1話 運命の出会いを果たす
一話 ああ、きっとこれこそが運命の出会い
「もうすぐ小学三年生になるんのにもう、早く起きて。休みだからってずっと寝てるのは、許さないわよ!」
母が、焦った様な声で起こしに来た。
別に遅刻しそうになるのはいつものことだが今日は春休み学校はない。
ならせっかくの休み、朝から起きてなくてもいいだろうに。
「友達が迎えに来てる、サッカーする約束してたんじゃないの?」
そうだ、今日から冬休みで朝から友達と一緒遊ぼうと約束してたんだ、母の焦ったような声にも納得した、人を待たせて呑気に寝ている姿見たらそうなるな。
「友達が来てるなら、もっと早く起こしてよ。サッカーする時間短くなるじゃん」
俺はその言葉を聞いた瞬間さっと起きてそう言った。
すると母が呆れたような目で俺を見ていた、そしてため息をついてから何か眉間に皺を寄せていた。
怒られると思った、怒っている時は大抵ため息をついて眉間に皺を寄せていたからだ。それに気付いた俺は、これ以上母の機嫌を損ねない為静かに着替えの服を持って部屋から逃げ出した。そして手早く着替えて、机の上にあったパンを掴んだ食べながら俺は玄関に向かって走り出した。
「ごめん、寝坊した」
玄関では友人の猫川葵がお菓子を食べながら機嫌良さげに待っていた。
「学校ならともかくサッカーしようと約束していた休みの日に寝坊するのは珍しいね。今日は怒られずにすんだ?」
どうやら怒ってはいないどころか、こちらの心配までしてくれているようだ。今日はいつもにも増してニコニコしている。
「ああ、怒られる前兆に気付いてすぐにこっちにきたからな」
そう言っているうちに母も笑顔で弁当を持って玄関にやって来た、どうやら友達の前では怒るほど怒ってはいないようだ。
「おばさん、お菓子おいしかったです。ありがとうございます」
「いいのよ、こちらこそ約束していたのに待たせてごめんなさいね」
どうやら葵が機嫌良さげに俺の心配までしていたのは、お菓子おかげらしい。ありがとーお母さん。
「じゃあ、行こっか。お邪魔しました」
「そうだな葵、いってきます」
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夕方 5時のチャイムがなり俺たちは公園を出て帰り始めた。
「葵はやっぱりサッカーうまいな!くっそー明日絶対負けないからな!」
俺は葵との最後の勝負を思い出していた。葵は俺の周りの友達の中で飛び抜けてサッカーがうまかったが、素直に負けを認めたくなくていつもこう言う言い方ばかりしていた。
「僕は兄ちゃんに教えてもらってるしね。そう簡単には負けられないよ」
葵は得意げに笑いながら俺の目を見てそう言った。こいつは勝負の時でもにこにこしているがこいつは結構負けず嫌いである。
「そういえば、葵の兄ちゃん噂の神社にお願いしたんだよな」
今年の2月頃願神社の噂が俺達のクラスを中心に流行った。
その内容は一度だけ願いを叶えてくれるというもので葵が兄から聞いたことをクラスで話したのが広まった話だ。
葵は自分の兄が神社に彼女ほしいと願ったことを俺に教えてくれていた。
「うんそうなんだよね、しかも叶っちゃったみたいなんだ。僕兄ちゃんが女の子と一緒に歩いていたの見ちゃったし」
葵は悩んでいるような顔をした。そんなことしても彼女なんてできっこないと以前彼も言っていたので驚きと信じきれない思いが混ざった複雑な気持ちなのだろう。
「もし願いが叶うなら葵は、何をお願いする」
俺は雰囲気を変える為にそう質問した。
「えっ、うーんそうだな今別に彼女が欲しい訳でもないしね、家をお菓子の家に変えてもらいたいな」
サッカー好きだしそれ関係かと思っていたので案外メルヘンなお願いだったことに驚いた。
俺が驚いたのを見て葵は恥ずかしがって顔を赤くし下を向いた
「はーお菓子の家か良いなそれ夢があってもしお願いして叶ったら家に招待してや」
そうすると葵は俺の顔を見て笑顔でうなずいた。
「じゃあ今度一緒に行こうよお願いしにいこうよ、あ、僕こっちだからバイバイ。また明日」
葵は分かれ道を後ろ歩きでこちらを向きながらそう言った。
「うんじゃあね、俺も何お願いするか考えておく」
俺は家に帰り、母に言われ風呂に入っているなかお願い事を考えていた。
「空飛ぶランドセルってゆうのは、面白いんじゃないか、これがあれば遅刻しそうになっても間に合いそうだな」
適当に色々な願いを考えてはみたがお菓子の家ほどすごいものは思いつかず風呂を上がった。
テレビを見ているとチャイムがなって母が玄関へ向かったが戻って来てその手にはきれいな箱を持っていた、宅配にしてはきれいな箱だと思っていると
「新しくなった家の方のお隣さんがお引っ越しの挨拶に来てくるた、ヒナタも来なさい。引っ越しそばももらってんだしヒナタもお礼言って」
「えー、やだよ。めんどくさい」
「あんたと歳の近い子がいたのよ、これから近所で暮らすんだし挨拶しときなさい」
これ以上ごねたら怒られるのが分かっていたのでふてくされながら玄関に向かった。 そして俺は運命の出会い果たすんだ
「はじめまして、わたし 千条小春といいます。4月からは小学四年生になります、この町に来て短いので迷惑かけることもあるかもしれませんがよろしくお願いいたします」
「初めまして古河日向です。僕は4月で三年生になります。僕にできることがあれば言ってください僕この町詳しいので案内できますよ」
小春さんの眩しく輝く笑顔、桜のように淡く美しい色の長い髪そして朝に聴く小鳥のさえずりのように爽やか音色を持つ声、正直俺はこのあたりの記憶が曖昧だ。しかしそれも仕方がないだろうあれほどの運命、いや、奇跡の出会いを果たしたのだから。
ピピピ……
「小春さん!」
聞き飽きた響く目覚まし時計のアラーム音。俺は寝惚けて小春さんを呼びながら伸ばした手が時計を飛ばし、アラームが止まった。
「そうか夢か」
懐かしい小春さんと初めて会った日の夢だと気づくショックを受けるが、高校と中学と別々の学校に通うことになりなかなか会えないので夢でも会えて良かったと考え方をする。
「しかも初めて会った日、なんか縁起が良い気がする」
初めて会った日から六年以上たった。俺は今年で中学三年生だ。
親友の葵や中学で出会った恋愛マスターのアドバイスを基に日々男として成長していると実感する。しかし未だに関係の進展は感じられない。今年こそ絶対進展するぜ!