シルベニア王国に到着
この森の向こうはシルベニア王国だ。もしかしたら僕が安心して暮らせるかもしれない。そんな期待に胸を膨らませて、僕とリルは森を出て草原地帯を歩き始めた。草原には様々な種類の花が咲いている。そこに群がる虫達もいた。物凄くのどかだ。
「リル!城壁のような物が見えるよ。」
「街みたいね。急ぎましょ。」
城壁の近くまでくると、他の街と同じように検問があった。僕とリルは冒険者カードを出して街の中に入る。街の中はやはり深淵の森に隣接しているせいか、冒険者達の姿が多く見られ、酒場と武器屋も多かった。特に武器屋にはそれぞれ特徴があるようで、店の前に飾られている商品が店ごとに異なっていた。
「ご飯でも食べましょうよ。」
「その前に冒険者ギルドに行かないと。魔獣を換金しないとお金が心もとないんだ。」
「なら最初は冒険者ギルドね。」
冒険者ギルドを探していると、やはり街の人達が僕達をじろじろと見てくる。いつものようにそれを無視して歩いていると、剣とドラゴンの絵が描かれた看板があった。どこの国のギルドも看板は似たり寄ったりだ。剣と盾、もしくは剣とドラゴンの絵が描かれている。
「あそこみたいだね。」
ギルドの中に入ると結構な数の冒険者達がいた。意外に女性も多い。ただ、女性冒険者のほとんどは何故か肌の露出の多い服を着ている。僕達がギルドに入ると冒険者達が一斉に僕達を見てきた。
「ショウ。あんまりじろじろ見ないほうがいいわよ。」
「別に見てないよ。」
受付で冒険者カードを見せて魔獣の買取をお願いした。受付の女性が僕をじっと見つめている。
「あの~。魔獣はどこに出せばいいですか?」
すると、僕をじっと見つめていた受付の女性が慌てて言った。
「ああ、買取ね。なら、裏の解体場に来てくれるかな?」
「はい。」
裏の解体場に行って魔法袋からレッドベアとホーンボアを取り出した。
「君達凄いわね。その年で魔法袋を持っているのね?」
「ええ、親の形見です。」
「そうなんだ~。でも、若いのに二人そろってCランクなんて凄いわ。」
すると、リルが不機嫌そうに言った。
「なによ!この国のギルドでは冒険者のことをいろいろ詮索するの!」
「ごめんなさいね。気を悪くしないでね。なんか2人がきれいな顔をしていたからつい・・・」
受付の女性が困っている。
「すみません。姉は少々短気なところがあって。」
僕の言葉が気に入らないのか、リルが肘打ちをしてきた。
“何をイライラしてるんだよ!ダメだよ。リル!目立たないようにするんだから!”
リルがそっぽを向いてしまった。報酬をもらおうと受付カウンターで待っていると、冒険者の女性達が声をかけてきた。
「聞こえたんだけど、お前達Cランクなんだって?良かったら私達のパーティーに入らないか?お前達のような美男美女だったら大歓迎だぞ。」
2人組のパーティーのようだ。そのうちの一人が僕の腕に抱き着いてきた。
「入るにゃ~!お姉さんが楽しいこといろいろ教えてあげるにゃ!」
“にゃ?この人、にゃとか言ってるよな~。おかしな人だな~。でもちょっとかわいいかも。”
僕がそんなことを考えていると、リルの目つきがどんどん変わっていく。かなり危険な状態だ。
「ごめんなさい。姉と僕はこの街に立ち寄っただけですから!」
「そうか!どこに行くつもりなんだ?」
するとリルが怒ったように言った。
「あなた達には関係ないでしょ!お金の用意はまだ?」
リルに急かされて受付の女性が急いでお金を持ってきた。リルはそれを受け取って、強引に僕の腕を引っ張ってギルドを出た。
「リル!何を怒ってるんだよ!」
「知らない!」
ギルドを出た後、リルはずっと僕の手を握っている。
「ショウは何歳になったの?」
「ここに来た時の年齢が分からないから正確じゃないけど、10歳だったとすると15歳になるかな~。」
「そう。なら、人族ではすでに成人扱いね。なら姉弟という設定はやめて、夫婦と言うことにしましょうか。」
リルが急に変なことを言い出した。僕の住んでいた日本では、男性も女性も18歳にならないと結婚できない。ただ、昔の日本では元服が15歳だったからおかしくはないが、この世界は早熟なのかもしれない。
「なんで姉弟じゃダメなの?」
「考えてみてよ!ショウは背が伸びたじゃない!今じゃ私より背が高くて体格がいいのよ!姉弟はおかしいでしょ!」
別にそんなことはないと思うが、リルがそうしたいのなら仕方がない。でも、夫婦っていうのは何か抵抗がある。
「じゃあ、婚約者とか恋人とかじゃダメなの?」
リルがしばらく考えていた。
「いいわ。なら、恋人ね。」
それから僕達は宿を探すために街を歩いたが、リルがいつもよりくっついてくる。少し歩きづらい。
「私、この街あまり好きじゃないかな。明日、すぐに出発しましょ。」
「わかったよ。」
宿屋を見つけた僕達は、お金を払って部屋に案内された。幸福亭ほどきれいではない。でも森の中で生活していたせいか、ベッドの感触に満足した。
「今日はなんか疲れたわ~。」
「リル!疲れてるなら僕が先にお風呂に入るね。その間休んでて!」
僕は久しぶりのお風呂を堪能していた。だが、そんな幸せもつかの間だった。リルがはいってきたのだ。
「ショウ。背中を洗ってあげるわ!」
「ダメだよ!リル!前にも言ったけど、僕はもう子どもじゃないんだから!」
「いいじゃない!恋人同士なんだから!」
なるべく見ないようにするのだが、やはり見えてしまう。それに直接リルの肌が僕にあたるのだ。柔らかくて暖かくて気持ちいけど、やたらと恥ずかしい。お風呂から出た後、1階の食堂に行ってご飯を食べた。帝国の食事に比べて薄味だ。
「なんか味が薄いわね。調味料とか持ってないの?」
「ダメだよ。出されたものはそのまま食べなきゃ。」
「だって~・・・・・」
そして、食後は部屋に戻って今後の予定の確認だ。とりあえずこの国の王都イスタンクに行って住みやすいかどうか判断する。もし気に入らないようだったら、そのままフェアリー大陸に行くつもりだ。
「ねえ~。そっちのベッドに行っていい?」
「なんで?ベッドが2つあるんだからそっちで寝た方が広く使えるじゃん。」
リルが僕のベッドに入ってきて、身体をくっつけてくる。まあ、暖かいからいいけどね。その翌朝ご飯を食べた後、僕とリルは王都行の馬車を探しに広場に向かった。なぜか冒険者達が集まっている。もしかしたら馬車の護衛の仕事かもしれない。その中に昨日僕達に話しかけてきた女性の冒険者達もいた。
「お前達も護衛なのか?」
「違うわよ!私達は乗客よ!」
「お金持ちにゃ。さすがCランクにゃ。私達は護衛でお金を稼ぎながら王都に行くにゃ。」
「大変ですね。頑張ってください。」
僕が女性に励ましの声をかけるとリルが僕の腕を引っ張った。
「あっちの馬車にするわよ!」
僕達の馬車には4人の乗客が乗っていた。若い夫婦と老人夫婦だ。すると老人夫婦が声をかけてきた。
「姉弟ですか?」
すると僕が答える前にリルが慌てて答えた。
「いいえ。私達恋人なんです。」
「そうなのね~。若いっていいわね~。王都まで旅行なの?」
「はい。」
「羨ましいわね~。私達はこの年になるまで夫婦で旅をしたことがなくて、初めての旅行なのよ。」
「そうなんですか~。」
なんか気のよさそうな夫婦だ。隣の若夫婦もニコニコしながら話を聞いていた。そして、いよいよ王都に向けて出発だ。今回の旅は街を3つ越えて行かなければならない。その間に、草原地帯、森林地帯がある。魔獣や盗賊に狙われる可能性があるのだ。そのため護衛の冒険者を雇っているらしい。
「やっぱり馬車はお尻が痛いわね。」
僕は魔法袋からホーンラビットの毛皮を取り出し、それをリルのお尻の下に敷いた。
「どう?」
「ありがとう。大分いいわ。」
僕の行動を見ていた若夫婦が声をかけてきた。
「君は魔法袋を持っているんだね。冒険者なのかい?」
「ええ。僕達、二人とも冒険者なんです。」
「そうなのね~。でも、魔法袋って高価なんでしょ?」
「両親の形見ですから。」
「あら、そうなの。悪いこと聞いちゃったわね。」
「気にしないでください。」
何の問題もなく、馬車は最初の街に到着した。日も暮れかかっていたので、この街で1泊するようだ。僕とリルが馬車から降りると女性冒険者の2人がやってきた。




