撮影会
ドワーフ(仮)はいかめしい顔で俺とエディ少年を睨みつけた。
と思ったら、俺の方を見て目を丸くしている。
また痴女とか言われるのか。
「おお・・・・これは・・・・・素晴らしい・・・・・!」
よろよろと近づきながら震える手を伸ばしてくる。
触られるのもなんかアレなので避ける。ちょっと怖い。
ドワーフ(仮)は俺に向けて伸ばした手のひらを開いたり閉じたりしていたが、我に返ったらしく手を下ろす。
何がしたかったのか?
「・・・・・・ダークエルフ・・・理想の人材・・・・・・」
誰がダークエルフ?エディ少年?はないか・・・俺?エルフって言うほど耳はとがって・・・・・・
触り
とがってるぅ~!!
全然気が付かなかった!
いや待て、自分を鑑定した時ダークエルフなんて出てたかぁ?
もう一度鑑定してみる。種族名が・・・・・・ダークエルフ・・・・になってる。
前の鑑定こんなの無かったよな?
何をしたいんだイケメン・・・・・
まあ、ダークエルフなら高い露出度も納得か?よくわからんけど。
しかしダークエルフならダークエルフと最初から表示しておいてくれれば服装のことを聞かれても民族衣装とか何とかで切り抜けたのに。
られるのか?まあ、いいか。どっちにしても露出度は高くないと術が使えない。
種族に関しては後付けくさいが、そう決まったのならそれでいい。
エディ少年の妹の件もあるしガラス瓶の注文を早くしてしまいたい。
「あー失礼、ガラス職人のガウスさんですか?」
「・・・おお・・・お?おお、そうじゃワシがガウスじゃ」
「ガラスの瓶の注文をしたいのです」
「瓶か・・・・どんな大きさのものじゃ?」
「こんな感じですが」
袋から空の瓶を取り出して渡す。つるっとした試験管のような瓶でコルク(多分)で栓がしてある。
「芸術性のかけらもないの」
「ええまあ、実用品なので」
「こんなつまらんもんが作れるか!」
「えー?お願いしますよう」
「駄目じゃ駄目じゃ、あっち行け」
「できる範囲で何でもしますから~」
「駄目・・・・今何でもするって言ったか?」
「で、できる範囲で・・・・・」
「よーし、なんでもするんじゃなぁ~?」
「できる範囲でー」
ドワーフ(仮)ことガウスさんはこっちの話を聞いているのかいないのか工房の奥に入っていった。
しばらくして戻ってきたガウスさんの手には何着かの服が握られていた。
「それは?」
「これは異世界から来た勇者がデザインした衣装を再現したものじゃ」
見てみろ、と渡されたので一着手に取ってみる。
「メイド服?しかもミニスカ?」
ほかの服も、バニーガール、魔法少女、ぴっちりスーツ、ブレザーとセーラーの学生服。
ああこれ同じ世界から来たやつだわ。しかも日本人だわ。
「で、この服がどうしたんですか?」
「着てくれ」
「は?」
「着て見せてくれ」
聞くところによると最初は同族の(やはりガウス氏はドワーフだった)女性に着せることを考えたのだがドワーフは男女ともにひげがあり服のイメージには合わない。
しかも人族はこんなはしたない服を着てはくれない。(短いスカートや、体の線が出過ぎる服はさすがに破廉恥に過ぎるという事らしい)
当然だろうと思う。
町を歩いて周りを見た限りではこんな服を着る習慣があるとは思えない。
彼らにとっては露出が多すぎるだろう。
まあ、彼らが着てるであろう下着よりも露出が多いと思われる俺が言う事ではないと思うが。
しかし
「なんでこんな服を持っているんですか?」
「勇者の描いたデザイン画を手に入れたんじゃ」
「ふむふむ」
「そうしたら当然再現したくなるじゃろう?」
「そーなの?!」
ガウス氏は俺に服を預けてまた工房の奥に入っていく。
戻ってきたガウス氏は数枚の紙を持っていた。
「ほれ、見てみい」
見るとそれはデザイン画と言うよりイラストで、いろんな服を着ているキャラクターが描かれている。
キャラクターは・・・・・・ダークエルフだった。
なるほど、勇者はダークエルフフェチか。
ぞわり
おおふ、鳥肌立った。
「それを見てもわかるだろうがそのデザイン画はダークエルフが着ることを前提に描かれておる」
いや、そうじゃないがそれを言うと説明が面倒になる。
「で、ダークエルフが目の前におればこれを着てもらうのは当然じゃろう」
え?そうなるの?
「服を着てそれを記録に残させて貰えればお前さんの依頼の瓶何百個でも作ってやるわい」
「むうぅ~」
どっちにしても瓶は必要だ。ここは我慢して服を着るべきだろう。
服を着るだけで依頼を受けてもらえるのだ。
それにちょっぴり服にも興味もあるし。内緒だぞ。
服を受け取って着替えることにする。下着がセットになっているわけではないのでビキニを脱ぐわけではないと思いその場で着替えようとしたのだが、ガウス氏に「お前はわかっていない」と言われ部屋を借りて着替えることにする。
なぜかエディ少年もうなづいていた。
まずはミニスカメイドだ。
正直ミニスカメイドは邪道だと思っている。やはりロングが正しいだろう。
こういう服だと思って着ることにする。
メイド服にニーソックス、絶対領域というやつか。頭につけるアレもつけた(名前知らない)。
鏡がないので確認ができないが大丈夫だろう。
鏡と言えば自分の顔も見たことがない。おかげで耳にも気がつかなかった。
変な顔じゃないといいのだが。
外で待っていたガウス氏とエディ少年の所に行く。
「おおう、おうおう・・・・・お~う」
ガウス氏が壊れた。
「・・・・・・・・」
エディ少年の視線が若干サイズが合わないせいでパンパンの胸元と絶対領域の間を往復する。
大丈夫かな?変な性癖植え付けないかな?
その場でくるりと回って見せる。ふわりとスカートがめくれるのにつられて2人の視線が引き寄せられる。
さっきむき出しなのを見ているのに見てしまう男の本能。とてもわかる。
「次の服に着替えますか?」
「ちょっと待った!!」
ガウス氏に止められる。なんだ?
ガウス氏は工房から小さな木の箱のようなものを持ってきた。前面に金属でできた円筒形の何かがついている。金属の円筒形の部分をいじると先が外れて下からガラス?いやレンズだ!出てきた。
つまりこれはカメラか!
「ガウスさん、それは?」
「カメラという機械じゃ。勇者が考えたもので中の水晶に映像を記録することができるんじゃ」
やっぱりカメラか。しかし水晶に記録ってデジカメみたいだな。
ガウス氏はパシャリと俺を撮影してカメラの背中側を見せてくる。
そこには俺が映っていた。しかもカラーだ。
「おおー」
「すごいじゃろう?ちなみにこのガラスの部品『レンズ』というんじゃがわしが作ったんじゃよ」
その時に勇者に会ったらしい。
「カメラももらったんじゃ」
得意げにカメラを見せてくる。
で、それで俺の撮影をするという事か。
覚悟を決めよう。
俺は精一杯かわいいポーズをとった。
ポーズを変え、衣装を変え、時にポロリしながら俺は頑張った。
日が傾き始めるまでそれは続いた。
ギルドに行ったのはまだ午前中だったので3時間くらいは経ったのだろうか?
ようやくガウス氏は満足したらしくカメラを構えるのを止めた。
「終わりですか」
「うむ、感謝する」
服を脱いでマイクロビキニ姿に戻る。ベストは脱いだまま袋に仕舞った。
「では今度はこちらのお願いを聞いてもらう番ですね」
「うむ、約束通り何個でも作ろうではないか」
うん、苦労した甲斐があったねえ
「まずは200個」
「うむ・・・・200か・・よし」
「そして追加として1000個ほどお願いします」
「おい、追加の方が多いではないか」
「何個でも、と言いましたよ?」
「う、うむう」
「追加分は一度にいただかなくても結構ですよ出来たら出来た分だけその都度で結構です」
「それならまあ、何とか」
「それではよろしくお願いします」
「わかった」
さてさて、瓶の方は何とかなりそうだし次はエディ少年の方だな。
私はメイド服にこだわりはありません