エルフ族のアルと獣人族のペル
シルベニア王国に到着した僕達は、王都イスタンクに向かった。そこで、人族の国にはいないはずのエルフ族と獣人族らしき女性冒険者と出会った。敢えて僕達は2人と距離をとっていたのだが、王都イスタンクに着いた後も僕達の後をついてきたので、僕が2人に声をかけた。どうやら大事な話があるらしい。そこで4人で食堂に入ることにした。
「僕、日替わり定食で!」
「私もショウと同じものを。」
「私達も同じでいい。」
注文して待っている間に自己紹介をしてきた。
「私はアルミナスだ。アルとでも呼んでくれ!」
「私はペルシャにゃ。ペルでいいにゃ。」
自己紹介が終わったところでいきなりリルが聞いた。
「それで話って何なんだ?」
「ここじゃ話せない。食事をした後、話の出来る場所に行こう。」
料理が運ばれてきた。相変わらず肉料理が中心だ。この世界は文明が遅れているため、海鮮料理は港町でしか食べられないのだろう。2人も相当お腹が空いていたようで、無言で食べていた。食事が終わると僕達は宿屋を探した。宿屋の部屋の中なら話もできると思ったのだ。
「この宿屋にしようか?」
「そうね。私達はここにするけど、あなた達はどうするの?」
「私達もここでいい!」
それぞれお金を払って部屋に行った。そして、2人が僕達の部屋にやってきた。
「2人は同じ部屋に泊まるにゃ?どんな関係にゃ?」
「そんなことどうでもいいでしょ!早く話してよ!」
すると、アルが何やら言いにくそうにしている。こういう状況の時、リルはかなりイライラし始める。我慢できなくなったのか、いきなり2人に言った。
「あなた達、エルフと獣人でしょ!」
2人は顔を見あって驚いた。
「ど、どうしてそれを?!」
「わかるに決まっているでしょ!どうせ魔法で変身しているんだろうけど、あなたが言った通り魔力を見ればすぐにわかるわよ。」
「そうか~。ばれてるなら話が早いな。実は私達は同胞を救い出すためにこの国にやってきたんだ。」
「どういうこと?」
「私達の同胞が捕まってるにゃ!この国の連中にさらわれたにゃ!」
2人の話によると、このシルベニア王国の貴族がフェアリー大陸にやってきて、エルフ族と獣人族の女性を攫っていったようだ。そこで、エルフ王国の女王ララノアと獣人族の国王レオンが2人に救出を命じたのだ。このままでは全面戦争になる恐れがあるという。そうなれば大惨事だ。
「その貴族が誰なのかわかっているの?」
「これから調べるにゃ。だから、2人にも手伝ってほしいにゃ。」
「どうして私達なのよ?」
「それは前にも言ったが、お前から神聖な魔力を感じたからだ。それに、エルフ族に伝わる予言があってな。」
「どんな予言?」
「『フェアリー大陸に災いが起きる時、青き瞳をした天使のような少年が現れ、災いを振り払うだろう』と書かれているんだ。」
ここで僕は気になった。アルは今、『書かれている』と言ったのだ。ということは、預言書のような書物があるのかもしれない。かなり気になる。
「それってどんな本なの?」
「預言書だ。誰が書いたのかはわかっていないがな。」
「その予言書には他にどんなことが書かれてるの?」
「私も詳しくは知らない。ただ、お父様から聞いただけだからな。」
「その本って僕も見せてもらえるかな~。」
「よほどのことがなければ無理だろうな。予言書は王家所蔵の本だからな。」
「そうか~。ダメか~。」
もしかしたら青い瞳をした少年というのは僕のことかもしれない。いや、九分九厘間違いないだろう。だとすれば、他にも僕に関することが書かれているかもしれないのだ。そんなことを考えていたが、何故かここまでの話を聞いてリルが納得しているようだった。
なんか僕はこの世界に転生してから、自分の意思にかかわらず様々な事件に巻き込まれる。アルが言う予言書に出てくる少年が僕のことだとしたら、僕はどうしてこの世界に転生したのだろうか。僕には平穏な生活をすることが許されていないのだろうか。いろいろなことが頭に浮かんできた。
「どうしたの?ショウ。」
「ちょっとね。」
リルには僕の考えが分かったのだろう。暫く2人だけにしてほしいと言って、アル達には自分達の部屋に戻ってもらった。
「ショウ。あなた、自分がどうして事件に巻き込まれるのかって考えてたんでしょ。」
「そうさ。僕は転生する前は普通の子どもだったんだよ。なのに、転生したらいろんな事件に巻き込まれるよね。どうして?僕、そんなに悪いことしたのかな~。確かに前世では両親にいろいろ心配かけたけどさ。」
リルが僕をそっと抱きしめてきた。
「ショウがいけないんじゃないわよ。絶対そうよ!こんなに優しいショウが罰を与えられるなんて考えられないもん。」
その日はリルが僕を抱きしめるようにして寝た。僕の不安を解消しようとしてくれたんだろう。翌朝、僕とリルが食堂に行くとすでに2人が食べていた。昨日のことが頭をよぎったが考えてもしょうがない。自分の力でどうにかなることではないからだ。そう考えると意外と割り切れるもんだ。
「今日は王都イスタンクを散策しましょうか?」
「そうだね。」
僕はリルと王都イスタンクを歩き始めた。街を歩いていると、スチュワート帝国と違う点が見られた。貴族達が偉そうにしているのだ。帝国では貴族も平民と同じように普通に歩いていたが、この国では貴族が来ると平民達が道を開けるのだ。
「なんか貴族が偉そうにしてるね。」
「そうね。護衛なんか引き連れて、何なのよ。あいつら。」
「まあまあ。郷に入らば郷に従えだよ。」
「何よ。それ?」
「僕のいた世界の言葉さ。」
「ふ~ん。」
アルとペルが僕達の後ろをついてきている。僕もリルも気づいているが、彼女達を無視して歩いている。
「どうするの?ショウ。」
「彼女達を手伝うつもりだよ。」
「いいの?」
「なんか、僕がこの世界に転生したのって、困ってる人を助けるためのような気がするんだ。」
「そうかもね。」
リルが僕の隣でニコニコしている。リルは神獣だ。神獣がどういう存在なのかはよく知らないが、もしかしたらリルは何か知っているかもしれない。でも、リルが何も言わないってことは、何か言えない理由があるのだろう。
パッカパッカパッカ
前方から馬車が走ってきた。王都の大通りなのに結構なスピードが出ている。危ないと思ったのだろう。通りを歩いていていた人達が急いで端によっている。だが、馬車の前には取り残された親子がいた。親子は気が付いていないようだ。近くにいた人々が声をあげた。
「危ない!」
「逃げろ!」
母親が気付いた時にはもう遅かった。僕は親子を助けるため馬車の動きを止めようと念じた。
『止まれ!』
すると、馬車の動きだけでなく、周りの景色が静止している。まるで辺り一帯の時間が止まったようだ。
「ショウ!あなたがやったの?」
「まあね。馬車だけを止めたつもりなんだけどね。」
「話はあとね。あの親子を助けましょ。」
僕とリルは親子を通りの端まで運んだ。そして静止をといた。すると、何事もなかったかのように時間が流れ始めた。人々は何が起こったのか理解できないようだ。一番不思議に思ったのは親子だろう。母親は子どもを抱きしめながら神様に必死にお礼を言っている。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
僕は急いでその場を離れようと早歩きで移動し始めた。すると、後ろからアルとペルが声をかけてきた。
「あの親子を助けたのはお前なのか?ショウ!」
「・・・・」
「やはりな。だが、どうやったんだ。魔法でも無理だぞ!」
するとリルが答えた。
「私達のことは詮索しないで!それが協力する条件よ!」
アルはペルの顔を見た。
「本当か?本当に協力してくれるのか?」
「やったにゃ!仲間にゃ!」
それから僕達は4人で冒険者ギルドに行った。情報収集のためだ。ギルドに行くと傭兵のような男達が大勢いた。どうやら、貴族がギルドに依頼して傭兵として冒険者を派遣してもらっているようだ。
「よう!兄ちゃん!美女を3人も連れていい身分だな~。」
「・・・・」
「おい!ちょっと待てよ!無視か!」
男が僕の肩に触れようとした瞬間、リルが背中の剣を抜いて男の首元にあてた。
「じょ、冗談だよ!悪かったよ!」
その場が静まり返った。ギルド内の人間が僕達を見ている。そこで、僕はいい案を思いついた。ここで僕達の強さを示せば傭兵として誘いの話が来るかもしれない。そうなれば、攫われたエルフや獣人達を見つける手掛かりがつかめるかもしれないのだ。
「リル!僕に考えがあるんだ。黙って見てて!」




