表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/38

[09] 異世界召喚

 どれくらいの時間が経っただろうか。


 魔法陣に吸い込まれ、光の洪水に身を晒された。

 上下すらわからない感覚の中を漂い続けた。

 それが一瞬だったのか、永遠に近い時間だったのか。よく思い出せない。


 目を開いたら、巨大な宮殿にいた。


 驚くほど高い天井に、緻密な意匠をあしらった支柱。

 壁には見たこともない図柄の長旗がかけられており、ふわふわと不思議な光る球体が室内を照らしている。


 そして、瞬きを繰り返す俺の前には、嬉しそうな笑みを浮かべる少女が立っていた。


「――ようこそ、ルーベリシア王国へ!」


 向日葵のような明るい笑みを浮かべている、金髪の少女。

 見たこともない、修道服のような格好をしていた。

 コスプレか? いや、それにしては、妙に堂に入っている。

 外国人っぽいが、日本語は通じるのか――って、向こうの言葉も日本語だったな。


「……誰だ、お前?」

「わたくしはリリミィ=アーク=ルーベリシアと申します。ずっと、あなたを探していたのです」


 両手を胸の前で組みながら、リリミィと名乗った少女がそんなことを言う。


「あらゆる次元、あらゆる世界を探していた中で、あなたが最も強く反応しました。わたくしの形成した魔法陣が、あそこまで強烈に反応したのは、あなたが初めてです」

「魔法陣……? もしかして、あの花火のことか?」


 確かに、あれは魔法陣っぽかった。

 花火でこしらえるには、ちょっと精巧過ぎだ。

 あれか、プロジェクションマッピングとかってヤツか?

 でもあれって、映す先のものがないとダメなんじゃなかったっけ?


「あれは、強力な魔力の器を持った者にしか、見ることすら叶わないものです」


 ……まりょく?

 まりょくって、魔力か?

 この子、大丈夫だろうか。もしかして、コスプレをした中二病の子なんだろうか。可愛いのになんて残念なんだ。


 そんなこちらの考えなど露知らず、といった風体で、リリミィは歩み寄ってきた。


「ベルフェリズム・サークル――鳳凰定理と呼ばれる、古くから伝わる勇者様を探すための魔法。これまでも魔王が復活する度に、我々は勇者様を召喚しておりました」

「……勇者?」

「はい」

「誰が?」

「あなたが」

「何で?」

「魔法陣があなたを選んだからです」


 意味がわからない。

 そういうプレイなんだろうか。それにしては、リリミィの顔が妙に真剣なのが気にかかる。

 っつーか、結局、ここはどこなんだよ?


「今、この世界は三百年ぶりに復活した魔王により、滅亡の危機に瀕しています。五つある大陸のうち、既に三つが魔王軍に占拠されています。我が王国に魔の手が伸びるのは時間の問題です」


 俺が知る限り、大陸は七つあるはずだ。

 ここがユーラシア大陸の東にある島国じゃないってことが、理屈じゃなく感覚的に、理解できてくる。

 リリミィはいよいよこちらの胸元にすがりついてくると、潤んだ瞳で俺を見上げてきた。


「お願いします、勇者様! どうか、どうかこの世界を救ってください!」

「ざけんな。イヤだ」


 以上。話は終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そりゃそうだ、花火を見ていたとゆうことは、夜だね。 大事な妹2人を夜に置き去りにしたんだから。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ