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賢者の下男は平凡な日常を望む  作者: 高橋薫
第一章 王国の賢者
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04 賢者様アイスクリームを食べる

「ちょっとだけ待っててください。ここを動いちゃダメですよ」

 そう言い残してコンビニへ走る。


 きっとメイドさんが食事の用意をしているだろうから、ここはあれ。

 必殺!! ハーケンタッツ。

 五種類のアイスクリームを買って二人のところへ戻る。

「さぁ、行きましょう」

 家に着く頃には食べ頃になっているだろう。カオルちゃんの驚く顔が早く見たい。

(ムフフフフ……)



「小さいですね」

(言うと思った)

「日本ではこれくらいが標準なんですっ」


「靴は脱いで、持って上がってください」

 カオルちゃんの靴もキキョウさんが持っている。

「家の中はこんど見せますから、とりあえず二階の僕の部屋へどうぞ」


「狭いですね」

(やっぱり言うか)


「では、始めます」

 そう言うとカオルちゃんが念じ始める。

「成功です」

「おおーっ、カオルちゃんすごいね」

 またキキョウさんに睨まれた。

(こわーっ)


 トビラの先はさっきの居間だった。

 メイドさんたちが駆け寄ってくる。

「「お帰りなさいませ」」

「屋敷の中を走るとは何事ですか」

「スプーンを五つ用意してください」

「「はいっ」」

 キキョウさんはとりあえず無視。


「お菓子を買ってきたので、みんなで食べましょう」

 袋を掲げてみせる。


 思った通り、食堂のテーブルにはすでに食器がセットされていた。二組だけ。

(使用人はご主人と同じ席にはつかないか)

「カオルちゃん、一人に一個ずつあるから、みんなで一緒に食べようよ」

「あ、はい、そうですね、許します」

 三人が目を丸くする。何に驚いたのかは不明だけど、気にしないでおこう。


 全員が席についたので、それぞれの前に置いてゆく。

「これはアイスクリームというものです」

 カオルちゃんにはストロベリー。これはぜったいゆずれない。

 キキョウさんにはグリーンティー、アサガオさんにはチョコレート、ユウガオさんにはバナナキャラメル、自分はバニラ。


 蓋を開けて見せてから

「どうぞ、召し上がってください」

 みんなカオルちゃんが食べ始めるのを待っている。


「つめたい」

 一口目、スプーンを口へ運ぶと、大きな目が一層大きくなる。

「どうですか?」

「とてもおいしいです。みなさんも遠慮なく」

(よしっ)

「いや、これは……」

「おいしい、なにこれ」

「こんな食べ物が……」


「せっかくだから、交換してはどうですか。友達同士はそうやって食べますよ」

 みんなが半分くらい食べたのを見てそう言ってみる。

「「はいっ!!」」

 アサガオさんとユウガオさんが交換している。

「こちらもおいしいです!!」

「うんうん!!」

 カオルちゃんを見ると二人をじっと見ている。

(今がチャーンス)

 黙ったまま、まだ手をつけていない自分のバニラをカオルちゃんにそっと差し出す。

「いいのですか?」

「もちろん」

「でしたら、これを……」

「よろこんで!」

(よしっ、作戦通り)

 キキョウさんが睨んでるのは無視。

(キキョウさん、誰も交換してくれなかったね。お疲れ様です。別に、あなたが嫌いなわけではありませんから…そこ大事)


 全員が食べ終わり、名残り惜しそうに空になったカップをみつめている。

 みんなが満足してくれて、僕も嬉しい。

(好感度も上げれたみたいだし、ヨシヨシ)


「お食事はどうされますか」

 さすがはキキョウさん、仕事に忠実だ。

「あっ、はい、いただきます」


 食事はとてもおいしかった。決して豪華ではなかったけれど、心がこもっているのが感じられるやさしい味だった。


 明日は、お母さんが休みだから、こっちへ来るとしたら、まだ寝てる午前中か…・だけど、帰りが問題だな。いきなり家の中に現れたら驚くに決まってるし。いずれ話さなきゃいけないなら、いっそカオルちゃんを紹介して……、でも本当に信用していいものだろうか。お母さんを巻き込むのはちょっと心配だけど、部屋にトビラを開いてしまって今更それもないか。

 そういえば、あっちとこっちって時差はほとんどないみたいだし、言葉が通じることとか、いろいろ不思議な共通点があるな。確かめたいことがいっぱいだ。


「どうかしましたか?」

 食後のお茶を飲みながらボーっと考えていると、カオルちゃんが声をかけてきた。

「うん、明日どうしようかと思って」

「もう来てはもらえないのですか?」

 困ったような顔をしている。

「ううん、逆です。もっとこっちのことを知りたくて……ただ」

「ただ?」

「お母さんに、カオルちゃんを紹介しようと思うんだけど、いいかな?」


「リョウがそうしたいのなら、私はかまいません」


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