恐怖の連続攻撃
「RPGのラスボスでさえ、連続攻撃してきては駄目なのです」
攻撃のターンはきちんと守らなければいけないのです。
「えー。いいやん。最強の敵なのだから」
最強の敵がラスボス? 最近はラスボスより強り敵が用意されているのを魔王様は御存じないのだろうか。ちょうど私と魔王様のように……クッククック。
「寝言は寝て言うがよい。それでデュラハンは何が言いたいのだ」
いかんいかん。話が脱線しそうになった。
「つまり、どんなに強いラスボスでも連続攻撃してきては駄目なのです」
「ええやん」
あかん。っていうか、「いいやん」とか「ええやん」とか、やめよ。魔王様って何者? ってなるから。
「駄目です。たとえば……魔王様が現れた。魔王様は身構えるより先に攻撃してきた。バシッ。勇者は99ポイントのダメージを受けた。さらに魔王様が攻撃してきた。バシッ。勇者は99ポイントのダメージを受けた。さらに魔王様は、『地獄の業火』を唱えた。バシッ。勇者は99ポイントのダメージを受けた」
「ちょっと待つぞよ」
魔王様は片手をパーにして話を遮る。
「なんですか」
「カンストが99って、今どき低過ぎない。予が弱々しく見えるぞよ」
カンストって……いいのだろうか。いいのだろう。カウンターストップの略だ。
「弱くはありません。数字化すれば恐らくそれくらいです。さらに魔王様の攻撃、魔王様は回復の魔法を唱えた。魔王様の体力が9999ポイント回復した。魔王様の体力が元に戻った……」
「うんざりぞよ! 体力が元に戻るラスボス――! さらには回復魔法が桁違い!」
うんざりでしょ――! ウザいでしょ! 体力が元に戻ってやり直し感――。
「でしょでしょ。連続過ぎて読んでいるだけでもうんざりでしょ。さらには毎回体力が元に戻っては倒そうにも倒せません」
ですから、ちゃんと交代交代で戦わなくてはならないのです。
ゲームで連続攻撃してはいけないのです。
「チェンソーで一撃とか……」
「……」
ラスボスがチェンソーの攻撃で一撃? バラバラになるの? オーマイゴッド?
「コアな人にしか分からないネタはおやめください」
冷や汗が出る、古過ぎて。
「チェンソーマンぞよ」
「嘘おっしゃい」
絶対に違うぞ。
「将棋の連続攻撃が駄目なら、オセロではどうだ」
オセロですと。えーっと……。
「駄目です。ぜんぶ黒か白になって即終了です」
白黒はっきりし過ぎます。頭の中で考えるまでもなかった。
「では野球は!」
――野球! 今が旬の甲子園? 魔王様は難しいところをお突きになる。
「うーん。連続で攻撃する回数にもよるかもしれません」
9アウトで交代とかなら面白いかもしれません。ピッチャーは疲れるでしょうが。
「いや、予が9回攻撃。デュラハンが9回守備」
「――!」
それ、絶対に勝てん――。どんなに頑張っても同点が関の山……。
「一回くらい攻撃のターンをください」
「ダメ」
舌を出すな。汚い舌を。
「……鬼」
まさに魔王様だ。
そんな野球なら、青春を捧げた甲子園球児が涙を飲むぞ。俺たちの青春を返せ――と。
「他にも、プロレスの悪役レスラーですら連続攻撃しないではありませんか」
「なるほど」
そこは納得されるのですね。
「一方的なプロレスなど、プロレスではないぞよ」
「そうですね。観客は面白くありません」
ハラハラドキドキこそプロレスの醍醐味なのです。
「まるでプロレスではなく、格闘技ぞよ」
「う……うん?」
プロレスって……格闘技ではなかったのでしょうか。
「つまり、交代交代で攻撃するからこそ勝敗が分からず楽しいのです。見ている側も興奮するのでございます」
手に汗握るのです。コントローラーが汗でネチャつくのでございます。
「実戦ではありえないのに。プンプン」
そこで怒るな。プンプン言うな。
「そこはゲームだからでしょう。戦う前から勝敗が決まっていればプレイヤーも観客も誰一人として面白くありません」
勝敗の結果を先に聞いてから録画した試合を見るようなものです。
「予は面白いぞよ」
……そうか。魔王様は常勝でございますから。
「だから私が面白くないのですね……」
ガクッ。
百回負け続けて……さらに負けろとおっしゃる魔王様は、もはや鬼。魔王じゃない。
幼稚園児ですら数回に一回くらいは勝たせてくれるだろう。勝つのに飽きて。
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