ルールを守らせるためのターン
「ゲームのターンを守ることは、物事のルールを守るために必要なのです」
小さい頃からルールのあるゲームを楽しむからこそ世間のルールが守れる立派な大人になれるのです。
子供の我儘を通して大人になってはいけません。交代交代のルールもしっかり守って頂かないと、いつまで経っても子供です。
信号機だって、歩けるターンと歩けないターンを赤青赤青……と永遠に繰り返しているのです。
「いつまでも子供の気持ち、忘れたくないぞよ」
わんぱくでもいい、たくましく生きてくれってやつでしょうか。
「都合のいい時だけ『子供の気持ち』とか言うのはやめてください。卑怯な大人の逃げです」
誰にも許されないでしょう。
あんた、もう奥さんおるんよ、隣に。
「それに、世間に出れば細かいルールだらけでございます」
学校の校則もその前準備でございます。
ルールを守れる大人になるための、準備なのです。
ルールを守れない者が、どういう目に合うのかを知る準備期間なのです。停学とか退学とか、ダブりとか……。
「魔中学校にもいろいろな校則がありました」
生徒手帳は必ず持ち歩くとか、靴下は白、Tシャツはワンポイントまでとか……守ることこそが正義でした。
「前髪は眉毛にかからないとか、男子は丸坊主とかぞよ」
「古過ぎて冷や汗が出るわ。今どきそんな校則がある学校、無いでしょ」
魔王妃は耳にかかる髪をクルクル指先に巻き付けてみせる。ひょっとして、あてつけ?
「私は顔が無かったので、その校則は適応されませんでした」
髪も頭も前髪も眉毛も無いから、みんなによく虐められたものだ。シクシク。
「……」
「なんて言ったらいいのかしら」
なにも言わないでください。今では自虐ネタですから。
「校則はともかく、ゲームですらルールが多過ぎると嫌になるぞよ」
「そうですね。最近のゲームは特にルールが難しいです」
決して若者についていけない訳ではないぞ。ガントレットでコントローラーを操作するのが苦手なだけだぞ。
「放置プレイでいいじゃない」
やめて。放置するならそもそもゲームしないで。
むしろあなたを放置したい。玉座の間にしゃしゃり出てこないでほしい。急に来るとかも勘弁してほしいと言いたい。
「やだ、デュラハンったら、わたしを玉座に縛り付けて放置プレイしたいだなんて、いやらしいわ。よく魔王様の前で言えるわね」
言ってないぞ――! パイプ椅子の上でクネクネ腰を動かすでない!
「破廉恥ぞよ! つまりデュラハン!」
つまりデュラハンって、なに! 恐ろしいワードではありませんか。
「お待ちください! ……放置するだけで放置プレイとは言ってはおりませぬ」
そもそも声にして言ってない。勝手に人の考えていることを読むなと言いたい。言わなくてもバレてしまうので頭が痛い。
今日も暑苦しそうなドレスを着込んで……洗濯する方の身にもなって欲しいぞ。自分で洗濯しろと言いたいぞ。
「魔王様、デュラハンとの将棋など、放置プレイでいいのよ」
いや、待ってよ。いつも将棋をしようとしつこく迫ってくるのは魔王様なのだぞ。むしろ、私の方こそ被害者なのだぞ。これだけは代わってほしいぞ。
「なるほど、将棋の放置プレイか」
いやいやいや、なにが「なるほど」でございましょうか。将棋を放置してどうするのだ。
「おやめください。魔王様が指すのを待たされる側の身にもなってください」
将棋盤の前で正座して生涯を終えるのは御免です。
玉座の間に将棋盤が出しっ放しって……格好悪いぞ。しかも並べ方すらバラバラ。「角」が右――。
「さらには正座するデュラハンも邪魔」
「お黙りください」
正座って……何か悪いことをしてお仕置きされている子供みたいで……やや美味しいぞ。
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