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  作者: ぴゃまりょ
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私の嘘

 私のような人間は彼には見合わない。

 彼は成績優秀でありながら、大学デビューに全てを注いだかのようなブリーチした髪やピアスを光らせる陽キャラ男子だ。動物番組や恋愛ドラマなんか見るとすぐ涙を流す感受性を持ち合わせていて、私を女として認めてくれた温かい心の持ち主。それに比べて私は、勉強が苦手で動物が人に心を開く場面などどうでもいいし、片思いの彼に告白できないまま死別してしまう悲劇のヒロインの御涙頂戴ドラマとかどうでもいい。それに私は人から好意を持たれるためなら嘘だってついてしまう。


 彼と出会ったのは大学の授業でのこと。私は簡単に単位が貰えると噂で聞いた講義に、諸事情で遅れて出席した。その噂は本当のようで教室は学生で溢れて空席が見当たらなかった。少し背伸びをしながら教室を見渡す私を見ているだけの学生と目が合う。その中に彼がいた。彼はペンを持った手で軽く手を振り、自分の隣が空席であることを私に教えてくれた。これがキッカケで彼と友達になった。


 彼と私は正反対の性格だけど私が勉強できないのを見て彼は私に付き添って教えてくれた。気がつくと彼とは恋人のような関係になっていた。

 梅雨が明ける頃、彼から誕生日を聞かれた。私の誕生日は12月。でも私は来週だと嘘をついた。12月になる頃には、私たちの関係が終わっているかもしれないと思って吐いた嘘だった。彼と幸せな時間を過ごしたいと思って嘘を吐いてしまった。


 彼はいつも笑顔で、私もその笑顔を見て幸せだった。色んなところでデートをした。プールや海に誘われたときは断ってしまった。泳げないから楽しめないって嘘をついて。本当は泳げるし何なら私は勉強は苦手だけど運動は得意だった。「泳げないなら俺に掴まってれば大丈夫!浮輪も用意するし!」なんとでも理由をつけて私を連れていけたはずなのに、彼はただ笑顔で「そっか、じゃあ水族館にでも行こうか」と別のプランを考えてくれた。


 他にもいろんな嘘をついた。彼の趣味に私も好きと合わせたり、私がアザを作ったときも転んだだけとか、本当の私を知った時、彼から嫌われることが怖かった。私の言葉を疑いもしない彼は趣味の話で3時間も電話したり、消毒して絆創膏をくれた。デートを中断したときは私の気分を察してか何も言わず受け入れてくれた。


 彼と居たとき私の生活は充実してた。苦手だった勉強も少し好きになれた。嘘ばかりだったけど、彼への感情に一切の嘘はなかった。


でも、まだあなたに嘘をついていることがある。


僕のような人間はあなたには見合わない。

彼は僕のことを、どう思ってただろう。僕は彼のことが好きだ。男性、同性として。これ以上嘘は付きたくない。彼を傷つけたくない。会うたび会うたびに強くなっていく想いを殺し僕は彼から離れることを決めた。本当の私を知られる前に。

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