表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のためのハッピーエンド  作者: 守月
フラグメント
1/29

終わりの始まり

初投稿です。

よろしくお願いします。


始まりがあれば、終わりがある。

もし、何か新しいことを始めたいのならば、何か一つを終わらせることだ。

……というのを、どこかで聞いたことがある気がする。


「おはようございます、お嬢様。今日はお嬢様のお誕生日ですね」


私専属のメイド――――オルカが、挨拶と共に部屋のカーテンを開けた。

天蓋付きのベッドで身を起こした私は「そうね」とだけ答えた。

オリカはびっくりして振り向き、私をみた。


「お嬢様……。今日は、ずいぶんとお目覚めがよろしいのですね……」


メイドとして、その発言は失言として取られないか、と思いつつ、()()()()()を思い返してため息をつきたくなった。

朝が弱い体質のせいで、寝起きの私は相手の会話がほとんど頭に入っていない。本来は無口なオルカが話すのは、決まって事務的なことだけ。朝だけは、オルカはなんでもない会話を口にする。、()()()がそれを覚えているのは、記憶に残らなくても、夢の一部として頭に入っているからだ。

正直、混乱しているけれど、ここは試してみるのが一番早い。


「ねえ、オルカ。お願いがあるの」

「はい。なんでしょう」


私の意識がはっきりしていると理解した途端、オルカは顔を引き締めてベッドで身を預ける私に近寄った。

そんなに真剣な顔をしているところ、申し訳ないけれど。


「あのね、ちょっと私の頬を、つねって?」

「……はい?」

「いいから」


寝ぼけているのか、といった顔をされたが、仕方ない。

そう思われるのも無理はない。

主人と使用人、埋めようのない身分の差がありながら、どうして朝から主人に頬をつねる日が来るだろう。

それも、主人の誕生日の日に。

いっそ、今この瞬間が永遠に来ないほうが、オルカのためだったかもしれない。

しかし、オルカは真面目だから、恐る恐る私の頬に手を添え、控えめに、ぐに、と頬をつねった。いや、つねったと言うより、気持ち的に強くつまんだ、と言えばいいだろうか。

それでも少しは痛みを感じるし、オルカの手の感触も、冷たさも肌から伝わってくる。


「……もういいわ」

「はい。あの……申し訳ありません」

「いいのよ。私が頼んだから」


気まずい空気が流れる中、私は頭が痛くなる思いがした。

いや、実際に本当に痛んできた。


「オルカ……。私、朝食は部屋で食べるわ」

「え?」

「頭が痛いの」

「大丈夫ですかお嬢様。すぐに、お医者様を……」

「いいの。そこまで酷くないから。ただ、夜のパーティーまでには治すから、それまで眠らせて。お父様にも、お母様にも、私は楽しみで仕方ないから、部屋にいるって伝えておいて。心配させたくないの」

「……かしこまりました。すぐに、朝食はこちらにお持ちします」

「ありがとう」


お礼を言った私に、オルカは何か信じられないものを見たような顔をして「一度ここで失礼いたします」といって部屋を出た。

私はいくつも重ねてある大きな枕のうちの一つを腕に抱きしめて、顔を埋めた。


「……夢じゃ、ない」


15歳の誕生日。

()は、前世の記憶を思い出した。



~あらすじ~


15歳の誕生日を迎えた朝、前世の記憶を思い出した『私』。

実際にプレイをしたことがないものの、転生した世界が、乙女ゲームの世界だと知る。

一度目の人生を終えた『私』が、二度目の人生を始める話。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ