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短編&詩集

お願いだから、消えないで

作者: 倉井 陽流

これは「つばさのない、鳥」続編です。

つばさのない、鳥を先に読んだ方が楽しめるかと思います。

「なあなあ。」


はい、来た。ボス的存在友達。


「どうした?」


友達はキョロキョロ周りを見た。でも周りに人がいないわけがなく。

それにその他の友達がもちろんいる。


「あちゃあ、いたかあっ!」

友達は頭を抱えた。

大体わかるでしょ、友達コレクター。


「やっぱり、やめた。」


「はああああ?なんで?」

意味が分からない。話しかけたのにやめるって。

あなたは5歳児か。


「まあいいや。放課後、屋上に集合っ!」

友達はいらないのに手を天井に手を振り上げ、去っていった。


「ちょ、待ってよおお!愛実!」

その友達の名は愛実まなみ。非常に飽きっぽく、一緒にいて疲れるタイプ。

愛実は最大の15分休みを使い終わり、自分のクラスに戻ってった。

一応、私も同じクラスなんだけど・・・。


安村 拓実に助けられてからもうすぐ一ヵ月。

私、白鳥 こぐりは転生した世界を懸命に生きている。

そして夏休みが刻、一刻と近づき、その夏休みまであと、二日。

最近部活も休みだ。少しだけだが、鎖から解放されたように感じる。


「白鳥、今度は何、読んでんの?」


「えっ、ああ。」


この隣の席の男の子が安村。ちょくちょく私が読んでる本の題名を確認する。

そういえば、どうして確認するのだろうか?

とにかく今、読んでたページにしおりを挟み、また安村に本の表紙を見せる。


「今、読んでるのは『僕たちは』だよ。」


「ううん・・・気になるねえ、その題名。」


「ん?ああ、確かにね。あ、でもこれ面白いよ、お勧めする。」


「ふうん」

安村は顎をなでた。このポーズはなにかを考えてる時の安村の癖。

この題名を覚えてるのだろうか?

私はそんな安村を無視し、気になる次の展開を読み始めた。


さて、愛実の言った放課後になった。私はしょうがないから屋上に行く。

前はすごく好きだったのだが、あの前回のこと・・下手したら自殺してたことがトラウマになって。

って言っても自分がやったことなのにね。


今日の屋上は太陽さんさん、すごく暑い。


「ああ!暑いね。ここ涼しいと思ったのになあ。」

愛実が奥で柵に手をのせてる。あのたくさんの友達はここにはいない。


「愛実!・・・あれ、いないよね他の友達。」

愛実は鼻で笑った。

「ひど。他の友達扱いするんて。まあ、確かにたくさんいるからわかるけどね。」


私はキョロキョロ回りを見渡した。私と愛実以外誰もいない。

こういう日は珍しい。一応、ここは学校の中でも人気の場所なんだけど。あのトラウマの日は含まないが。


「ね、誰もいないでしょ?今日は誰もいないと思ったんだよね。」


はい?


「へ?まあいいや。話って?」


「え、ちょっと待ってよ。もうちょっと話そうよ、ね?」


「なんでよ、学校で話してるじゃん。」

愛実は口を膨らませた。

愛実は嫉みたくなるほど、顔が小さいし・・・、かわいい。だから少し人気がある。

そしてぶりっ子。ちょっとあんまり・・・。


「そうだけどさ!まあいいや、話そ。」

ほら来た。愛実必殺、「まあいいや」。


「あのさあ。将くんがいるでしょ?」


「う、うん・・・。」


ちなみに「将くん」というのは愛実の彼氏、木下将太きしたしょうたのこと。

愛実は恋人に恵まれてるのだ。

なにもかも幸せを。


「それでね、夏祭り一緒に行って、花火見ようって約束したの。」


「そうなんだ。」

なんだ、それだけか。

私は回り右をして屋上から去ろうとした。


「ちょ、待ってよ!」


愛実は私の腕を掴んだ。

「何?」


「まだ、話があるの。」


「そうなの?」

ただの自慢かと思ったんだが。

まあとりあえず去るのはやめた。

「で?何?」


「あのね、将ちゃんがね。拓実くん、つれてくるんだって。」


「なんで?」


将太おかしい。デートなのに友達連れてくるって。


「拓実くん、花火好きなんだって。だからOKした。」


「は?」

ああ、この二人お似合いだ。

どっちもおかしい。

愛実は手を合わせて必死な顔をする。

「だからお願い!一緒に夏祭り来て!」


「は??」


意味が分からない。

「な、なんでよ?なんで私に?」


「いいでしょ?隣の子なんだしさ。ダブルデートみたいにさ。」


「は?私、頭チンプンカンプンなんですけど。それに好きな人、いないし。」


「ね、そこを何とか!拓実くん、邪魔なの!」

それ将太に言ってほしい。


私は断った。しつこく言われても行くつもりはなかった。




んだけど・・・・。



「コンコン」


家で読書をしていると。私の部屋にノック。

「何?おかあー、」


私の言葉と手が止まった。私の部屋の立っていたのはお母さんじゃない。

--愛実だった。

「え?は?何で・・・なんでいるの?ここ私の部屋、家って分かってる?」


愛実はあの時と一緒、口を膨らませた。

「もう、何よ失礼ねえ。ちゃんと分かってるわ。5歳児じゃあるまいし。」


「で、でもなんでここに入れたの?」


「ん?なんか開いてたよ、ここの家。鍵かけてないの?」

マジか。

これ、絶対お母さんだ。ついに鍵かけることまで忘れちゃったのか。あとで文句しよう。


「はああ。しょうがない、どうぞ入って。」


「失礼します。」

愛実は特に部屋のことはなにも言わず、すくっと真ん中の小さな円い机の近くの座った。

愛実はこの部屋に何回も来てるし、見慣れてるのだ。


「じゃ、愛実。お茶持ってきて-、」


くるね、と最後まで言えなかったのは、やっぱりこの人。愛実のせい。

無表情、何も言わないでなぜか私の腕を掴み引きとめる。

怖い・・・。


「こぐり、座って。」


私の部屋なんですけど・・?

すくっと言われた通り座る。


「な、何?」


「これ着て。」


取り出したのは青いグラデーションがかかった浴衣。

・・・・・って!


「つまり夏祭り行けと?」


「その通り!!正解したご褒美に浴衣を差し上げましょう!!」


うわああ、押し付け!


「嫌だよ。私、あの時嫌って言ったでしょ?」


「私だって嫌よ!拓実くんにデート邪魔されるの!」


・・・自分勝手!!

「それだったら将太に嫌だって伝えればいいじゃない!」


愛実はため息をついた。飛び上がっていたのがため息によって静まる。


「でもね・・・・こぐり連れて行くってもう言っちゃったの・・。」


「はああ?」


今度は私が飛び上がる番になってしまった。

「そんな、自分勝手な・・・私、いいって言ってないよ!?」


「でええもお。私のプライベートはどうなんの?」


愛実は言い訳。あと、プライベートなんか知らんし。


「だ・か・ら!ほら、着なさいよ!!」

愛実は乱暴に浴衣を投げつける。

これだから、私はほぼ一か月前屋上から飛び降りたの・・。




と。

いうわけで、五時間後。

愛実に無理やり()()()()連れてこさせられた夏祭り。

夏祭りだから赤い提灯がきらめいてる。もっと違う色にすればいいのに。


「ああ!将く~~~ん!」


「ああ!まなみん!」

まなみん?

と、二人は抱き合った。別の言葉で・・ハグ・・した。

うわあ、カップル・・・。


「将くん、逢いたかった。夏休みい、ずううううううと退屈だった。」


「僕も逢いたかったよ、かわいいまなみんに。」


「やだあ、将くんったらあ♡」


うわあ、バカップル・・・。

あと、私家に戻ろっかな。


「ああ、しっしし!」


帰ろうとした私を広げた手で引き止める、通称まなみん。


「帰んないの!」


「ああ!まなみん。」


愛実が将太の声で手を引っ込めたから、私は前にトテンと転びそうになった。

「本当にこぐり連れてきたんだ。冗談かと思った。」


「冗談なわけないでしょ。で、拓実くんは?」


将太の後ろに安村はひっそりとたたずんでいた。黒い男性用の浴衣を着ていた。

あれ・・・コンタクトした・・?

「拓実くん元気ないね、どうしたの?」


「・・・・・・」

多分さっきのバカップルを見てしまっただからだろう。私も気分が悪い・・・。


「まあいいや。それぞれ別行動ってことで!じゃあね、こぐり頑張ってよ!」

・・・・・は?


「ちょ、待ってよ!別行動?!」


でも将太と愛実はそんな私の言葉を無視し、もうラブラブしてる。

もう、カップルってやつは・・・。


「はああ。行っちゃった。」


「しょうがない、行こう。」


これにはさすがの安村もたたずんでいるのはやめたようで。

「う、うん。」


とりあえず屋台を見ることにした。


「あ。」


「あ?」


安村が急に止まったから驚いてしまった。なんだろう、忘れものでもしたのだろうか。

だったらずっと家にいてもらってもいい。私はそもそも行きたくなかったのだから。


「りんご飴、おごるよ。」


安村が小さな風船のようなバックを探り始めた。


「え?いいよ、りんご飴なんていらないよ。おいしくなさそうだし。」


「いいんだ。」

安村はバックから小さい財布を出すと、その中から百円玉、三つを出し、りんご飴を買ってくれた。

ってそんなのいいのに。


この夏祭りは同時に花火大会もした。

安村が「花火好き」って言ったのはこれがあるから。

なので安村はちょっと早めに芝生の場所確保をした。それでも結構人が集まっていた。

安村と私は場所取りした芝生に腰かけた。


「いいの?こんなとこ来て。安村は。」


「ん?まあ嫌だけど、無理やり。」


「え?安村も?」


意外だ・・。安村が自分の意志で来たのかと思った・・・。

怪しい・・・あのバカップル・・何か裏があるなあ・・。


「白鳥ってさあ・・昔、鳥だったよな。」


「え?なんでいきなり?」


「ふっ、だよな。」


安村が軽く笑う。いきなりでびっくりしたが、なんで聞いたのかその意味を私は知っている。


私は前世ではハトだった、公園の。

公園ではいつも餌をくれ、帽子をかぶっている優しいおじさんがいる。ただ深く被りすぎて顔が見えない。

おじさんの笑顔は数えられるくらいしか見えたことがない。

でも知ってる。そのおじさんは・・生きてる。


安村とおじさんの笑顔は似てる。

だからあの時を思い出してしまう。


「ひゅううう・・・どおおおん!!」


ちょうど花火が上がった。ここからだと、とっても見える。安村の場所取りがうまくいった。

きれいだなあ。きれいな円が空にある。


お願いだから、消えないで。

この花火も、この時も、この横にいる人も、全て。

あのおじさんは前世では日常だったけど、十三年前人間になって帰らぬ時となった。

確かに夢に出てくる時もあった。

けど、夢と現実は違う。だからこの時は特別。


「こぐり。」


「えっ?」


長く沈黙の中にいたもんだから反射的に安村の方を向いた。


「!!」



安村は私に抱きついてた。

これ、バカップルと一緒じゃん・・・。

でも・・・・嫌じゃなかった。


「こぐりさん!」


「は、はいい!!?」


久しぶりに「さん」と呼ばれたのでいろんな意味で驚いてしまった。


「す、好きです!つ、付き合ってください!」


・・・・・へええええええええええ???!!

え、これ告白だよね?え、これがどっかで見てる告白だよね?

頭の整理がつかないうちに私の口は勝手に動いた。



「はい。」

安村は抱きつくのをやめた。驚いたようだ。

でも一番驚いてるの、私なんですけど?!

私、受け入れたよね?え、告白を受け入れたってことだよね?!

私の頭はパニック、パニック!!


でも私は安村のこと、好きだったのかもしれない。

鳥の時から・・。

ただ気が付いてなかっただけ。

私、今度から「拓実」って呼ぼう。あのときだって無名のおじさんだったもの。


謎に見つめあうことになってしまった私と拓実。

もはやりんご飴を食べることも忘れてしまっている。


「ひゅううう・・・どおおおん!!」


また花火が上がった。

この時の花火は前よりも大きな音に聞こえ、

・・・・しずく型の花火が二つ並んでいるように見えた。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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