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帝都オレゴンを散策する!

 スチュワート帝国の帝都オレゴンに着いた僕達は、幸福亭という宿屋に宿泊することにした。そこで食事をしていると、なぞの男性ユーリと出会った。そして、食事を終えた僕達は帝都オレゴンを散策することにしたのだが、何故か後ろからユーリがついてきた。



「帝都の散策かい?僕が案内してあげるよ。」


「まだ僕達のことを疑ってるんですか?」


「そうじゃないさ。ハッハッハッハッ」



 するとリルが念話を飛ばしてきた。



“建物の陰に2人いるわよ。どうする?”


“僕達じゃないよね~。もしかしてユーリさんが狙われてるってこと?”


”多分ね。“



「ユーリさん。別の道を行きましょう。」


「どうしてだい?大通りに出るにはこの道が一番近いじゃないか。」



 すると、前から小刀が飛んできた。



シュッ


バキン



 僕は咄嗟に背中の剣を抜いて小刀を叩き落した。



「ああ、そういうことだったんだね。ありがとう。ショウ。」



 前方から男2人が剣を片手に斬りかかってきた。今度はユーリが反応した。ユーリの剣からは炎が出ている。恐らく魔法を付与したのだろう。



カキン コキン カン


バシッ バン



 あっという間に2人の男を倒してしまった。やはり、このユーリという人物はかなり強い様だ。ユーリは倒れている男を起こした。



「お前達を雇ったのは誰だ?答えろ!」


グハッ



 男達は口の中に毒を仕込んでいたらしく、2人とも口から血を吐いて死んでしまった。



「ショウ。助かったよ。やっぱり君も強かったんだね。」


「いいえ。そんなことないですよ。安住の地を求めて世界中を旅していれば、誰でも自然と身に着きます。」



 ユーリがにこりと笑いながら言った。



「この帝国が安住の地になればいいんだけどな~。」



 そんな話をしていると衛兵がやってきた。ユーリはその場に残って説明することになり、僕とリルは予定通り二人で帝都の散策に向かった。



「やっぱり命を狙われていたのはユーリさんだったね。」


「そうみたいね。」


「何者なのかな~。もしかして、この国の皇帝だったりしてね。」


「あり得るんじゃない。」



 僕は冗談のつもりで言ったのだが、考えてみればありえない話でもない。この国の皇帝は確かユリウス=スチュワートだ。名前もよく似ている。



「ショウ。そんなことより冒険者ギルドに行きましょ。あの領主様からもらったお金だけじゃいつまでももたないわよ。」


「そうだね。」



 僕達は帝都の冒険者ギルドに行った。さすがに帝都のギルドだ。結構な数の冒険者達がいた。ただ、気になるのは人相の悪い人が混じっている点だ。



「あの~。姉の登録をしたいんですけど。」


「新規の登録ですね。この紙に必要事項を記入してください。」



 リルが紙に書いていく。そして目の前に水晶が取り出された。



「じゃあ、この水晶に手を置いてくださいね。」



 リルが水晶に手を置くと水晶が眩しく光って割れてしまった。



バリン



 騒がしかったギルド内が一気に静まり返った。受付の女性も困ってしまったようだ。僕はどうやって誤魔化そうかと必死だった。するとリルが平然と言った。



「すまない。この水晶、少しひびが入っていたんだけど、大丈夫かと思ったんだけどやっぱり駄目だったようね。気付いたときに言えばよかったわね。」


「そうだったんですか~。驚きましたよ。ハッハッハッハッ」



 受付の女性は苦笑いしている。周りの人達もリルの言葉に納得したようだ。僕達が掲示板を見に行こうとすると5人組の冒険者がギルドに入ってきた。



「ケンさん。今日も大量ですか?」


「まあな。今日はオークだ。」



 受付の女性とケンという人物のやり取りを聞いて不思議に思った。彼らは魔獣の死体を持っていないのだ。すると、その答えが直ぐに分かった。



「いつものように裏の解体場に出してください。」



 彼らの後をついていくと袋の中からオークの死体を取り出した。



「あれって魔法袋じゃん!」



 僕は遺跡で見つけた剣と魔法袋は他人にばれたらいけないものだと思っていた。ところが、普通の冒険者が魔法袋を使っていたのだ。受付で魔法袋について聞くと、意外にも上位の冒険者達はみんな持っているようだった。ただし、収納できる量は金額によってさまざまらしい。



「な~んだ。魔法袋を秘密にする必要はなかったのか~。」



 掲示板を見たが薬草採取の依頼がなかったので、街を少し見物してその日は宿に戻ることにした。



「リル。お風呂に入りたいんだけど、お湯を溜めてくれるかな~。」


「いいわよ。」



 リルがお湯を溜めてくれた後、僕は久しぶりのお風呂を堪能しようと思った。



「あ~。やっぱりお風呂はいいよな~。」



 すると、お風呂の外に人影が見える。まさかと思ったが、リルが生まれたままの姿で入ってきた。僕は慌てて目をそらした。



「リル!僕が入ってるじゃないか!」


「いいじゃない!今までだって一緒に入っていたんだから!それに私達は姉弟なんでしょ!」



 もしかしたら、僕が姉弟と設定したことが気に入らないのかもしれない。



「ダメだよ。年頃になったらいくら姉弟でも一緒にお風呂なんかはいらないよ!」


「どうしたのよ?ショウは恥ずかしいの?」


「いいから!早くタオルで身体を隠してよ!」


「人間ていうのはおかしな存在なのね。裸を見られるのがそんなに恥ずかしいことなのかしらね。」 



 僕はお風呂を堪能しようと思ったがすぐに出た。リルはフェンリルだから体を見られても恥ずかしいとは思わないのだろう。


 そして、僕がベッドで寝ころんでいるとリルが僕のベッドに入ってきた。温かいものが僕の腕に当たっている。



「リル!自分のベッドで寝なよ!」


「だって、今までだって一緒に寝ていたじゃない!」


「それはリルがフェンリルの姿だったからだろ!」


「私はフェンリルよ。人の姿になったって同じじゃない。何がいけないのよ!」


「わかったよ。もういいよ。」


「おかしなショウね。」



 なんかリルがモフモフで僕の抱き枕だった頃が懐かしい。その翌朝、僕達が食堂でご飯を食べているとユーリがやってきた。



「よかった~。まだいたね。昨日は帝都を案内できなくて申し訳なかった。今日こそはしっかり案内するからさ。」



するとクリスがやってきた。



「私も一緒に案内したい!」


「わかったよ。なら2人で案内しようか。」



 なんか、僕達が帝都を案内されることは決定事項のようだ。食事をした後、僕達は4人で帝都を歩き始めた。大通りはかなり広い。帝城に行く途中に男性の銅像が立っていた。その像の男性は手に剣ではなく『刀』を持っていた。



「えっ?!この銅像ってもしかして・・・」


「どうしたんだい?これは初代様さ。初代皇帝のタケル様の像だよ。」



“もしかして日本人?そんなはずはないよな~。”


“ショウ。日本人って何なの?”



 リルが念話で聞いてきた。



“以前話しただろ。僕は違う世界から転生してきたって。前世で僕がいた国だよ。”


“ふ~ん。”



 ユーリがさらに説明を続けた。



「初代様は不思議な方だったようだよ。魔法が使えない代わりに気術に優れていて、それ以外にも不思議な力を使ったようだね。」

 


 ユーリの話を聞いて、初代様がまるで自分と同じだと気付いた。やはり僕と同じ日本人だったのだろう。『タケル』なんて名前は日本以外にはないんだから。さらにユーリが続けた。



「かなり昔の話だけどね、人族同士が争っていて他の種族を巻き込んで大戦が起こったんだ。その時、タケル様が現れて大戦を終結させたって言われているんだよ。偉いだろ?」


「そうですね。」



 静かに話を聞いていたクリスが限界のようだ。



「ねぇ。ユーリ兄ちゃん。帝都を案内するんでしょ?時間が無くなっちゃうよ。」


「そうだね。次に行こうか。」



 次に向かったのは帝城の近くにある国立博物館だ。様々な美術品や魔道具が展示されている。その中で僕は1枚の絵にくぎ付けになった。



「この絵は?」


「ああ、それは初代様が描いた絵だと言われているよ。」



 僕の目の前には雪をかぶった高い山が描かれている絵があった。まさしく富士山だ。不思議だが、その富士山と並んで五重塔も描かれている。その絵を見て自然と涙が出てきた。



「どうしたんだい?」


「い、いえ、何でもないです。」



 僕の様子をリルが黙って見ている。


 国立博物館の中には大きな図書館もあった。今度時間があったら来てみたい。そして、次に向かったのは帝立タケル学園だ。この学園も初代様の時代に作られて、それからずっと存在しているらしい。



「リルお姉ちゃん。私もこの学校に通っているんだよ。」


「そうなのか?今日は行かなくていいのか?」


「今はお休み期間なんだ~。」



 ユーリが説明してくれた。普段は1週間7日の間に2日の休みだが、3か月に一度の割合で2週間の休みがあるそうだ。それと、学園には貴族の子女だけでなく平民の子女でも入学できるらしい。



「思っていた以上にこの国は文明的ですね。」


「そうかい?でもね~。いいことばかりじゃないんだよ。皇族や貴族は権力争いをしているしね。街には貴族と組んで国民達を苦しめる悪党達もいるんだよ。」



 クリスが悲しそうな顔をした。するとリルが言った。



「皇帝は何してるのよ!平和を乱す奴らは処分すればいいじゃない!」



 ユーリが困った顔で答える。



「そう簡単な話ではないんだよ。兄の皇帝を支える貴族と弟を皇帝にしようとする貴族の争いなんだ。下手をすれば国が二分されて内乱が起きるのさ。そうなれば一番被害を被るのは国民達だからね。」



 あまり関わり合いになりたくない話だ。僕は話題を変えることにした。



「少しお腹がすいてきたんですけど、大通りに屋台がありましたよね?行きませんか?」



 僕の気持ちを汲み取ったのか、ユーリがニコニコしながら案内してくれた。



「僕のお気に入りの屋台があるんだ。そこに行こう!」


「ユーリお兄ちゃん。もしかして、キングボアの串焼きのお店?」


「そうだよ。あそこの串焼きは最高だからね。」


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