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救出計画

 僕は古代遺跡で女の悪魔に瀕死の重傷を負わされ意識を失った。気が付けば神々のいる天界にいた。そこでいろいろな話を聞かされ、自分がこの世界に転生してきた理由も知った。神々からの厳しい修行を乗り越え、僕は地上に戻った。



「ショウ!ショウ!死なないで!ショウ!」



 リルの悲痛な呼びかけが聞こえてきた。僕が目を開けると、目の前には目を真っ赤にしたリルの顔があった。



「ショウ!よかった!生きていてくれてよかった!」


「ありがと。リル。心配かけたね。」


「うんうん。」



 リルの横には心配そうに僕を見ているアルとペルもいた。



「よかったにゃ!」


「うん!無事でよかったわ!」


「アルもペルもありがと。」



 その後、リルが魔法で女の悪魔を討伐したことを聞いて、僕達は古代遺跡を後にした。因みにスケルトンドラゴンのいた部屋には、魔法袋や魔剣らしき物が複数あった。すべて僕の魔法袋に入れてある。



「帰ったらどうするんだ?戦利品を全部ギルドに渡すのか?」


「そんなことしないさ。剣が何本かあったから、その中で好きな剣を3人で選べばいいさ。魔法袋も3人に1つずつはあるよ。残ったものだけをギルドで買い取ってもらえばいいよ。」


「そうするにゃ。私の剣、もうボロボロにゃ。」


「私もだ!」



 その日は遅かったので、いったん宿に戻って翌日ギルドに行くことにした。そして、部屋でリルと2人きりになったので、僕は天界に行ったことをすべてリルに話すことにした。



「実は意識を失っている間、僕は天界に行っていたんだ。」


「そうなのね。」


「あまり驚かないんだね?」


「だって私はフェンリルよ。」


「まあそうだよね。そこで最高神のアテナ様や他の神々の皆さんからいろいろな話を聞いたんだよ。」


「なら、ショウがなぜこの世界に転生したのかもわかったの?」


「まあね。スチュワート帝国の初代様と同じさ。この世界の平和のためなんだって。」


「そこまで聞いたのね。」


「うん。でも、今の僕にはそれほどの力がないって言ったんだ。そしたらフドウ様が修行をつけてやるとか言って、死ぬかと思うほどきつい修行をしてきたんだ。」


「そうなのね。それで以前とオーラが違うのね。」


「リルにはわかるの?」


「当たり前でしょ!これでも神獣よ!」


「そっかー!それで僕には魔法は使えないけど、神々と同じ力を持っているんだって。まさか、『超能力』とか言っていた力が神力だったとは思わなかったよ。」


「そう。そこまで聞いたんだ~。なら、私も正直に話すわね。実は私がショウと会ったのは偶然じゃないのよ。最高神アテナ様にあなたの手助けをするようにって送り出されたのよ。あなたの使っている力が神力なのは知っていたわ。まあ、気術は予想外だったけどね。」


「そうなのか~。多分、リルは知っているんだろうなとは思っていたよ。」


「気がついてたの?」


「確信はなかったけど、多分リルは何か知ってるんじゃないかってね。」



 お互い次の言葉が出てこない。しばらく沈黙が続いた。



「あのさ。」


「あのね。」



 2人が同時に話し始めた。



「なに?リルから先に言って!」


「ダメよ。ショウから言ってよ。」


「いいから!リルから言ってよ!」


「わかったわ。なら、姉からの命令よ。先にショウから言って!」


「ええ~!僕達恋人同士って話じゃなかったの~?」


「違うでしょ!だって、恋人同士ならキスぐらいするのに私達なんにもないじゃない!」



 リルは顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。



「リル!僕ね。日本にいた時に好きな子がいたんだ。でも、その子は僕のことを何とも思っていなくてさ。僕が近くにいることを迷惑に思っていたようなんだ。それを知った時、僕怖くなっちゃってさ。二度と女の人を好きにならないって決めたんだ。だから、リルのことも姉なんて言ってたんだけど、リルのことを女性としてみないように頑張ってたんだ。やっぱり、無理だったよ。僕はリルが好きだ。誰よりも君が好きだ。」



 リルの目から大粒の涙が流れた。そして、リルが僕に言った。



「ありがと。私もショウが好き。大好きよ。フェンリルの私がまさか人間を好きになるなんてね。おかしいわよね。でも、仕方ないのよ。好きなんだから!」



 僕は胸の中にリルを抱きしめ、生まれて初めてキスをした。



「僕は人間だし、寿命があるけどそれでもいいの?」


「わかってるわ。」


「なら、この世界の平和に目途が立ったら結婚しよう。待っていてくれる?」


「いいわ。なら、早く世界を平和にしないとね。ショウがおじいちゃんになっちゃうよ。」



 もう一度僕はリルにキスをした。そしてその日も背中合わせに一緒にベッドに寝転んだ。その翌朝、僕達はアルとペルと一緒にギルドに行くことにした。



「いくらで引き取ってくれるかにゃ~。」


「ペル!人族の金なんて必要ないでしょ!」


「そうだけどにゃ~。お金がないと美味しいものが食べられないにゃ~。」



 ギルドの近くまで来ると、パンクが僕達を呼び止めた。



「ショウ。仕事だ。ついてきてくれ!」



 パンクの後ろを歩きながらリル、アル、ペルに念話を送った。



“いいかい。みんな。目の前に攫われた人達を見つけても我慢してね。悪人達を一網打尽にしたいからさ。”


“わかった!”


“了解にゃ!”



「パンクさん。仕事って何をするんですか?」


「ついてくればわかるさ。」



 シラー伯爵の屋敷に到着すると。すでに20人ほどの冒険者達が集められていた。僕達が到着すると、人相の悪い男を引き連れてシラー伯爵が屋敷から出てきた。



「さて、みんなに仕事だ!明後日、この王都で闇市が開かれる。そこには大勢の貴族が集まるだろう。ついてはその護衛と、商品が奪われないように警備してくれ。わかったな。」


「はい!」



 闇市に何が出品されるのかは不明だ。だが、これだけの人数を集めて警備にあたるのだ。それなりに価値のあるものに違いない。



“アル、ペル。もしかしたら、君達の同胞が一堂に集められるかもしれないよ。”


“わかった!”



 それにしてもこの国の王族や大貴族達はなぜ黙っているのだろう。違法行為が大々的に行われているのだ。どうして取り締まらないのかが不思議だ。


 その後、パンクから集合場所や役割分担などの細かい指示が出た。僕達は初めての仕事ということもあって、出品される商品の警護に当たることになった。



「ショウ。誰にも聞かれない場所で打ち合わせしたいわね。」


「遺跡の家に行こうか?」


「でも、アルとペルがいるわよ。」


「もういいよ。自重するのをやめようと思うんだ。一日でも早く世界を平和にしたいからね。」



 リルが顔を赤らめて言った。



「それってもしかして私のため?」


「違うよ。僕達のためだよ。」



 それから僕はアルとペルを近くに呼んだ。



「2人とも僕についてきてくれるかな。」


「いいけど、何するの?」


「すぐにわかるよ。」



 大通りから入ったところで辺りに人気のないことを確認した。



「なら行くよ。『テレポート』」



 あたりの景色がゆがんでいく。そして気がつけば深淵の森の古代遺跡に戻って来ていた。僕とリルの姿を見て、ボルフやシルバーウルフ達が喜んで飛びついてくる。アルもペルはただただ呆然としていた。



「アル!ペル!着いたわよ!」



 リルに言われて正気を取り戻したようだ。



「ここはどこにゃ?何がどうなってるにゃ?」


「ショウが転移でここまで連れて来てくれたのよ。」



 アルを見ると、ボルフに怯えていた。



「これって伝説の魔獣グレートシルバーウルフだよな。」


「そうだよ。ボルフっていうんだ。可愛いだろ?」



 子どものシルバーウルフもだいぶ成長していた。それでもやはり子どもだ。僕達に体をこすりつけて甘えてくる。するとペルが抱きかかえた。



「可愛いにゃ~!癒されるにゃ~!」



 それから僕達は今後のことを相談した。最初にリルとアルは参加している貴族達の名前をチェックする。その間に、僕とペルは商品の中に攫われた女性達がいないかどうか調べる。



「調べてどうするにゃ~?」


「調べたら全員を解放するさ。一旦僕が全員をここに連れてくるよ。」


「それからどうするんだ?」


「多分、シラー伯爵達が血眼になって女性達を探し始めるだろうから、闇市の会場は大騒ぎになって中止になるだろうね。」


「それで?」


「リルとアルは調べた貴族の屋敷に行って、囚われている女性達を全員ここに連れてくるんだ。」



 するとペルが首をかしげながら言ってきた。



「全員がここで暮らすにゃか?」


「違うさ。フェアリー大陸に連れて戻るんだよ。」


「どうやって連れて行くんだ?」


「僕がテレポートで連れていくよ。ただ、行ったことのない場所にはテレポートできないんだ。けど、テレポート先のイメージがはっきりしていれば大丈夫なんだけどね。」


「テレポートが使えないのにどうやって連れて行くんだ?」


「大丈夫さ。ペル!頭の中に故郷のことを強く思いえがいてくれるかな。」



 するとペルが目をつむって必死に思い描き始めた。僕はペルの頭に手を置いた。ペルの思い描くイメージが僕の頭に流れ込んでくる。物凄く綺麗な場所だ。



「きれいな景色だね。ペル。」


「そうにゃ!フェアリー大陸は物凄く綺麗にゃ!」



 ここでリルが真剣な表情になった。



「ショウ。そのままにしておけば、女性達を解放しても同じことが繰り返されるわよ。」


「ああ、わかってるさ。悪人はたとえ貴族であろうと全員いなくなってもらうさ。」


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