貴族の傭兵になる!
シルベニア王国に到着した僕とリルは、エルフ族のアルと獣人族のペルと知り合った。2人の話を聞くと、どうやらこの国の貴族が彼女達の同胞を攫ったようだ。僕達は彼女達に協力して、彼女達の同胞を救い出すことにした。そして、冒険者ギルドにやってきたのだが、どうやら腕の立つ冒険者達は貴族の傭兵に雇われているようだった。そこで僕は秘策を思いついた。
僕はギルド内にいる冒険者達に聞こえるように、わざと大きな声で言った。
「この国のギルドには弱い連中しかいないのか!情けないな~!僕らのような子ども相手に怖気づくような連中じゃあ、ゴブリンすらまともに討伐できないじゃないか!ハッハッハッハッ」
慌てたのはアルとペルだ。だが、リルはニコニコしている。僕の考えがわかっているのだろう。
「ショウ!いきなりどうしたんだ!」
「そうにゃ!まずいにゃ!」
すると、ガタイのいい男達が僕のところにやってきた。
「おい!ガキ!お前、俺達のことを馬鹿にしてるのか!ちょっとこい!」
僕達は男達の後についてギルドの横の修練場に向かった。
「やり過ぎないでよ。ショウ。」
「大丈夫さ。」
修練場に行くと、声をかけてきたガタイのいい男がやってきた。
「俺が相手をしてやるよ。そこから好きな木剣を取れ!」
「木剣?僕が?どうして?」
「俺と決闘するために決まってるだろ!」
「ふ~ん。そ~なんだ~。でも、あなた程度の相手に木剣なんか必要ないよ。」
「なんだと~!」
すると、男達がひそひそ話を始めた。
「あのガキ殺されるぜ!マックさんはAランクだろ!やばいぜ!あのガキ!」
マックのこめかみに血管が浮き出ている。
「貴様!死んでも文句言うなよ!」
僕は何も持たずに修練場の中央に行った。マックが木剣を持って待っている。
「どっからでもかかってきていいよ!」
「死ね~!」
マックが僕めがけて木剣を振ってきた。だが、目に気を集中させている僕にはスローモーションだ。
バコッ
ボコッ
それは一瞬の出来事だった。マックが木剣を振り下ろしてきた瞬間、僕はすれ違いざまにマックの腹に拳をめり込ませたのだ。
バタン
マックは気を失って倒れ込んだ。周りの男達は驚いた顔で僕を見ている。
「やっぱりな~。これでAランクなのか~。なら僕はSSSランクでもいいぐらいだね。」
僕は木剣を持ちに行った。そして、木剣に気を纏わせて空中にジャンプして木剣を振り下ろした。
バリバリバリッ
修練場の地面に亀裂が入る。周りで騒々しかった男達は顔色を青くさせてその場で固まった。
「あいつ何者なんだ?」
「あんなの初めて見たぜ!」
「凄すぎて何も言えん!」
ここまでは僕の考え通りだ。後は誘いが来るのを待つだけだ。
「リル!アル!ペル!行こうか!」
リルはニコニコしているが、アルとペルは顔が引きつっている。そしてギルドを出た後、アルとペルが言ってきた。
「やっぱり、ショウはただ者じゃなかったんだな!私の見立て通りだ!」
「凄いにゃ!あんなの初めてみたにゃ!フェアリー大陸の武術大会でも優勝できるにゃ!」
ギルドを出てから僕達の後をついてくるものがいる。どうやら、僕の読みが当たったようだ。ギルドでの出来事を見ていたのだろう。中央広場に差し掛かったところで声をかけてきた。
「ちょっと待ってくれ!」
「僕達に何か用ですか?」
「ああ、さっきギルドで見てたんだがな。お前さん達相当強いようだな。」
「・・・・」
僕が何も言わないでいると自己紹介してきた。
「俺はパンクっていうんだ。金になる話があるんだがな。どうだ?」
「金になる話?どんな仕事ですか?」
「ここじゃあ、ちょっとな。一緒に来てくれるか。」
僕達はパンクという男と一緒に行った。ギルドを出てから商業地区を通って、大きな屋敷が立ち並ぶ貴族街のような場所に来た。
「着いたぞ!」
「ここは?」
「シラー伯爵様の屋敷だ。俺はここで傭兵長を任されてるんだ。お前達、傭兵にならないか?俺が伯爵様に紹介してやるぞ!」
僕はリルを見た。リルは頷いている。アルとペルは困惑していた。そこで、僕は2人に念話で話しかけた。
“計画通りだよ。貴族の傭兵になれば君達の同胞を見つけやすいだろ。”
いきなり頭の中に声が聞こえたのが不思議だったのだろう。2人は僕の顔を凝視した。
「いいですよ。」
「よし!なら、すぐに伯爵様に会いに行こうか!」
僕達はシラー伯爵の屋敷に入った。すると、広い庭があり、そこには傭兵らしき男達がたむろっていた。こちらをじろじろと見ている。美女が3人もいるんだから当然かもしれない。玄関前で待っていると、白髪交じりの貴族らしき男が現れた。その横には人相の悪い男が立っている。
「お前がショウか!」
「そうですけど!」
僕が子どもに見えたのか、伯爵の顔が厳しくなっていく。そして、リルやアル、ペルに目をやった。
「パンクの推薦だ。雇ってやろう!今日から働け!」
伯爵の隣の男がリルに注目していた。もしかしたら魔法が得意なのかもしれない。だとしたら、魔力のない僕よりもリルに注意が向くのは当然だ。
「今日は帰っていいぞ!」
「そうですか。わかりました。」
帰ろうとする僕達をパンクが引き留めた。
「ちょっと待ってくれ。細かい条件を言っておこう。」
パンクから説明された条件は、普段は伯爵の屋敷にいても冒険者として活動していても構わない。だが、必要なときはすぐに伯爵屋敷まで行かなければならない。給金はその都度渡されるとのことだった。大体1回の報酬が一人当たり金貨5枚だそうだ。結構な金額だ。
僕達はパンクから細かい条件を聞いた後、伯爵の屋敷を出た。帰り道でアルとペルが聞いてきた。
「ショウ。お前はいったい何者なんだ?ギルドでのあの身のこなしといい、念話といい、ただの人族には思えないんだがな。」
「そうにゃ。私も魔力はほとんどないにゃ。でも、ショウはまるっきり魔力がないにゃ。」
「ギルドで使ったのは気術だよ。」
「気術?」
「そうさ。君達の言う通り僕には魔力がないからね。別の手段で鍛えたのさ。」
「なるほどな。私も訓練すれば使えるようになるのか?」
「アルはエルフだから無理だと思うよ。でも、ペルなら使えるようになるんじゃないかな~。」
「本当にゃ?」
アルが落ち込んでしまった。すると、リルがすぐに慰めた。
「アル!あなたには魔法があるじゃない!別に落ち込むことはないと思うわよ。」
「確かに私の戦闘スタイルは魔法が中心だが、せいぜい中級レベルだ。ショウが使った気術に比べれば大したことはないさ。」
「なら、そっちの訓練をすればいいじゃない。私が教えてあげるわよ。」
「えっ?!お前は中級以上の魔法が使えるのか?」
「まあね。」
アルとペルは一瞬驚いたが、すぐに意気消沈したように黙ってしまった。その日は宿に帰って、その翌日4人でギルドに行った。目的はアルとペルの修行をするためだ。昨日のことがあったせいか、冒険者達は僕達と目を合わせようとしない。掲示板を見ると古代遺跡の調査依頼があった。
「これにするか!」
リルが紙を剥がして受付に提出した。そして、僕達は王都近郊の古代遺跡に向かった。古代遺跡まで行く間、ちらほらと冒険者達にあった。僕達のことを知っている者達は、やはり目を合わせようとしない。
「ショウ。あなた、やりすぎた様ね。」
「仕方ないよ。あれぐらい目立たなきゃ声なんかかけてこないだろ!」
するとペルが笑いながら言った。
「女達なら声をかけてくると思うにゃ!」
なんか嬉しいような。悲しいような気持ちだ。古代遺跡に到着すると、僕が住んでいた深淵の森の遺跡と似た雰囲気だ。だが何かが違う。
「リル。この遺跡って僕達のいた遺跡と何か雰囲気が違うよね?」
「そうね~。この遺跡からは神聖な雰囲気が感じられないわね。」
リルに言われて思った。僕のいた遺跡は確かに神聖な感じがあった。それに対して、この遺跡からはどんよりしたものを感じるのだ。
「さあ。遺跡の調査を始めようか。」




