変態が大変
なかなかまったりにならない
変態だ・・・・
10人のマッチョたちは俺たちの周りをぐるりと輪になって囲む。
どう見ても変態にしか見えないが意外に隙が無い。
「何ですかあなたたちは?」
「普通にしゃべった!!」
最初に俺に話しかけてきた男がニヤリと笑って言う。
「我々は町の平和を守るセメダリー団!!悪党どもめ覚悟しろよ!!」
「むしろお前たちも平和を乱してないか!?」
モヒカン兄貴達は納得いかないようだ。そりゃそうだろう。
ふんどし一丁で正義の味方だと言っても説得力がない。
「むむっ!」
ふんどしリーダーが俺たちを見てうなる。
「モヒカンの悪党面に露出狂の娘、いったいどっちが悪なのだ?」
「露出狂言うな!!」
「悪党面だとう!」
「兄貴気にしてるんだぞ!」
「うるせえ!!」
「まあいい、まとめて捕らえるとしよう」
俺たちの周りを時計回りに回り始めるふんどしたち。何をする気だ?
徐々に回転が速くなり、輪の直径が小さくなっていく。もはや輪の外に出るのは難しそうだ。
「マッスル・アバランチ!!」
うわ!中心に向かって倒れこんできた!!
反射的に飛び上がったらふんどしたちを飛び越していた。
それどころか軽く5メ-トルは飛び上がっていた。慌てたので空中でバランスを崩しそうになった。
ふんどしたちから少しだけ離れた位置に何とか着地する。
なにこれ筋力チート?
チートに関してはとりあえず置いておくとして、おかげで助かった。
あのまま食らっていたら筋肉とおいなりさんを素肌に押し付けられてしまうところだった。
恐ろしい。
モヒカンたちは気絶しているようだ。気の毒に。
そしてくるくるとロープをまかれている。なかなかに手際がいい。
「む」
ふんどしリーダーがこちらを見る。
「避けたか露出狂娘」
「この格好は呪術的な意味があってしている。露出狂ではない」
視線を感じると体の奥がきゅんとするだけだ。ちょっとだけな。
「そもそもその恰好こそが露出狂ではないのか?」
「このふんどし一丁の恰好はその昔セメダリー師という武術の達人が、悪党を油断させるために服を脱ぎ、武器を持っておらぬことを見せてその肉体のみで悪党どもを捕えてのけたという故事に則っているのだ。我々も露出狂ではないのだよ」
「うーん」
このまま逃げて、追いかけられても面倒だしなあ。
「私はその3人組に絡まれていただけなので見逃してもらえないでしょうか?」
「衛兵の前でそう証言してもらえないだろうか?」
しょうがないか・・・・
「うーん、わかりました」
「衛兵を呼んできてくれ」
「わかりました」
ふんどしメンバーの一人が走っていく。
しばらく待つとふんどしメンバーが衛兵さんを連れて来た。
衛兵さんはモヒカン兄弟を見ると顔をしかめる。
「またお前たちか」
どうやら常習犯だった様だ。話が早くなりそうだ。
衛兵さんは俺とふんどしリーダーを交互に見ながら言った。
「新しいメンバーか?女とは珍しいな」
何言っちゃってるの衛兵さん!どう見たってこのふんどしたちと俺が同じに・・・・・見えるのか?
あっちは筋肉モリモリの鍛え上げた体にふんどし一丁
こっちは絆創膏よりちょっぴりましなマイクロビキニに毛皮のベスト
うん。・・・・・・うん。
うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・同じだぁぁぁぁぁぁ!!
「いいいいいいやこれはですね、あのですね違うんです!じゅじゅちゅ的な意味がでしゅね」
「ん?仲間じゃないのか?」
と、衛兵さん。
「そういわれてみると同じようだな?同好の士というわけか?」
「違うわあぁ!同好の士ってやっぱりお前たちのは趣味なのかあぁ!!」
「いやいや、ゴホンゴホン、趣味じゃないぞ」
「信用できん・・・・・」
「とりあえずこいつらはもらっていくぞ」
衛兵さんはもう関係ないとばかりにモヒカンたちを連れてこの場を去ろうとする。
いや、勘違いしたまま去らないで。お願いです~
「お嬢さんも取り返しがつかなくなる前に自分を見直すんだぞ?」
「いやちょっと待って、ちょっと衛兵さん」
衛兵さんは去ってしまった。ガックリ
「我々も町の見回りに戻るとしよう。さらばだ娘よ。いっそ本当に入団するか?」
「断る」
ふんどしたちもぞろぞろと去っていった。
後には一人残された俺。・・・・・・ギルド行こう
ぽてぽてとギルドに向かって歩いていく。もう何も起きなくていい。起きるな。
何とか無事にギルドにたどり着く。ここまで長かった。
ギルドの入り口を見ると盾の前に剣と魔法使いの杖が交差している絵が描かれている看板がある。
冒険者ギルド?でいいんだろうか?
考えてみたら冒険者のような人たちに「ギルド」の場所は聞いたが彼らの呼び方が「冒険者」であるかさえ確認していなかった。
まあ、その辺は入ってみればわかるだろうが。
ドアを開けて入ってみると手前はロビーになっていて、奥が窓口になっていた。
ロビーのベンチに座っている冒険者らしき人たちと窓口のお姉さんがこっちを見て驚いている。
ハイハイ地方出身者ですよー、痴女じゃなくて民族衣装ですよー、ハイハイどうもー
「裸だ」
「セメダリー団か?」
こら誰がふんどし団か
文句を言いたいが我慢する。大人だからね。今は12歳だけど。
買い取りと書かれた窓口に向かう。
「冒険者ギルドへようこそ!何か買い取りですか?」
冒険者ギルドでよかったようだ。ハンターギルドとかではなかった。つまり周りの人たちも冒険者というわけだ。
「買取をお願いできますか?」
「はい可能です。ギルド証はお持ちですか?」
「いえありません」
「ギルドメンバー以外の買取は若干価格が下がってしまうのですがよろしいですか?」
うーん、生産メインで行くつもりだから冒険者ギルドでなくてもいいんだけどなあ。
例えば商業ギルドとか。
あるかどうか知らないけどね。
「複数のギルドに加入することはできるんですか?」
「そういう方は結構いらっしゃいます。大丈夫ですよ」
「ではまずギルドに加入することにします」
「あちらの窓口です」
ギルド登録の窓口に行く。
「登録お願いしたいんですが」
「はい。まず確認ですが年齢を確認させていただいてもよろしいですか?」
「12歳です」
「・・・・・生憎ですが冒険者の登録は15歳からになっております」
なんてこったちょっと恥ずかしいぞ。
冒険者たちがくすくす笑う中もう一度買取カウンターに向かう。
「お願いします」
「失礼いたしました。どのようなものを買取いたしますか?」
「これなんですけど」
ポーションを取り出す。今は5本ほどある。全部売ってしまってもいいだろう。
しかしポーションを薬だと思ってもらえるかは分からない。
最悪ここで売るのはあきらめてもいいかもしれない。お金あるし
魔力が動いたのを感じた。鑑定かな?
「え?」
ポーションを見ていたお姉さんの顔色が変わった。
「ちょ、ちょっと待っててください!」
お姉さんは席を立って奥にある扉をノックして中に入る。
んー、厄介ごとの予感。
しばらく待っているとドアが開きそこからクマが出てきた。
よく見たらクマのような人だった。
クマ男は買取窓口のところまできた。
「こいつを持ってきたのはお前か」
「はい」
「こいつをどこで盗んできた?」
「はい?」
またか
またもめ事か
思いついたことを忘れるのでメモ帳を買いました