アルとペルの修行
遺跡にはいくつも入口があった。他の冒険者達も遺跡の中に入ったり出たりしているようだ。中には大声で喜びながら手に光るものを持っている冒険者もいる。遺跡に眠っているお宝を見つけたのだろう。
僕達は崩れかかっている遺跡の入口から入ることにした。
「どうしてここにゃ?他の人達と同じ場所の方がお宝がありそうにゃ。」
「ペル!ここに来たのはお宝が目的じゃないでしょ!」
「そうだよ。リルが言う通りだ。2人の訓練に来たんだから。」
アルが不思議そうだ。
「遺跡でなんの訓練なんだ?」
「魔法も気術も一番大事なのは集中力なんだよ。薄暗い遺跡の中を精神を集中させて探し回るのさ。それに、遺跡には何か仕掛けがあるかもしれないしね。」
するとリルが言った。
「ショウは優しいから、私がしたような修行をあなた達にはさせないのよ。」
ペルが目を輝かせて聞いてきた。
「どんな修行にゃ!それってそんなに厳しいにゃ?」
「まあね。長時間、裸で滝の中に入っているのよ。最初は流れる水が強いから、立っているのもままならないわ。それに、水が冷たくて凍え死ぬような寒さなのよ。」
アルが顔を赤らめて聞いた。
「それって裸なのか?なら、ショウに裸を見られたのか?」
「何言ってるのよ。裸を見られるぐらい何ともないじゃない!」
リルはフェンリルだ。やはり裸を見られることを何とも思っていないのだろう。だが、アルとペルは違うようだ。
「私にはできない!男に裸を見らるのは・・・」
「私は大丈夫にゃ!ショウならいくらでも見せるにゃ!」
なんか誤解しているようだ。確かに僕は何度もリルの裸を見たが、滝打ち修行の時は僕はいなかったんだから。
「誤解してるようだけど、僕はリルが滝打ちしてるときは違う場所にいたんだからね。」
「だが、一緒にお風呂に入るじゃないか!」
「えっ?!リルとショウは一緒にお風呂に入ってるにゃ?」
「・・・・・」
こればっかりは否定できない。僕は本当は一人でゆっくり入りたいんだけど、リルが勝手に入ってくるんだ。でも、一緒に入っているのは事実なのだから。僕は話題を変えた。
「さあ、話はここまでだよ。精神を集中させてお宝を見つけてよ。そうだ!2人で競争するといいよ!どっちが沢山お宝を見つけられるかな。」
僕の言葉が2人に火をつけたようだ。アルとペルが必死になって探し始めた。1時間が経過したが何も見つからない。すると、ペルがあるものに気が付いた。
「ショウ。この置物何か変にゃ。」
ペルの指さした場所にはライオンのような像があった。ペルが言う通り何か不自然だ。他の像はまとまっているのに一つだけ壁の反対側にあるのだ。僕が近づいて像の頭に手を置くと、像が自然に動いて下に行く階段があらわれた。
「行ってみようか。」
階段を下ろうとするが真っ暗だ。そこで、リルが『ライト』で辺り一帯を照らしてくれた。階段の先に明かりが見える。僕達は急いで階段を下りると部屋があった。この遺跡がどれほどの期間眠っていたかは知らないが、部屋に取り付けられた屋内灯のようなものが光っている。
「これ魔石ね。多分、獅子の像が動くと灯りが灯るようになっていたのね。」
確かにリルの言う通りかもしれない。部屋の中を見ると奥に続くドアがある。
「みんな注意しながら行くよ。」
「わかったわ。」
「了解にゃ!」
部屋の奥から剣を持ったスケルトンが現れた。その数、30体以上いそうだ。剣を持って僕達に向かってくる。
「気を付けて!」
数が多くても相手はスケルトンだ。アルもペルも問題なく討伐している。だが、スケルトンの後ろからスケルトンメイジが現れた。結構威力のある魔法を放ってくる。すると、リルがアルに指示を出した。
「アル!あなたの獲物よ!」
「わかったわ!」
アルはエルフ族だ。人族であれば通常は1人1属性の魔法しか使えないが、アルは違っていた。剣に炎の魔法を付与してスケルトンメイジに斬りかかった。スケルトンメイジは身体の前に結界を張って攻撃を防ぐ。さらに、アルに向かってブツブツと魔法を唱えると、アルの足元に黒い影が現れ、アルが動けなくなった。
「アル!精神集中だ!」
スケルトンメイジが手から黒い剣を取り出してアルに襲い掛かる。アルは足元に土の魔法を放って何とか攻撃を回避した。
「これならどうだ!」
今度はアルが剣に魔力を込めて振り下ろした。すると、巨大な炎がスケルトンメイジに向かって行く。スケルトンメイジは結界で防ごうとするが、アルの炎は結界をぶち破ってスケルトンメイジに直撃した。
バリン
スケルトンメイジは炎に包まれて焼失した。
「よくやったわね。アル!」
「まあ、私が本気になればこんなもんね。」
強がっているがかなり嬉しかったようだ。部屋の奥にはまだ開封されていない宝箱のようなものがあった。蓋を持ち上げると古代のお金が箱いっぱいに入っていた。
「やったわ!これって私の発見だよな!」
「ずるいにゃ!」
「スケルトンメイジを討伐したのはアルなんだから、アルの発見ってことでいいんじゃないかな。」
アルはニコニコしている。ペルは少し残念そうだ。宝箱ごと僕の魔法袋に仕舞って、僕達はさらに先に進んだ。すると、甲冑を身に纏った人形が10体立っていた。まるでそこに本物の騎士達がいるようだ。
「まさか、あれが動き出すなんてないよね。」
「ショウ。あなた何言ってるのよ!ただの人形じゃない!」
僕達が奥の部屋に進もうとすると後ろから音が聞こえた。
カチャ ガチャ
4人がそっと後ろを見ると、武器を手にした甲冑達がこちらに向かってきていた。
ズドン
「危ないな~!」
僕の目の前に鎖につながった大きな鉄の塊が飛んできたのだ。
「やっぱり動くじゃないか!」
「仕方ないでしょ!みんなで戦うしかないわよ!」
アルが剣に炎を纏わせ甲冑を攻撃するが、相手の動きも結構俊敏だ。簡単には攻撃を受けてくれない。それでも甲冑のところどころが焼け焦げている。一方、ペルを見るとかなり苦戦していた。剣は当たっているが、甲冑に傷をつけることができないでいる。
「こいつら固いにゃ!」
「ペル!心臓の辺りに神経を集中させてみて!そこに熱いものがああるから、それを腕に集中させるんだ!」
「わかんないにゃ!」
「ショウが言う通りやってみなさい!」
「わかったにゃ!」
僕とリルで6体ほど無力化した。残りは4体だ。ここで僕はリルに言った。
「後は2人にやらせてみようか。」
「そうね。危なくなったら手を貸せばいいわよね。」
アルの魔法の威力は以前よりもあがっているが、それでも一撃で甲冑を倒すことはできない。同じ場所を何度も何度も攻撃してやっと倒すことができている。ペルに至っては相手の攻撃を防ぐのに精一杯の様子だ。
「ペル!もっと精神を集中させないと勝てないよ!」
「わかってるにゃ!」
相手の攻撃を何度か防いでいるうちに、ペルの身体に変化が見られ始めた。腕の辺りから少しだけオーラが見え始めたのだ。
バキッ
ドサッ
「やったにゃー!倒せたにゃー!」
ペルがものすごく嬉しそうだ。だが、まだ1体残っている。すでに戦闘を終えたアルも僕達と一緒に見ている。
「ペル!がんばりなさい!」
流石獣人族だ。ペルが高くジャンプして上段から気を纏わせた剣を振り下ろした。
バチン
ガキッ
ドサッ
「終わったにゃ!」
ペルとアルの手や足から血が出ていた。それを見てリルが2人に回復魔法をかける。
「ありがとうにゃ!」
「すまない!」
「いいのよ。それにしても2人ともまだまだね。」
部屋を見渡したが、この部屋にはお宝はなかった。そして、奥の部屋に行くと、そこには広い空間があり、地面にはゴロゴロと大きな骨が転がっていた。
「この部屋は何だろうね?」
「わからないわね。」
「この骨って何の骨なんだ?」
「骨を見てたらお腹が空いてきたにゃ!ジュル」
ペルは相当食いしん坊なのだろう。口元を手で拭いていた。
「なら、そろそろ帰ろうか?」
「そうね。また来ればいいしね。」
僕達が帰ろうとするといきなり地面が揺れた。そして、床に落ちていた骨がどんどん集まり始める。
「なんなんだ?あれは?」
「まずいにゃ!逃げるにゃ!」
僕達の目の前に現れたのは強大なスケルトンドラゴンだ。さすがにこれをアルとペルに討伐させるのは無理だ。僕達が引き返そうとすると、部屋の扉がいきなり閉じた。どうやら閉じ込められてしまったようだ。
「あいつは僕達で何とかするしかなさそうだね。」
「そうね。」
僕はアルとペルに言った。
「あいつは僕達が相手をするから、2人は下がってくれるかな。」
「わかったわ!」
アル達が後ろに下がったのを確認して、僕とリルはスケルトンドラゴンに向かって行った。スケルトンドラゴンは死霊系の魔物の中でも最上位種だ。物理攻撃だけでなく、魔法攻撃も放ってくる。いきなり僕達に向かった口から黒い物を吐き出してきた。
「ショウ!あれが当たったらまずいわよ!あれは毒を固めたもののようだからね。」
僕達がいた場所を見ると、床に刺さった黒い物体がドロドロに溶けていた。リルは剣に炎を纏わせてスケルトンドラゴンに斬りつける。地面に落ちた骨がそのまま燃えるのでなく、どんどん再生していく。
「これならどうだ!」
僕は剣に気を纏わせてスケルトンドラゴンの頭を砕いた。
バキン
ドカッ
頭が2つに割れて地面に落ちたが、再び再生していく。
「これじゃあ、きりがないな~。」
何度も何度も同じことを繰り返す。だが、一向にスケルトンドラゴンが弱体化する気配がない。それどころか、まだ攻撃手段を隠していたようでいきなりアルとペルに向かって骨の翼をはためかせた。すると、何もないところから数えきれいない数の鋭い骨が2人に向かって飛んでいく。
「しまった!」
どう考えても間に合わない。このままでは2人が死んでしまう。そう思った僕は念を込めて言った。
『止まれ!』
すると辺り一帯の時間が停止した。アルもペルも驚いている。自分達に向かってきている鋭い骨が、すべて空中で停止しているのだ。2人は慌ててその場を離れた。
『燃えろ!』
僕が念を込めて言い放つとスケルトンドラゴンが青白い炎に包まれ、再び時間が動き始めた。スケルトンドラゴンは狂ったように暴れたが、それでも炎は消えない。そして、とうとう灰になってしまった。
「終わったわね。」
「そうだね。」




