奴隷3
いいにおいで目が覚めた、いつもより遅めの朝になってしまった。昨日色々と考えてしまって眠るのが遅くなったせいだと思う。
人を買うということがいまだにどこか納得できないでいる、奴隷というシステムが私にとってとても便利であることが余計にそう感じさせられる。その反対にとてもうれしくも感じている自分を裏切らない仲間、素敵な響きだ決してロップイヤーが目的ではない。
考えていても始まらないので朝食を食べることにした
「ルナ、ご飯食べようよ」
「うむ、今日もいいにおいがしているのだ」
ルナも納得してくれたのでさっそく階下に降りて朝食をお願いした。いつも通り部屋に運んでもらうようお願いして部屋に戻るエミリーさんが運んできてくれた。
「今日もうまいのだ、肉が多い」
ジャンさんたちは、ルナがお肉を好きだと知って多めに入れてくれるようになっていた。
「ルナ良かったねぇお肉そんなに好きなの?」
「好きだな、生肉のほうが好きだがここの飯は特別うまいのだ」
そのまま色々な話をしながらやはり最後にはラークのことが気になってその話になってしまう。
「ねぇ、ルナやっぱり怪我ってちゃんと治らなかったりすることあるのかなぁ?」
「それはない、死んでいなければ助けることはできるだろうただ相応に魔力は使うので、いくらでもという訳にはいかないだろうな。そうでなくてはお前は片っ端から傷を治して回りそうだ」
確かにそうかもしれない、目の前にけが人がいてそれが祈るだけで怪我が治るのだ、もし目の前にいたらやってしまうだろう。
だがそれはいけないことなのだろうか?
「ルナそれって駄目なことかな?怪我してる人が治ったらみんなうれしくないかな。」
「それをするといろいろ世界のバランスが崩れるのだ。それにそんなことをしたら神殿にすぐに目をつけられてしまうぞ」
「あの、神殿って怖いとこなの?」
「考えようによっては怖いところだな、神子や強い神聖魔法が使える者たちを集めて高額で直してやるのだ
」
病院のようなところなのかなでも高額で、てのは気になるところよね、かといって無料でいくらでも直していてはきりがないだろうし、そこまで考えてそれは私も同じであることに気づいた。たとえ祈るだけで傷が治せるとしても怪我人や病人はきりなく現れるだろう、目の前の怪我人は直せても遠くにいる人はどうなるのか?考え始めるときりがなく疑問がわき迷路にはまったようになってしまう、今の私には答えはわからなかった。
色々考えているとノックの音が聞こえたエミリーさんだろう
「おはよう、準備はできてる?」
「はい、大丈夫です」
ルナを肩に乗せて3人で出かけることにした。
「お店の場所はわかるの?」
「はい、聞いてありますこのお店から2本くらい裏道で、獣人奴隷を主に扱っていているお店です」
「あら、ずいぶん奥のお店ねぇ1人で行かせなくてよかったわ、奥に行くほど裏道は危険だから一人の時は行っちゃだめよ」
注意を受けながら奥に向かって歩いていくとだんだんと街並みが古く汚くなっていく、歩いている人たちも少しずつ柄の悪い人が混じってきた、私はそっとエミリーさんに近寄った。
「たぶんこのあたりだと思うんだけど」
少しこの辺りをうろうろしていたら、私を覚えていた店員が私を見つけて声をかけてきてくれたので分かった「いらっしゃいませ。先日の方ですねこの間の奴隷ですか?」
そうですと素直に答えそうになった私をそっと止めてエミリーさんが相手をしてくれる
「こんにちわ、獣人ばかり扱ってる奴隷屋さんと聞いて見に来たのよ、見せてくれるかしら?」
「もちろんかまいませんよ、獣人の奴隷はそろっていますよ。」
「ありがとう、じゃぁお願いね」
どんどん話が進んでいく、でも、ほかの奴隷も見せてもらえるなら見せてもらってもいいかなって思ってついていくことにした。
色々鑑定しながら見せてもらったが、やはり、私とPTを組むならラークがあっているような気がした。
中にはラーク以上にレベルが高く前衛向けの奴隷もいたが値段が高くてとても手が出そうになかった。最後にラークのところに連れていかれて
「いかがです、先日気に入っていた奴隷ですが、ほかの奴隷でも構いませんよ。」
「あらまだ買うとは決めてないわよ、正直このお店はあまりいい店とは言いえないわね。奴隷たちも汚れているし、怪我している奴隷も多いわ、私たちは無理にここで買う必要はないのだからどう思う?」
最後のところだけ私に向かって声をかけてきた、なんと返答すればいいか慌てていると、もっと慌てている店員さんが話しかけてきた
「いえいえ、うちの獣人たちは怪我はありますが病気にもなっていませんし、獣人は強靭なものが多いので多少のケガは大丈夫ですよ。」
「多少のケガと言っても、この奴隷は片目が完全に見えていないみたいだし、片手もほとんど動かないみたいだけど本当に大丈夫なの?」
「いえ、ですからその分お安くしていますし、無理にその奴隷でなくても。」
「そうね、もう一度よく見せてもらうわ」
2人がどんどん話を進めていくので私は聞いているだけになってしまった。その後エミリーさんは紹介される獣人を見てはダメなところを上げていった、スキルがよくない、戦闘向けじゃない、高すぎるなど、どんどん出てくる結局ラークのところまで戻ってきた
「この子も傷が深すぎるのよね」
と、どこか不満そうにエミリーさんがいう
「そうね少しどの程度動けるか試させてもらってもいいかしら?」
「はぁ、かまいませんが怪我はさせないようにお願いします。」
そしてお互いに武器を持って向き合ったがラークは利き手の右手に盾をなんとか持って左手に剣を持ち構えたが、エミリーさんはすぐに武器をおろした
「全然だめね、でもこの子が気に入ってるの」
と私をみてからまた店員に視線を移した
「250万ラナで良ければ買ってもいいわ、どうする?」
相手は驚いていた突然100万も値切られるとはおもわなかったのだろう
「いや、さすがにそれは、」
と、口ごもっている店員さんに見向きもせずエミリーさんは私に話しかけてきた
「ユリナちゃん、いくら気に入ったからと言って250万以上はダメよ、傷がひどすぎるわ」
言い切られてしまった。私は黙ってみているしか出来なかった。店員さんが仕方なさそうに話し始めた
「では、300万でいかがですか?これ以上はこっちも仕入れ値や衣食の世話の代金を加えたら儲けなんかないんですよ」
「そう、じゃぁこれからも衣食を与え続けて赤字を増やすといいわ。ユリナちゃん行きましょう」
と、本当に出口に向かって歩き出してしまった、私は慌ててエミリーさんを追いかけるだけである、すると後ろから店員さんの気が聞こえた
「分かりました、250万でけっこうです!」
少しやけになっているんじゃないだろうかと思うような言い方だった
「ですって、エミリーちゃんどうする?」
店員が私のほうをすがるように見てくるが初めから答えは決まっている、
「はい、私は250万ラナでかまいません、ですがその前にラークと少し話をさせてもらえますか?」
2人から少し離れてラークの檻の前まで行くと私は話しかけた
「初めましてでいいのかな?私はユリナと言います。今は冒険者をしていて前衛になれる冒険者を探しているの、あなたは冒険者に戻る気はありますか?」
「こんな体で冒険者の前衛をするってことは肉の盾になって死ねと言ってるようなものだぜ、だがそれでもこの檻の中で無為に時間を過ごしているくらいなら冒険者として死んだほうがいいと俺は思ってる。」
それが、ラークの答えだった、もちろんすぐに死んでしまうようなことをする気はないが今ここで説明はできないので私は仲間としてのあいさつをすることにした。
「では、これからよろしくお願いします」
そしてエミリーさんのところに戻っていった。
店員さんはほっとしながらその後の購入手続きを行った、まず契約魔法での条件を決めるところから始まる。
エミリーさんと相談しながら私の出した条件は
1、私に対する悪意のある行動は起こせないようにすること
2、私の個人情報を勝手に話せないようにすること
3、私の許可なく、私以外の者に悪意ある行動は起こせないようにすること
4、私に何らかの理由があり衣食住が与えられなくなったときは奴隷から解放すること
以上をラークに説明し契約魔法を使ったルナの時と同じようにじっと相手の目を見るとしばらくしてつながりあった気がしたこれでラークと私はPT仲間になったのである、うれしくて顔がにやけてしまう。
でもこれで終わりではない、引き取りは5日後の貸家の準備ができてから、など細かい決め事をやはりエミリーさん主導で行い、私はついに250万ラナを銀貨2枚と大鉄貨5枚で支払った。それとは別に鉄貨を1枚店員に渡し、ラークの身の回りの世話をしっかりするようお願いした、ついでに服や髪なども何とかしておくよう頼んでおいた。
これで名実ともにラークは私の仲間であり奴隷となったのだ。