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他言
どうやらほかの人とは少し違うらしい僕の特徴を知っている人は、僕以外に誰1人いなかった。親にも、姉にも、忙しい母の代わりに僕を育ててくれた祖母にも、僕に懐いて近寄ってくる妹にもそんな僕のことを一度も話したことはない。
まず、僕についての特徴を、どのタイミングで他人に告白したらいいのかがわからない。それに、僕のことをそこまで知りたいと思う人がいるとも思えない。
だから僕は、ひとつひとつの物事を、誰にもバレないように何度も何度もスマホで繰り返し確認する。僕のこの忘れっぽさを知り、助けてくれる人はこれまで1人もいなかったのだが、僕が僕のために作ったスマートフォンのメモは、いつも正確に、そしてすばやく僕を助けてくれるのだ。