだ。人族の中にはSランク以上の強者もいる。強力な武器を手にした人族がフェアリー大陸に侵攻していったら、数の少ないエルフ族や獣人族がそれを防ぐのはかなり困難だ。多くの犠牲者が出てしまうだろう。そのならないためにも2人には強くなってもらわないと困る。これは彼女達にとっての最終試験なのだ。



「わかったわよ!ペル!行くわよ!」


「頑張るにゃ!」



 2人の身体からオーラが出てきた。修行の成果が出たのかもしれない。2人がキングベアに近づいていく。すると、キングベアが咆哮をあげて威嚇してきた。



グオ————



 キングベアの身体からもオーラが出ている。さすがだ。キングベアが2人に向かって突進した。2人はすかさず横に飛び避けたが、キングベアはその行動を読んでいたのか、ペルに向かって長い爪で攻撃した。ペルは宙返りしながら間一髪避けたように思えたが、横腹に血がにじんだ。



「痛たた~。よくもやってくれたにゃ!お返しにゃ!」



 ペルがキングベアに向かって走り始めた。キングベアが爪で攻撃しようとしたが、そこにペルはいない。ペルは瞬時に体勢を低くして、気を纏わせた剣で足を斬りつけた。



グオー



 キングベアの足から血が噴き出した。それを見てアルが魔法で攻撃する。



「切り裂け!『氷の刃』」



 アルが魔法を唱えて剣を振ると、剣から薄い氷の鎌のようなものがキングベアめがけて飛んでいく。キングベアはそれを叩き落そうとするが、全部は無理だ。



シュッ

ズバッ



 氷の鎌がキングベアの手や足を斬りつけた。深手を負ったキングベアは勝ち目がないと思ったのか、森の中に逃げだそうとしたが、そこを二人が攻撃した。



「これで終わりよ!」



『疾風斬』



 アルが剣に魔法を付与して力いっぱい振った。すると、見えない風の刃がキングベアに襲い掛かる。同時に、気を纏ったペルの剣がキングベアの頭をはねた。



バッタン



 何とか2人だけでキングベアを討伐した。



「よくやったわね。二人とも合格よ。」


「そうだね。これで卒業だ。後は自分達で修業をすればいいさ。」



 褒められたことが嬉しかったのか、二人ともニコニコしている。



「感謝するわ。ショウとリルのお陰よ!」


「そうにゃ!感謝の印にゃ!」



 ペルが僕に抱き着いて頬にキスをした。



チュッ



「ペル!ダメだから!ショウは私の恋人なんだから!」



 リルが怒り始めたがマイペースなペルには関係ない様だ。その後、ペルの傷を治療してキングベアを解体した。討伐したキングベアはシルバーウルフ達と一緒に美味しくいただいた。そして、ボルフ達に見送られて僕達は王都へ戻った。



「今日はこのままゆっくり休んで、明日の本番に備えようか。」


「そうね。アルもペルも疲れてるだろうから。ゆっくり休んでね。」


「そうするにゃ!」



 部屋に戻って少し休んだ後、僕はリルと一緒に出掛けた。明日までにやるべきことがあるのだ。



「どうしてこの国の王族のこと調べるの?」


「全員じゃないと思うけど、この国の貴族って横柄な人が多かったり、道徳心のない人間が多かったり感じるんだよ。一体王族は何をしてるのか、ちょっと腹が立ってるんだよね。」


「そういうことね。わかったわ。それでどうするの?」


「直接王城に乗り込むさ。」


「大胆ね。」


「自分の目で見たいからね。」



 僕達は王城に向かった。リルの魔法で僕達の姿を消して王城内に侵入したが、何やら様子がおかしい。僕達が国王の執務室にいくと、そこにいたのは国王でなくガルム公爵だった。そして、僕達のすぐあとからシラー伯爵がやってきた。



「ガルム様。陛下の様子はいかがですか?」


「ああ、先日死んだよ。公表はしないがな。」


「なるほど。では、予定通り王子のウイリアムも殺して、次の国王には前国王の弟であるガルム様がおなりになるということですな。」 


「まあ、そういうことだな。だが、地下牢に閉じ込めている后とウイリアムをいつ殺すかだ。」


「ガルム様。明日は大事な闇市が開かれます。その後の方がよろしいのでは?」


「そうだな。闇市で大金が入ってくるのに、わざわざ騒ぎを起こす必要もないしな。ハッハッハッハッ」



 僕の心に怒りが込み上げてくる。



“ショウ!今はダメよ!”


“わかってるさ!”



 その後、僕とリルは宿屋に戻って休んだ。そして翌朝、いよいよ闇市の日だ。僕達4人はシラー伯爵の屋敷に向かった。屋敷に到着するとすでに傭兵達が揃っていて、闇市の会場に向かうところだった。どうやら闇市の会場はシラー伯爵の別邸のようだ。



“アル、ペル。予定通りに行くよ。”


“わかった!”


“了解にゃ!”



 闇市の会場に着いた後、リルとアルは貴族の担当として配置についたようだ。僕とペルは商品の警備に向かった。すると、丁度商品が倉庫に運ばれていた。



ウ~ 


バタン

ドタン


ウ~



 何やら運ばれている箱の中から音が聞こえてくる。隣にいるペルの顔つきがどんどん変わっていく。



“どうしたの?ペル?”


“あの中に同胞がいるにゃ!”


“間違いない?”


“間違いないにゃ!匂いでわかるにゃ!”



 倉庫の中に入ると木の箱が30個ほどあった。恐らく半分近くは誘拐された女性達なのだろう。



“リル!そっちの状況はどう?”


“私達、ガルム公爵の護衛になったわよ!”


“そうなの?なら、一気に片が付けられるかもしれないね。”


“そうね。でも、結構な数の貴族がいるわよ。”


“どのくらいいるの?”


“そうね~。貴族がざっと30人はいるわね。それに護衛が60人はいるかな~。”


“わかったよ。なら、全員が揃ったら始めようか。”


“わかったわ。連絡するわね。”



 それから僕とペルは、見張りをするふりをして攫われた女性達が入れられている箱を特定していった。



“ペル!これで全部?”


“間違いないにゃ!”



 丁度その時、リルから連絡が入った。



“全員揃ったようよ。今からオークションが始まるわ。”


“わかったよ。なら、こっちも行動を始めるよ。”



「ペル!箱の中から彼女達を解放してくれる?僕は警備の連中を排除するから。」


「わかったにゃ!」



 僕は倉庫の中にいる警備の男に近づいて、拳を腹にめり込ませて意識を刈り取っていく。外の警備達は誰も倉庫内の異変に気がつかない。7人ほどいた警備を無力化してペルのところに行くと、獣人族とエルフ族の少女達がいた。



「これから君達を助けるから近くに来てくれる?」


「ショウの言う通りにするにゃ!」



 ペルを見ると獣人族の姿に戻っている。猫耳でふさふさの尾をした猫耳族だ。彼女達に警戒されないように本来の姿に戻ったのだろう。



「可愛いね。ペル。」


「リルに怒られるにゃ!それより早く森に行くにゃ!」



 僕は全員を連れて深淵の森の古代遺跡にテレポートした。いきなり景色が変わって全員が驚いている。説明したいが説明している時間はない。



「みんな聞いてくれ!今日中には君達をフェアリー大陸に連れていくつもりだ。その前に、一時的にここにいて欲しいんだ。ここには強力な魔獣がいるから人間は入ってこないよ。それに、周りにいるシルバーウルフ達がみんなを守ってくれるから安心して!」


「ボルフ!頼んだぞ!」


ワオー



 ペルもみんなに声をかけた。



「私とアルはララノア様とレオン様に言われてきてるにゃ!絶対にみんなを助けるにゃ!」



 やはりペルがいてくれてよかった。攫われた女性達の顔もほころび始めた。中には泣き出す者もいた。当たり前かもしれない。これからどんな酷いことをされるのかと不安だっただろうから。



「ペル!戻るよ!」


「了解にゃ!」


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