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始動!合唱部  作者: 兎春ミナ
青い涙
1/2

花吹丘高校出撃!

【春】

《4月》

《【記録者アヤト】》

 春風が駆け巡る季節。今日から俺はここ、花吹丘高校の生徒となる。

 花吹丘高校は去年の12月にできたばかりの新学校。ホントこの学校ができて良かったと思う。この学校は偏差値が低い。あの妹でも入れたくらいだ。

 去年の全国模擬テスト一位だった俺がこの学校を選んだのには理由が3つある。

 1つ目、家からは近い。

 2つ目、先輩がいない。コミュニケーション能力が低い俺にとって先輩がいないということは言葉に表せないほど嬉しいことだ。

 そして3つ目、この高校は生徒を尊重した生徒主義の学校だ。特に生徒会長は最強だ。

生徒会長は、生徒会役員を独断で決めることができる。また、生徒会長を務めると大学への推薦を100%貰うことができる。さらに、部活動を作ることはもちろん、校則を変えることも可能だ。

 しかし、そんな夢の地位に立つにはこの学校に首席合格者として入らなければならない。

パンフレットによると去年できたばかりなので今年は首席合格者は生徒会長を務めることになっている。

つまり、生徒会長は首席合格者だった俺だ!コミショーの俺が... だ。首席合格と分かったのは三日前のことだった。学校から俺宛に手紙が来たのである。その時の俺はコミショーのことを忘れ喜びに満ち溢れていた

しかし、俺は今、人生最大のピンチを迎えようとしている。

 時刻は11時45分。ポツポツと雨が降り始めていた。今日はずっと晴れの予防だったのに...まぁ。たまには外れることもあるか... 。

12時に入学式が終わる予定だったので、そろそろ終わるかなと待っていたら校長から驚きの言葉がぶつけられた。それは生徒会長による来賓ご挨拶及びに今後の意気込み発表をしろとのことだった。

コミショーの俺にとってはまさに地獄。周りは真剣に俺の話に耳を傾けている。逃げ場がない。妹は不安そうな顔でこちらを見ている。

俺は覚悟を決めた... 。




 あの忌々しい入学式から一週間が経とうとしていた。

「暑っちぃー」

俺は思わず公共の地で叫んでしまった。

周りに居た人達は不審な人を見る目でこちらを見ている。俺は恥ずかしくなって、自転車を走らせた。

今日は雨の予報だったが、見事に天気予報が外れ、晴天だ。そういえば入学式の時も外れていたな。

 今は4月の下旬

「なのになぜ暑い!」

また俺は公共の地で叫んでしまった。周りの目が一瞬にして不審な人を見る目に変わる。更にその中には警察に連絡しようとする輩までいる。俺と同じ高校の、セーラー服を着た女の子だ。片手で自転車に乗りながら器用にもう1本の手で携帯を動かしていた。何処かで見たことある顔だった。ナンパの手口ではない。あれは... 。

「おいこら梓!何してる」

「いやぁ~。変な人が道端で発狂してるから警察に連絡しようとしただけだよ?なにか問題でも?」

そう言って妹の梓は笑った。

「問題大有りだろ!?仮にも俺たち兄弟だぜ?梓だって愛しのお兄ちゃんが警察に捕まったら嫌だろ?」

「はぁ?誰が愛しのお兄ちゃんだって?ネットで何か調べる度にティッシュもってトイレに籠る変態なんて私は知らないよ?」

「なんで知ってんだよ!」

「えっ?マジだったの?ウワッ... ないわ... 」

 やってしまった。自爆してしまった。どうする?作戦をたてよう

①正直に話す

②ごまかす

結果俺はごまかすことにした。

「え?ネット?ああ。花粉症の止め方を見てたんだよ!なんかトイレで鼻を噛むと良いらしいんだ」

「そんな話聞いたことないし... そもそも!お兄ちゃん花粉症じゃないでしょ?」

ギクッ。作戦失敗。

「マジ引くわ。可愛い妹にまで嘘つこうとするなんて。死ねクソ童貞!」

そう言い放つと梓は自転車をすごい速度で走らせ先に学校へ行ってしまった。

兄の尊厳が消え失せた瞬間だった。

 学校へ着くとそこには梓と梓の中学時代からの親友の 咲宮雫 が冷たい目で俺を地獄へと迎えてくれた。

俺と梓は双子だ。双子と聞くと仲が良いイメージだが梓と俺は違う。数年前までは仲がよかったのだが、今では合う度に喧嘩をしている犬猿の仲だ。やはり、あの入学式のことを根に持っているのだろうか。

雫がにやけながら引きながら近づいてきて耳元で

「アヤト君。毎日毎日、自慰行為ご苦労様です」

梓。ばらしたな...... 殺意を持った目で梓を睨み付ける。

「ん?どーしたの?変態さん?」

駄目だ。話が通じない。

俺は罵られながらも1年 D 組(自分の教室)へ向かった。よく心が折れなかったなと自分でも絶賛した。しかし、悪夢はここで終わりではない。神が俺を呪っているのか、俺は梓と雫と同じクラスだ。教室へ入ると早速、梓は大声で

「雨宮綾斗は毎日毎日、自慰行為を行っています。気持ち悪いと思う人は挙手」と叫んだ。

終わった。俺の学校生活。イヤ、人生... 昨日までは俺は変な生徒会長として注目を集めてた。それですら心が折れそうだったのに... 今は昨日までとはまた違う注目を集めている。梓の言葉につられて皆が手をあげる。その中には俺の親友の 桐谷 赤葉。俺の後ろに座っている金髪青眼の男子。クォーターらしい。ちなみにモテる。全世界のモテない男の宿敵だ!

そして、赤葉の幼馴染で家がお隣さんの茶髪で可愛い女の子。

夜桜 玲奈までもが挙手していた。

「おい!アカハ!裏切ったな!」

「アヤト... お前も立派な高校生だ。だから分かる。だが、やるなら見られないようにしろよ... 」

すると玲奈がガタッと椅子から立ち上がり

「アカハもやってるの?」

「アヤトじゃないんだから、俺にはまだ早いかな?」

赤葉.. 殺す!俺が殺意を持った目で赤葉を睨み付けると赤葉は困ったように首をクイッと傾げた。やはり、息の根を止めた方が言いみたいだ。しかし、赤葉の息を止める前に梓と雫をどうかしなければ。

イヤ。玲奈も今や敵だ!アイツTwitterに拡散しやがった。余談だが玲奈のTwitterのフォロワーは10000を軽く凌駕している。フォロワー3人の俺とは大違いだ。

しかし、結局何も出来ないまま学校は終了した。俺の華やかに送るはずだった学校生活は地獄へと一変した。すれ違う人皆が指を指して笑ってくる。ン?軽くいじめじゃないか?コレ... 。

 そんなこと考えながら帰宅しようとしていたら玲奈と赤葉が俺を引き止めた。

「おいおい。待てよ、アヤト」

「何のようだ。裏切り者が!」

「いやぁ~あれはノリだって。ノリ!」

「うるせぇ。裏切り者が!」

「ねぇ。そんなことより部活動決めたぁ~?」と玲奈。

「俺たち今から、茶道部に行くんだけど一緒にどうだ?どうせ家帰ってもエロゲーしてるだけだろ?」

─やらねーよ!

チッ。リア充が... 本人たちに聞いた話だが、実は付き合っていないらしい。つまり単なる嫌みだ。ハイ... 。

「しかし、何で茶道部何だ?お前たち中学校では運動部じゃなかったか?」

「「お菓子が食べられるから!」」

ハモるな!クソリア充どもが!違うらしいけどこう言わないとやっていけない。

「動機不純過ぎないか?」

「大丈夫大丈夫!てきとーにそれらしいこと言っとけばバレないって」

玲奈はニコニコしながら言った。

「まぁ。見学だけだしな!まだ入るとは決めてないし!」

赤葉は髪を弄りながら言った。

俺は"サイテーだなっ"と思いながらも仕方なく茶道部へ行った。

 1時間後

足をガクガクさせながら俺たちは出てきた。立っているのもやっとだ。まさか正座がこんなにキツイとは...。

玲奈に関しては立つことも出来ず廊下に倒れこんでいる。さっきの元気は何処へ消えた?赤葉は余裕の表情だった。さすが元サッカー部。なんかムカつく。

「和菓子が1個しか出ないなんて聞いてない!しかも不味かったし...... 」と玲奈。

「だから俺は反対したんだよ」と赤葉が続いた。

イヤイヤ。お前らノリノリだったじゃねーか。

「部活どうしよ~」

玲奈が頭を抱え込みながら嘆く。

「運動部は俺あんまり興味無いんだよな」

赤葉が髪を整えながらほざく。

おい!赤葉!お前は去年までサッカー部だっただろうが!運動神経抜群のくせしてなに言ってやがると本心思ったが、口には出さずに代わりに「他に面白そうな部活あったっけ?」と聞いた。

赤葉は部活動の書いてある紙を取りだした。

"新学校なのに何故そんなものが?"と思ったがここは何も言わなくてもいいなと思い口には出さなかった。

「吹奏楽部とボードゲーム部、園芸部.合唱部..写真部、パソコン部、へぇ。面白そうだな」

「え~。私吹奏楽行きた~い」

一人で行ってろ。クソが...

赤葉は「え~。写真部行ってみたかったけどけど吹奏楽も中々良いかもな」と、ほざき始めた。

「じゃあ、決定ね!明日皆で行こーよ!しずちゃんとあずちゃんも誘って5人で!」

「ハイハイ行ってらっしゃい。ン?5人?梓と雫、赤葉、玲奈、あと誰だ?」

すると赤葉が嘲笑して「アヤトに決まってんじゃん!バカなの?」と言い放った。

コレでも俺、首席合格者なんですけど...生徒会長なんですけど... 生徒会長の権限で退学させてやろうかと思ったけどやめておこう。 「じゃあまた明日ね~!」

「じゃあな~。アヤト。そういえば、レナ。俺の母さんが、こんど飯食べにいらっしゃいって言ってたぞ?... 」

「わかった~。お母さんにも伝えとく~」

などの会話をして二人は仲良く帰っていった。俺は一人置いていかれた。ボッチになってしまった俺は後からやって来た梓と雫と共に帰った。




 翌日。今日もまた天気予報が大外れ、大雨の予報だったのに何だこの雲1つ無い綺麗な青空は。こんなに空は青かったか?と思わせるような晴天だった。よし!コレからは天気予報を信じないことにしよう。にしても暑いな。"今の時期からこんなに暑かったら夏はどーすんだと"さえ思う。コレも地球温暖化の影響か?ヤバイな。この調子で温度が毎年上がっていくと二十年後には人類滅亡するんじゃないか?少なくとも俺は死ぬだろう... 今年の夏は熱中症が多いだろうな。そんなことを思いながら自転車を走らせていると学校が見えてきた。ていうか、そもそも俺の家と学校との距離は近い。歩いて10分もかからないであろう。

 何故そんな近いのにわざわざ自転車で通っているかというと、それは俺の体力が圧倒的に無いからである。少ないではない。無いのである。俺は自分で言うのも何だが頭には自信がある。去年の全国模擬テストでもダントツの一位だった。しかし、そんな俺は運動が大の苦手だ。たぶん世の中頭が良い人間は運動能力が低く、頭が悪い人間は運動能力が高い。そういう風に出来ているのだろう。現に俺と梓がその例だ。梓は運動が赤葉の2倍出来る代わりに頭が悪い。言っちゃ悪いけど小学生レベルだ。いまだに九九が言えない。この例からきっとこの世の中はバランスがとれるように作られているのだろう。因みに梓にこの仮説を言ったら「誰が小学生レベルだ!」と言われ殴られた。なつかしい... 言っておくが俺はMじゃない。赤葉に話したら「お前はMだろ?ムッツリスケベのM!」と言われたので左ナックルでぶん殴っておいた記憶がある。

と。まぁ、コレで俺が自転車通学している意味がわかったであろう。だから俺は自画自賛をしている。昨日茶道部を出た後廊下に倒れ込まなかったことを... 。こんなことを思っている間に俺は学校へ着いた。教室へ入ると辺りを見渡した。あれ?梓の姿がない。そう思っているとガラガラッと教室のドアが勢いよく開き、梓のグーパンチが俺の顔面へ直撃した。

「何で起こしてくれなかったの!!!」

「知るかぁー!」

すると赤葉が「朝から夫婦喧嘩は止めようぜ?」

「兄弟ですけど」

梓が躊躇なく言い放つ。

辺りからは「梓さんが可哀想!」と赤葉に向かって誹謗中傷が飛び交う。

「ごめんなさい」

赤葉は光の早さで謝った。赤葉にはプライドはないのか...

「イヤ、待て。俺は?俺も可哀想だろ!?」

俺が同意を求めようとすると

「「「黙れ変態!」」」

...... 即答。

こういう時の団結力って怖い...

軽く精神的なダメージを受けた俺に赤葉は慰めてくれた。

「仕方ないって。アヤト。そう落ち込むなよ。俺はやってないけど高校生にもなればやっている人の方が多いはずだって」

「イヤ、その話じゃねぇよ!何で俺が犠牲者なのに危害者扱いされなきゃならないんだよ」

「まぁ、まぁ。考えてみろよ。アズサちゃんは美少女、お前はなんだ?変態だろ?そんなもんさ」

「イヤイヤいや。あんなに口が悪いバカのどこが美少女だよ!?」

「えっ?アヤト知らないの?アズサちゃんって結構男子から人気あるんだよ?話しかけやすいし~、顔も良いし~、運動も出来る。頭はアレだけど、それ以外ほとんどperfectじゃん」

「マジで?あの暴力女がモテる?始めて知ったぜ。ってアカハ!お前、俺に喧嘩売ってんのか?誰が変態だコノヤロー!」

「イヤイヤ。変態でしょ~!てか、気づくの遅くない?」

「もうやめといてあげたら?」

クラス委員長の 琴吹 小百合が止めに入いる。

「ここで止めたら男が廃るでしょ?」

「元から廃ってんだろ!」

「アヤトひどーい」

泣き真似をする赤葉。ホントに泣かせてやろうか...... 。

「どーでも良いから黙れよ」

酷く低いトーンで小百合が言った。

「「ハイ」」

何だこの威圧感は...... まるでラスボスと戦っているようだ。

強い。戦闘力は10000000000だと!?と冗談を心の中でこぼす。

周囲を見ると、遠くで小百合に怯える赤葉を見て玲奈が笑っている。

赤葉は玲奈の視線に気づくと恥ずかしそうに顔を朱色に染めた。何で赤くなるんだ!お前ら、ホントに付き合ってないのか!?



 放課後、約束通り俺たちは吹奏楽部を見学することにした。ところが誰も吹奏楽部の使う第二音楽室の場所を知らなかった。それにしても言い出しっぺは、知ってなきゃ駄目だろ!みんなで30分探してようやく見つけた。そして、第二音楽室のドアを開けた。



キツイ。キツすぎる。完全に侮っていた。まさか、吹奏楽部で筋トレするはめになるなんて思わなかった。五百メートル歩くだけで足が動かなくなる俺にとっては地獄。イヤ、それ以上かもしれない。余談だが地獄のそれ以上って何だ?

赤葉と梓は笑顔で俺と鈴華を嘲笑った。雫は俺と玲奈みたいに廊下に這いつくばっていないが流石にキツかったみたいで肩を動かしながらゼイゼイと呼吸を整えている。

「もう立てないのかよ。」

赤葉が嘲笑うと

「悪いかよ!」

赤葉の顔面に玲奈の渾身の一撃が決まった。赤葉は一発KO。勝者レナ!

「御愁傷様」

雫はしみじみと言った。

「で、結局どの部に入るんだ?」

俺が聞くと梓は無邪気な笑顔で「私考えたんだけど」と言葉を続けた。

「何を?」

雫が梓に問い掛ける。

「確か、この高校って生徒会長が権限を持ってるんだよね?だから私たちで部活を作ってお兄ちゃんが申請すれば良いんじゃない?」

無駄に賢くなったな... 九九は出来ないくせに

「その手があったか」

赤葉は倒れながら親指を挙げた。イヤ、無理するなよ。

「ところでなに部を作るの?」

玲奈が聞く。真っ当な質問だと思う。

「そうだぞ?それを決めなきゃ駄目だろ!」俺も追い討ちを掛けるように玲奈に続く。すると梓は何故か自慢げに鼻をならした。

「実は考えてあるんだ~!」

「何々~?」

雫が聞く。

「演劇部!」

「「は?」」

赤葉と声が被った。なんか嫌だ!しかし、確かに梓が言うとおりこの学校には演劇部がなかった。

「おいおい待てよ。俺演劇なんてやったことねぇぞ?」

赤葉が必死に抗議するが梓は知らん顔。このときばかりは赤葉に同情した。

「私もやったことないよ?」

玲奈が苦笑いしながら梓に告げる。

「大丈夫だって。私もやったことないから」

何を根拠にしてるのか梓はピースまで作って笑っている。

「イヤイヤ、ちょっ... 」

反論しようとした赤葉の口を雫が押さえた。

雫は首を振りながら「あずちゃんは頑固だから行っても無駄だよ」と耳打ちした。さすが。よく分かってらっしゃる。

赤葉はため息をついてこっちを見てきた。その瞳には絶望と希望が微かに見える。俺は思わず目をそらした。

「さぁ。後は頼んだよ!お兄ちゃん!!!今すぐ申請してきてね!」

ビシッとこちらに指を指すと梓はそのまま自転車に乗り、家へと帰っていった。

「おい。どーすんだよ?」

「あずちゃんは頑固だからね~」

「私、手芸部入ろうと思ってたのに... 」

 皆々が愚痴をこぼす。梓の親友の雫でさえ苦笑いしている。"ちょっと待て。一番絶望的なのは俺だ!変態疑惑が梓のせいで広められた今、俺にそんな権限があるのか!?"と思ったが、校長にダメもとで申請したところ、顧問の先生と部員が五人以上いればOKらしい。緩すぎだろ...

それを俺の帰りを校門で待っていた皆に報告すると「お前を信じていたのに」と、赤葉は俺の肩を叩き帰っていった。

玲奈と雫も

「演劇部か... 」「手芸部行きたかった... 」と呟きながら俺を置いて帰っていく。

知るか!心の声を押さえて俺は「ゴメンな」とだけ言った。何故俺が謝らなければならないのかわからなかったが... なんかイライラするぞ。そのうちストレスで死ぬんじゃないか?

 とりあえず俺も帰ることにした。家に着くと梓が凄い勢いで階段から降りてきて目を輝かせながら「どーだった?」と聞いてきた。

「う~ん。とりあえず顧問見つければOKぽいよ!」

「顧問か....」

「梓。先生で誰か演劇やったことある人いないのか?」

だめ押しで聞いてみた。

「いないと思うけど... あっ。塚本先生!!!」

「塚本?」

知らない名前が出てきたのでビックリした。

「うん。塚本夏先生... 確か、演劇団に所属していたって!」

「何処の演劇団だ?」

俺が質問すると、梓は某有名演劇団の名前を出してきた。

「嘘だろ!?マジで!?」

「私が嘘つくはずないじゃん。」

「超すげぇ人じゃん!何でそんな人知ってるの?明日紹介してくれよ!俺ら初心者ばかりの演劇部に超心強いじゃん。」

なんかテンション上がりすぎて俺が俺じゃないみたいだ。

「えっ?担任だけど... 」

梓の呟きは聞かなかったことにしよう。




 次の日。俺は朝一番に学校へ来て職員室へ行った。

「失礼しましゅ。1年D組にょ雨寺綾斗ですしゅう。え~と... 」

職員室へ入ってすぐ俺は後悔した。忘れていた。俺はコミショーだ。ついでに先生の名前なんだっけ?思い出せ。確か...

「はしもと、先生いまふか?」

ヤバイ。噛みまくる。恥ずかしい。穴があったら入りたい。何故昨日は平気だったんだ?きっとあれだ。俺が気づかなかっただけだ...。 そういえば何度も聞き直してきたもんな。あの校長..。

すると中から赤髪の男の先生が出てきた。どうやら笑いを堪えているようだ。まだ二十何歳であろう。若い先生だった。

「え~とねーw 。この高校にはw ... はしもとはいないよwww 。多分... 塚本先生じゃないかなwwwww ?」

「あっ。そうです。そうそう。塚本夏先生いますか?」

「今度は噛まなかったんだねwww 」

俺はムッとして

「俺にだって噛まないことぐらいあります!」

「そうだねwww ゴメンゴメン。笑いが止まらないwwwww ハァハァ。笑い死ぬ~wwwww 」

腹を抱えて笑いこけた赤髪の先生を睨み付けたあと「塚本先生はどこにいるんですか?」と聞いた。

「え?酷くない?www 僕が塚本だよ?wwwww 塚本なつ!www 担任の名前くらい覚えようね?"アヤト君"wwwww 」

「なっ!?えっ!?あんたが担任?塚本先生?嘘だろ!?」

「ホントだよ?」

ようやく笑いが止まったようだ。

「で、何のよう?生徒会長さん?」

なんか態度でかくなったな。この人。さっきまで笑い死にそうだったくせに。

「先生に演劇部の顧問をやって欲しくてお願いしに来ました」

「いくつか質問があるが、いいか?」続けて「何で俺なんだ?」と聞いてきた。

「先生。昔、演劇をやっていたんですよね?」

「ン?ああ」

「俺ら、演劇部作ろうと思うんですけど誰もやったことがないんです!」

「嘘だろ!?よくそんなんで作ろうと思ったねw 」

「だから先生に顧問をお願いしに来ました」

「誰もやったことないとか.... w 」

「それで、返事を聞かせてほしいんですけど... 」

「... OK」

「そうですか, やっぱり無理... ファッ?OK!??何で?」

俺は驚きすぎてぶっ倒れた。フツーに断られると思ってた。

「"ファッ?"ってwww 何でって、そりゃ. 暇だから?w 」

「何故に疑問文!?」

「ってのはジョーダンで、やっても良いと思った理由は面白そうだからかなw特に君がw あっ。けど、俺、スパルタだけど大丈夫だよね?」

「え?あっ?ハイ。たぶん.... それでは失礼します! 」

フゥー。緊張した。てか、OKなのかよ...スパルタなのかよ... 。

この事を皆に話すと赤葉からは「この裏切り者!」と批判された。てか、先に裏切ったのお前じゃん!

雫は「やっぱそうなるか... 」とぼやいている。玲奈は一応手芸部を見学してきたが針で指を刺してしまったようで「手芸部以外ならどこでも良い」と言っている。

梓はガッツポーズで「お兄ちゃんはやるときにはやる男だって信じてたよ」と言われた。兄の尊厳も少しは回復したはずだ。

 演劇部の活動は来週から。... ン?来週?来週は5月1日。ゴールデンウィーク真っ盛りじゃねぇか!?ゴールデンウィークが無くなるだと!?

俺はその場で崩れ落ちた。

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