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ショウ死す?!

 僕はアルとペルの修行のため古代遺跡に行った。そこで、リルと力を合わせて強敵のスケルトンドラゴンを討伐した。



「ショウ!これは一体どういうことだ?説明してくれ!」


「凄いにゃ!流石にゃ!」



 仕方ないので、彼女達には正直に話をすることにした。



グサッ



「えっ?!」


「なに?なんなの?」



 突然背中が熱くなった。何が起こったのか自分でもわからない。



「ハッハッハッハッ 油断したようだな。この前の礼はさせてもらったぞ!小僧!」



 声のする方向を見ると、そこにはあの女の悪魔がいた。リルは悪魔に向かって魔法で攻撃する。



「き、貴様~!よくもやったわね!『シャイニングサン』」



 リルの手から光の球が現れて、悪魔に向かって飛んでいく。悪魔は笑いながら言った。



「さすがはフェンリルね。でももう遅いわ。そいつはすぐに死ぬのよ。これであの方の復活を止められるものがいなくなったわ。ハッハッハッハッ」



 女の悪魔はリルの放った眩しい光に溶けてしまった。



「ショウ!ショウ!しっかりして!ショウ!」



 リルが必死に僕に回復魔法をかけている。リルの声がどんどん遠くなっていく。そして、僕の意識は途絶えた。



 “ここどこだ?僕はまた死んだのか?”



 意識を取り戻した僕は辺りを見回した。そこは何もない真っ白な空間だった。すると、ぞろぞろと誰かがやってくる。何人もいるようだ。何か話を始めた。



「だから言ったでしょ!この子はしっかりと修行をさせてから送り出すべきだって!」


「何を言ってるのよ!この子の記憶を消すように言ったあなたが悪いんでしょ!」


「やめないか!二人とも!」



 何やら僕のことで言い争いをしているようだ。声のする方向を見てみると白い服を着た人達が僕を見ていた。



「気が付いたわね。」


「ここはどこですか?」


「ここは天界よ。」


「天界?なぜ僕が天界にいるんですか?」


「今から説明するわね。その前に・・・」



 僕に話しかけてきた女性が手を叩くと、不思議なことに景色が変化した。真っ白な空間の中にいたはずなのに、神殿のような場所にいる。しかも、全員が大理石のような椅子に座っているのだ。僕は何が何だか理解できないでいた。



「もしかして、皆さんは神様なんですか?」


「そうよ。この世界のね。私は生命神のライフよ。」


「俺は武神のフドウだ。」


「私は農業神のアグリよ。」


「俺は商業神エルメだ。」



 そして最後に僕にそっくりな顔の神様が言った。



「私はこの世界の最高神アテナよ。」



 どの神様達も美男美女だ。それにやはり神様だけあって神々しい。僕が見とれていると、生命神ライフが説明を始めた。



「あなたは別の世界で死んでこの世界に来たのよ。」


「知ってます。僕、日本にいたんですよね。」



 神々が顔を見合った。僕が何か変なことを言ったのかもしれない。



「あなた、前世の記憶があるの?」


「はい。」



 すると、生命神ライフが首を傾げた。



「おかしいわね。転生させるときにすべて記憶は消したはずなんだけど。まあ、いいわ。あなたをこの世界に転生させたのには理由があるのよ。」



 日本にいた時も、この世界に来てからも僕は神というものを信じていなかった。目に見えることだけが真実で、それ以外のものは信じられなかったのだ。だが、こうして目の前に神様達がいる。もう信じないわけにはいかない。



「どうして僕はこの世界に転生したんですか?この世界に来てからいろんな事件に巻き込まれるんです。僕は日本にいた時にそんなに悪いことをしましたか?確かに学校に行かずに両親に心配をかけたけど。」



 すると、最高神のアテナが優しい顔で語りかけてきた。



「ショウ。違うわ。あなたは何度も転生して少しずつ力を身に着けてきたの。だから、その力を使ってこの世界を平和にしてほしいのよ。」



 すると、武神のフドウが言った。



「この世界はお前のいた世界に比べて遅れているんだよ。だから、過去にも何度かお前のような転生者を送り込んでいるんだ。」


「もしかして、スチュワート帝国の初代皇帝のタケルって人ですか?」


「ああ、彼もこの世界に貢献してくれたさ。」


「でも、僕には皆さんが思っているような力はありません。魔法だって使えないんですよ。」



 すると、生命神ライフが言った。



「あなた何か勘違いしてるわね。」


「勘違いですか?」


「そうよ。確かに魔法は便利よね。創造神様がこの世界を作られたときに、人々があまり苦労しないように他の世界にはない魔素を作ったのよ。そのおかげで、人々は魔法が使えるようになったんだけどね。でも、所詮は神力の模造品なのよ。」


「どういうことですか?」



 今度は最高神アテナが説明してくれた。



「地球に魔素はないわ。だから人族は文明を築いたの。でも、その文明を使って平気で殺し合いをするでしょ。魔法のようなものが使えたら別の進化を遂げるんじゃないかって考えたのよ。ただ、その結果人族だけでなく魔獣達も生まれたんだけどね。」



 すると、ここまで黙っていた商業神エルメが話し出した。



「誤解するといけないから言っておくぞ。我々が言う人族っていうのは、人間だけじゃないのさ。エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魔族も含めて人族だからな。」


「そうなんですか~。僕は人族って人間だけだと思いました。」



 今度は農業神アグリが説明してくれた。



「地球でも様々な種族が様々な進化を遂げているでしょ。この世界も同じなのよ。進化の過程が違うだけよ。」



 僕にも少しは理解できた。でも、やっぱり腑に落ちない。たとえ神様達の模造品であったとしても、この世界の人々は魔法が使える。それに対して僕には魔法が使えないのだ。そんな僕がこの世界を平和になんてできるわけがないのだ。そんなことを考えていると、最高神アテナが言った。



「あなたには魔法以外の力があるでしょ?考えてごらんなさい。」



 恐らく僕が『超能力』と思っている力のことだろう。



「もしかして、スプーンを曲げたり動きを止めたりする『超能力』のことですか?」


ハッハッハッハッ



 いきなり武神が笑い始めた。



「これは傑作だ!スプーン曲げか!ハッハッハッハッ」


「フドウ!笑いすぎよ!」


「怒るなよ!ライフ!面白いではないか!神力をスプーン曲げの道具として使っているなんて最高ではないか!ハッハッハッハッ」



 不動の言葉通りなら、僕が『超能力』と考えていた力は神の力?



「そうよ。ショウ。あなたのその力は私達神々の力なのよ。まだまだその力を発揮できていないだけなのよ。」


「なら修行すればもっとこの力を使いこなせるようになるんですか?」


「そうよ。あなたはせいぜい神力の1万分の1程度の力しか使えてないわ。」



 知らなかった。僕にそんな力があるなんて。でも、もう遅い。今から修業してもすでに僕は死んでしまったのだから。


 すると、ライフが言った。



「あなたはまだ死んでないわよ。仮死状態になってるだけよ。今からでも遅くないわ。この天界で修業していく?」


「でも、その間に僕の肉体が処分されるんじゃないですか?」


「それは大丈夫よ。天界の時間は過去、現在、未来。すべてにつながっているからね。」


「よくわかりません。」


「そうよね。わからなくても当然よね。でも、安心して。あなたが意識を失ったあの瞬間に戻せるから。」


「わかりました。」



 それから僕の天界での修業が始まった。


 修行の中心はとにかく精神集中することだ。そのためにかなり重い岩を持ち上げたり、100m近い落差の滝に打たれたりした。それだけではない。実際にやけどをすることはないが、燃え盛る薪の上に置かれた石の上を歩いたり、氷点下40度以下の中で寒中水泳を行ったりした。正直、ここが天界でなければ間違いなく大怪我するか死んでいるだろう。

それを永遠とも思える期間続けたのだ。

 

 天界に来て思ったが、天界には朝昼夜の区別がない。つまり時間の感覚がないのだ。排泄する必要もなければ喉が渇くこともない。それにお腹がすくこともない。それにもかかわらず、神々はたまに集まってつまみを食べながら酒を飲んでいる。



「そろそろ精神力は鍛えられたようね。」


「ありがとうございます。ライフ様。」


「今から俺が訓練をつけてやる。こっちに来い!」


「はい。フドウ様。」



 剣術、体術の訓練はフドウ様に見てもらった。自分なりに使えると思っていた気術はまるで役に立たない。フドウ様に『俺に剣を当てることができたら終わりだ』といわれていたが、永遠に無理のような気がしてきた。


 どれほど時間が経ったかわからないが、僕は精神を集中させてフドウを見た。すると、フドウの次の行動が頭に浮かんでくるようになった。その結果、フドウの攻撃をかわすことができるようになり、とうとうその時がやってきた。



「当たった!当たりました!フドウ様!」


「そうだな。見事だったぞ!ショウ!」


「ありがとうございます。」



 すると、今度は最高神アテナがやってきた。



「最後に私の指導ね。神力よ。でも、ここまで修行してきたんだから、私が教えるまでもないかもしれないわね。」


「どういうことですか?」


「ショウ。あなた、自分の心臓の辺りにあるエネルギーを感じられるわよね?」


「はい。」


「それを解放してみなさい。」


「こうですか?」



 僕はアテナに言われた通りエネルギーを解放した。すると、以前僕の身体から溢れ出た赤いオーラよりも、はるかに眩しい虹色の光が僕の身体から放出された。まるで僕自身が光りの球になったような感じだ。周りに神々が集まり始めた。



「やったわね。ショウ。」


「おめでとう!」


「がんばったな!」


「凄いわ!こんな短時間で!」


「俺も負けていられないな!」



 神々が僕を褒めてくれている。物凄く嬉しかった。



「卒業よ。ショウ。」


「ありがとうございます。皆さん。」



 武神のフドウが声をかけてきた。



「お前は自分がどのくらい修行したのかわかるか?」



 いきなりの質問に戸惑ったが、自分の感覚で答えた。



「多分2週間ぐらいですか?」


「そう感じるだろうな~。だが、ここは天界だ。地上とは時間の流れが違うんだよ。お前は地上の時間で考えれば約300年の間、神々の与えた試練に打ち勝ってきたんだ。お前は他の誰にも真似できない偉業を成し遂げたんだ。自信を持つがいい。」



 僕はフドウの言葉に涙が出てきた。前世の記憶がよみがえってきたのだ。僕は学校に行けなくなってから、一人で中学校の勉強をしていた。誰にも質問できずにひたすら勉強していた。あの時父親は言葉にしなかったが、もしかしたら今のフドウのように感じていたのかもしれない。そう思うと両親に申し訳ない気持ちになった。

 


「あ、あ、ありがとうご・・・・。」



 最高神が僕をそっと胸の中に抱きしめてくれた。その横には生命神ライフもいる。



「さあ、ショウ。時間よ。地上に戻りなさい!そして、この世界を頼んだわよ。」


「はい!」


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