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脱法彼女☆シャブ江さん  作者: 眼精疲労
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終章 君の姿を

 あの夜のゴタゴタでバタバタし、一息ついたのは数日後のことだった。

 詳細は省くが、とりあえず厳重注意だけで終わったのは幸運だったと思う。


 弊社の社屋を破壊したのだが、弊社としては従業員が狂ったという世間の風聞を気にしたのか、弁償し退職することで、そこは不問としてくれたらしい。


 薬物の使用を疑われたときはどきりとしたのだが、俺の使った粉を検査してみたところ。


「……ただの片栗粉にカフェインが入っているだけだ」

「はぁ!? いや、だって、あの変な店で……」

「ああ、あそこはアンタのような馬鹿を騙すための店だよ。酒でも入れて吸ったんだろ? アルコールとカフェインと、プラシーボ効果だろうな」


 とのことだった。


 実に馬鹿らしいが、たぶんそれだけでああなるほどに、俺は追い込まれていたのだと思う。


 あの夜以降、シャブ江の姿は見ていない。声も聞いていない。シャブ江はまるで消えてしまった。


 また会いたいかと問われれば、複雑だが――。

 答えは、イエスである。


 今は無職になり、貯金を切り崩しつつ、日本全国津々浦々を気ままに旅する生活をしている。

 気に入った場所や、親しくなった人がいれば、そこに定住してもいいと思う。


 それに、である。

 もしかしたら、シャブ江に中身も外見も似た人が、いるかもしれない。

 そんな確率は、天文学的に低いだろうけれど、ゼロではないし、否定はしきれない。……希望的観測が過ぎるとは、自分でも思うけれど。


 そんなことを思うということは、つまるところ、そういうことだった。

 俺はまだ、あの夜の狂気を、温もりを、帯びている。


 帯びつつも、生きている。


 旅の途中、何気なく空を見る。

 あの冷え切って温かい、唯一無二の夜。

 あの十二月二十四日は、遠くに過ぎ去っていた。




おしまい

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