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第二話 転校生というタイトルを書こうと思ったんだけど、それはなんか違うなーと思い、違うタイトルを考えている最中に昨日節分で撒いた豆踏んだ

不良から告白された不名誉な日の次の日。

モトムは不良たちから全力で街中を逃げていた。


「待てや、コラ!逃げんのか?」


「現在進行形で逃げている俺に言う言葉じゃねーだろ、それ!」


何故、彼は不良から逃げているのか。

それは単純明快で彼の父親が負け無しの伝説の不良でその息子であるモトムは喧嘩が強いのではないかという噂がどこからか流れているからだ。


しかし、本来いつもの彼ならば、本当は喧嘩が強くはないことを言い、諦めてもらうのだが、今回はそうはいかなかったらしい。

どうも今回の相手はわざわざ七人くらい人数を集めて、彼を倒すためだけに集まったのだ。

そんな相手に実は喧嘩は強くありませんでしたは通用しなかったのだ。


(クッッッソォおおお!!父さん、学生時代に余計なことしやがって!!)


モトムはそんなことを思うも、亡くなってしまっている彼の父親に届くわけもなく、ただ彼はがむしゃらに走り続けるしかなかった。

しかし、がむしゃらと言っても考えなしに走っているわけではない。

後ろから追いかけられる時にバイクや車を使われてしまっては簡単に追いつかれてしまう。

そのためあえてバイクや車が通れないような脇道や小道を見つけたら、そこに入り、あわよくば不良たちを巻くことができれば万々歳なのだ。


「はぁ………………ようやくまけたか?」


モトムは息を切らしながら、路地裏に着いたあたりで背後をチラリと見た。

もう追ってきている様子もなく、飛び交っていた罵声ももう鳴り止んでいた。

ようやく30分強走り続けいた彼の足が休みを取れるようになり、近くにあったボロボロの青色のベンチに座った。

そこでようやく彼の体が緊張状態から解放され、安心からか大きなため息を吐いた。


「本当に何で俺の父親が学生時代に不良だったってこと知ってんだよ。というか、ほんっっっっと、何やってんだよマイファザー。何したらこんな有名人になるんだよ!」


「あ、お前か?あの人の父親ってのは」


モトムは突然声をかけられ、逃走態勢に急に移行した。

その間、0.05秒もなかっただろう。

脊髄反射で本能的に反応したからだ。


「んじゃ、俺は関係ないので、さらば!」


と、モトムは声の主の顔を見もせずに走り去った。

絶対に振り向いてはいけない。

そうしたら捕まると思いながら。


「は?」


置いていかれた声の主は驚きの声を上げたものの追ってくることはなかった。


*********


次の日


「転校生を紹介します。岡田コウセイくんです」


「岡田コウセイです。見ての通り不良やってます。以後よろしく」


モトムのクラスに転校生がやってきた。

金髪に染めた髪をやや逆立てて、バスケ選手のような身長を持ちながらその体つきは良く、顔は何故か爽やかイケメンのような顔つき。

クラスの何人かの女子がイケメンだよ!、と騒ぎ出していて、男子はそれを見て妬む。

しかし、モトムがこのとき抱いていた感情は誰とも違ったのだ。


「あ、そうだ。あと、一言言い忘れていた。このクラスにあの伝説の不良の息子がいるとか何とかを聞いた。誰か知っている奴はいるか?」


岡田コウセイは言った。

その言葉には威圧感があり、それほど大きな声で言ってはいないのに、とても大きく感じさせるものだった。

が、自分と分かっていながらもモトムは反応をしなかった。

自分から言う必要はないな、と思ったからだ。

しかし。


「そいつなら知ってるぜ。あいつだ!」


と、昨日モトムに告白をした不良の一人が彼に指を指しながら言ったのだ。


「おい、お前!ふざけんな!」


思わずモトムは食いかかるが、その反応は認めてしまったことと同じ。

黒板の前にいた岡田コウセイはモトムの机の前までゆっくりと歩いてくる。

高身長からか、歩幅はかなり大きく、いつもモトムが5歩くらいかけてようやく着く机まで3歩で来てしまった。


「お前だとどうにも信じがたいが、昨日見た奴はこのくらい小さかった気がするな」


「ンなわけねーだろ!おい、お前。俺はこんなにチビで筋肉もない人間だぞ!喧嘩強い弱いとかいうレベルじゃねーぞ」


「確かにお前みたいなチビが喧嘩できるとは信じがたいな」


「そうだろう?」


「だが、お前みたいな体型でも格闘技でもやっていれば強い奴は強いぞ」


「格闘技だってやってねーし、生まれてこの方体育以外のスポーツすら一度もやったことがねえよ」


「そうか。まぁ、それでもいい。放課後、体育館裏な?」


「いや、お前話聞かない系男子かよ!今時流行らねぇよ!そんな性格!あと、こんな大勢の前と担任の前で喧嘩の約束とかそんなの破綻するに決まってんだろうが!」


「そうか。なら、後で連絡する。住所教えてくれないか?手紙を郵送する」


「L○NEでもなく、メールでもなく、手紙!?今このご時世で手紙?マジで言ってんのか、お前」


「ああ。本気だが?」


「いや、絶対違う目的があるからだろ!普通にお前、俺の住所を調べて家の前で待ち伏せする気だろ!バレバレなんだよ!」


「バレちまったかー。まぁ、しゃーなし」


「本当に確信犯かよ!怖っ、恐っ。危うく個人情報漏洩しちゃうところだったじゃねぇか!」


「というか、お前この会話長ーよ」


岡田コウセイがこう言うと、モトムはついに黙った。

彼に言われたからというわけではない。

なんとなく自分でもそう思ったからだった。


「それじゃあ、岡田コウセイ君の席はそのままモトムくんの席の隣でどうかな?」


と、モトムの担任の高くて明るい声が聞こえてきた直後、二人は音速を超えるかもしれない速度で答えた。


「大丈夫です!」


「却下です!」


二人のそれぞれの気持ちが言葉として出たのだろう。

だが、運命は残酷でどちらか一つだけの願いしか叶うことが許されない。


「タッチの差でコウセイ君の勝利!」


「よっしゃあ!」


と、担任が言ったのと同時にコウセイは拳を天高く掲げた。

まるで前評判では負けると言われていたボクサーがKOで勝って時のように、サッカーの試合でずっと点が互いに入らずにいたところに後半の最後の最後で決めた時の選手の喜び方のように、コウセイは深く喜んだ。


「今日からよろしくな!」


「ああ……どうにでもなれ」


対照的な感情に抱いていた二人だった。


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