クレオの嘘
今回も引き続きクレオ視点になっています。よろしくお願いいたしますm(_ _)m。
魔王四天王の紹介。
ヴォイズ(父親) クレオ(長女) エルク(長男、クレオの弟) 魔女?(女性、母親)
「クレオ…アイツ等がそうだ」
あれが鎧の着物!? あの少女が選ばし者!?
「しかしクレオ、どういうことだ? 奴らと接触するということは? 何か秘策でもあるのか?」
「秘策…あんまりそんな物はないけど」
「では、どうするつもりだ」
「そうね。あの少女が装着している鎧の着物を高く買い取って国の家宝として永久に保管するの」
「高く買い取る?」
「ええっ。奴らの一生の生活を保証するだけの金額を出してね」
「意味があるのか? それは…」
「出来る限りならあまり奴らとは戦いたくない。私が魔神を召喚するのも最終手段にしか過ぎないから」
「クレオ…鎧の着物を国の家宝として保管するといったな。何の意味がある!?」
「意味…私はね、安全に魔族達を守ろうと…」
「ふざけるな!」
私は父上に右手で髪を捕まれました。長いストレートヘアが揺れています。
「父上、止めて…」
「クレオ…お前はただ鎧の着物に心を奪われているだけだろ。私からしたら良い迷惑だ、鎧の着物は直ちに滅ぼさなければならない鎧、魔族ならその意思を強めたらどうだ」
その時でした、父上の背後から光魔法が…。パパに当たりそうになりました。間一髪のところで躱したパパ。私の髪を鷲掴みにしながら木の上に瞬間的に移動しました。
「ヴォイズやめなさい、人間を襲うのは!」
「驚いたな、まさかここにいるのがバレるとはな。悪いがコイツは私の…」
(待って! 父上)
(なんだ?)
(父上、今はわざと演技するの)
(演技なんぞ何の意味がある…)
(私が父上の仲間だと思われないためよ。疑われちゃうでしょ!?)
(私は嫌いだな。そんなこと)
(じゃあ…鎧の着物を奪えなくても良いの?)
(!?)
(もし私が父上の仲間だって分かったら奴らから鎧の着物を奪えなくなる。そうなったら父上も魔王様も滅んでしまうわ)
(分かった。だが、鎧の着物を手に出来たらお前の望む保存ではなくこの世界から消滅させてもらうからな)
(……)
(それくらい良いだろう。私は魔王様に服従しているからな。お前も魔王様に服従しているなら考えを変えたらどうだ)
(分かった…二度と永久保存するなんて言わない。彼女達から鎧の着物を交渉したら父上の好きにしても構わないわ)
(ふん、分かれば良い。後、言っておくが、演技は好きではないからな。私はこの場を去る。奴らから必ず鎧の着物を奪い出せよ、良いな)
捕まれていた右手から離されると、私は落下してしまいました。下から彼女達が受け止めてくれたましたが、私が地面に落下した反動で尻餅をついたようです。
「大丈夫ですか!?」
「ありがとう、助かったわ」
「いえいえ、お礼なんて。私、お恥ずかしいです」
「ねえ、あなた、何てお名前なのかしら?」
「わ、私ですか!? 私はロンナって言います」
「ロンナちゃん。可愛い名前ね」
「私はワカナ。よろしくお願いいたします」
ロンナに付き添っていたもう一人の女の子も私に頭を下げました。
「ロンナちゃんにワカナちゃん。ねえ、良かったら私の住んでいる王宮に来ないかしら?」
「?」
「助けてもらったお礼だから…」
「あの、格好見て思ったのですが、もしかしてお偉いさんですか?」
「申し上げるのは遅れたわ。私の名はクレオ。隣街にある国の妃をしているの」
「き、妃!?」
「ええっ」
「でもどうしてそんな方がこんなところに」
「そんなの決まってるじゃないですか!? ヴォイズに拐われたのですよ!」
「そ、そっか。なるほど」
「ねえ、ロンナちゃん?」
「?」
「もしかして、あなたの着けているその鎧が鎧の着物かしら?」
「は、はい。でもどうしてそれを…」
「鎧の着物は有名よ。この世界に貴重な光属性を持っていて複数の特殊スキルを備わっている最強クラスの鎧だっていう話は私にも伝わっているわ」
「そ、そうなのですか?」
「ええ…でもね、大昔、破壊神と呼ばれた魔神がいたの、この世界に」
「ま、魔神…ですか?」
「ええっ。魔神はたくさんの人間達を殺戮し、この世界に死を齎したと言われているわ。さすがのあなたでも今、魔神が出現したら太刀打ち出来ないと私は思う」
「わ、私が太刀打ち出来ないってそんなに強いのですか!? その魔神は!?」
「ええっ。でもね、ロンナちゃん。私はあなたの強さは否定しない。あなたは鎧の着物の選ばし女性だし、きっと魔王にも負けず劣らずの強さのはず…きっと今、魔王と戦っても勝てると私は踏んでいる。つまりあなたが出てきたことはきっと魔王からしたら相当、不味いはずね」
「はい、だから私は魔王に命を狙われました。私の両親は殺されましたが…」
「そ、そう。ごめんなさいね、辛い出来事を思い出させちゃって…」
「い、いえ。あなたの責任ではありませんから」
「と、とにかくごめんなさい。ロンナちゃん、ワカナちゃん、お話続けるわね…」
「は、はい」
二人が一緒に返事をしました。
「恐らく魔王は最終手段として魔神を復活させようと企んでいる…ロンナちゃん、あなたに対抗しようとしているのよ。だからね、私はあなた達のことがとても心配で仕方がないわ、ロンナちゃん、ワカナちゃん」
「わ、私達が心配なのですか?」
ロンナが私に言いました。
「ええっ。だからあなた方に魔王を倒すのを引き下がって欲しい。若い命を亡くして欲しくないから。だからロンナちゃんやワカナちゃんにお願いしているの?」
「でも私達は仲間を救出しないといけなくて! 魔王四天王に吸収された仲間達を!」
そう言ったのはワカナです。
「そう…。目的があるのね。仲間を助けたい気持ちは凄く分かるけど、魔王が魔神を復活させようとしている以上、とても危ないから…」
「私、逃げたくない…」
「ロンナ…」
「私、どんな相手でも逃げたくありません。だって逃げてしまったらみんなの期待を裏切ることになるから。例え相手がそんな強い魔神でも…」
「ロンナちゃん、考え直して…」
「クレオさん、私達のことを心配してくれているあなたの気持ちはとても良く分かりますが、ロンナも私も目的があります。だから私達の気持ちは変わりません。魔王がそれほど強い魔族を復活させようとしていたとしても」
「あなた方の気持ちは強いようね。魔王を倒したいって思う気持ちは…」
二人は縦に頷きました。
チッ! やはり交渉は簡単ではないようね。落ち着きなさい、クレオ。まだ私にはチャンスがある…。しかし立てた計画がすぐに狂いそうになってしまう。
「クレオさん、ごめんなさい。王宮に誘ってくれているのは非常にありがたいですが、魔王が魔神を復活させようとしている話が本当なら私達はのんびりしている時間なんてありません。ロンナ、急ぎましょう!」
「そ、そうですね。ワカナさん!」
不味い、これでは逃げられてしまう! なんとか引き止めないと!
「あっ、待って!」
「?」
「せっかく王宮に行くのにもったいない。だから暫くは王宮にいると良いわ。美味しい料理もたくさん用意するから」
「えっ、料理! 良いんですか!?」
ロンナが食い付いてきました。ですが、ワカナはそうではありません。
ぐうううう
ロンナのお腹から腹の虫が鳴っています。これは私からしたら凄く良い展開です。
「当然よ! あなた方には特別にたくさんの豪華な料理を提供するわ」
ロンナとは何とか打ち解けそうです。しかし問題はワカナです。彼女は私のことを怪しいような目で見ています。
もしかしたらワカナは私からしたら凄く邪魔な存在になるかも分かりません。私にはそう思えてなりません。
読書のお時間いただきましてまことにありがとうございます。