ショウは神の使徒様?それとも天使様?
僕の発案で孤児院を作ることになった。そして孤児院『翼の家』が完成し、その式典が行われていたのだが、見学している最中に兵士から『ワイバーン』が現れたことが報告された。式典に参加していた街の人達は慌てて家に帰り、領主様とエリーナも急いで屋敷に戻った。そして、僕とリルはワイバーンが出たという場所に向かった。
“リル!ワイバーンってどんな奴?”
“飛竜とも呼ばれているわ。ドラゴンほどは強くないけど、人族の言うSランクレベルの魔獣よ。”
“ロベルトさん達、勝てるかな~。”
“かなり犠牲者が出ると思うわ。”
僕はワイバーンが見えるように城壁に登った。目に気を集中させると、遠くにワイバーンの姿が見えた。空を旋回しながらこちらに少しずつ近づいている。下を見ると、ロベルトやミック達が兵士達を引き連れて城門から出て行く姿が見えた。
“リル!行こうか?”
“ショウ。どうするの?”
“犠牲者が出そうになったら僕が戦うよ。”
“そんなことしたらこの街にいられなくなるわよ。”
“人の命には代えられないよ。”
ワイバーンが近づいてきた。兵士達は一斉に矢を放つがワイバーンの硬い皮膚に弾き返される。逆にワイバーンの炎のブレスで大けがをするものが出た。すると、ロベルト、ミック、ローランド、ジョニー、ヨハンの5人が前に出て、矢に魔法を付与して一斉に放った。すると、ワイバーンは空中で翼を大きくはためかせ、すべての矢を跳ね返した。
「やはりダメか!」
「ミック!諦めるな!もう一度やるぞ!」
「はい!」
5人が矢を準備していると、ワイバーンが急降下して5人に向かって炎のブレスを放った。
“限界だ!行くよ!リル!”
僕は5人の前にテレポートして、背中から剣を抜いて炎のブレスを切り裂いた。
「ショウ!お前どこから現れたんだ?」
「・・・・・」
僕はワイバーンに向かって右手を向けた。
『止まれ!』
すると、まるでワイバーンだけ時間がとまったように固まっている。不思議なことに翼を羽ばたいていないのに落下しない。
『落ちろ!』
僕がワイバーに向けた手を下に向けると、ワイバーンは凄いスピードで地面に叩きつけられた。
バーン
ギャー
よろけながらもワイバーンが立ち上がろうとしている。
「リル!頼む!」
するとリルが大きく吠えた。
「ワオー!!!」
リルの遠吠えと同時にワイバーンに雷が落ちた。
バリバリバリドッガーン
ワイバーンの身体から煙が立ち込める。それでもワイバーンは立ち上がろうとしていた。
「しぶといな~。」
『燃えろ!』
すると、ワイバーンの身体が青白い炎に包まれていく。そして、しばらくしてワイバーンが完全に動かなくなった。
「終わった~。」
後ろを振り向くと、ロベルト達の顔が恐怖で引きつっている。当たり前だ。ワイバーンの炎のブレスを剣で斬り、見たこともない力を見せられたんだから。
「ショウ!お前・・・・・・」
ロベルトが何かを言いかけている。でも、聞きたくなかった。いや、聞くのが怖かったのだ。
「リル!行くよ!」
“いいの?”
「ああ。」
『テレポート』
僕は深淵の森の住処まで転移した。
“よかったの?”
“ああ。仕方ないよ。”
“また一人ね。”
“そうだね。”
“これからどうするの?”
“そうだな~。しばらくここで休んでから森の南にあるスチュワート帝国に行くよ。”
“ええ~!スチュワート帝国に行くの~!”
“だって、僕はあんな力を見せたんだよ!どう考えたって魔王扱いされるよ!森の反対側にいけば追ってこないでしょ!”
“でも、森を迂回して情報が流れる可能性もあるわよ。”
“そうなったらまた別の国に行くさ。”
リルが僕の膝に頭をのせてきた。僕はリルを優しくなでた。どれくらい時間が経っただろうか、2人とも寝てしまったようだ。起きるとすでに朝だった。
「じゃあ、南に行こうか。」
僕達は南に向かって歩き始めた。
その頃、ギザの街では大騒ぎになっていた。領主の屋敷にはロベルト達とサモンが呼ばれていた。領主様の隣にはエリーナの姿もあった。
「ロベルト!一体どういうことだ!エリーナの前でもう一度説明しろ!」
「ハッ 先日現れたワイバーンに我々が攻撃を仕掛けたのですが、全く歯が立たずに大けがをするものも出たんです。そんな時、ショウが突然我々の目の前に現れて・・・」
「ちょっと待て!突然とはどういうことだ?」
「はい。言葉の通りです。そこにいなかったはずのショウがいきなり現れたのです。」
領主様はしばらく考え込んだ。
「続けてくれ!」
「ハッ それからショウがワイバーンに向かって手をかざして『止まれ』というと、ワイバーンだけ時間がとまったように動かなくなったのです。しかも、地面に落ちることもなくです。まさに、ワイバーンだけ時間がとまっていました。」
「落ち着け!ロベルト!それからどうしたんだ?」
「ハッ ショウが『落ちろ』といいながら手を下におろすと、ワイバーンが地面に叩きつけられました。それでもワイバーンが動こうとしたのです。すると今度はあのリルという大きな犬が遠吠えをしたのです。そうしたらいきなりワイバーンに雷が落ちたんです。」
「それは本当か?ならば、リルという犬が雷を落としたということだな。」
「はい。私にはそのように思えました。」
「それからどうしたのだ?」
「ハッ 雷に打たれてもワイバーンは動こうとしていました。するとショウが『燃えろ』といったんです。その途端、ワイバーンが青白い炎に包まれて絶命したのです。やはり、私が深淵の森でレッドベアを討伐した時の炎は、ショウの仕業だったと思います。」
「なるほどな。」
エリーナは目をキラキラさせて頷きながら聞いていた。
「それでショウはどうしたのだ?」
「ハッ ワイバーンが死んだのを確認すると、リルという犬と突然姿を消したのです。」
「ショウ様~。」
心配そうなエリーナを領主様が抱き寄せた。
「領主様。ショウは一体何者なんでしょうか?私には彼が人間とは思えません。」
「そうだな~。私にもわからん。以前ショウに聞いたことがあるんだ。『お前は神の使徒様なのか』ってな。すると、彼は『神がいるかどうかすらわかりません。』と答えたよ。」
「そうですか~。彼の力は昔の魔王のような力なのかもしれないとも思いましたが、彼が悪の存在には思えません。」
するとエリーナが泣きながら言った。
「当たり前です。あの優しいショウ様が魔王であるはずがありません!きっと天使様です!」
領主様がポツリと言った。
「それにしてもショウはどこに行ったんだろうな~。」




