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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
七章 名も無き幽霊
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番外編 それぞれの

ユーザーネームを「うさぎさん」から【白乃兎】へ変更いたしました。詳細は活動報告で。


番外編というより、今回は短編集みたいなノリになっております。

 ♢リオの場合




 カナの家、ちょうど時間帯はお昼時だろうか、台所からは鼻歌と、調理をしている音が聞こえる。


「ふんふんふん〜♪」


 機嫌よくリオは台所で料理を作っている。

 格好はもちろんエプロン装備。

 今日はカナがネラさんのところに出て行っているので不在。

 俺は料理など出来ないので、リオに任せているのだ。

 リオは、最近はカナに料理を教えてもらっていたため、俺に食べてもらいたいとの事で、外食ではなく、家で食べることになった。


 グゥーー。


 昼食を意識すると、腹の虫が鳴く。


「あははっ、お兄ちゃんお腹空いてるの?」

「ああ、リオの作ってる料理の匂いがいい匂いだからな」

「もう直ぐできるから待っててねー」


 幼女にご飯を作ってもらう俺って……。

 ダメ人間街道まっしぐらな気がする。


「よーし、ロキアお兄ちゃん!出来たよ!」


 お盆で、子供が作ったとは思えないほどに綺麗に盛り付けられた料理が運ばれてきた。


 え、マジで!?

 なんでこんなに上手いの!?


「え、えと、リオが作ったんだよな?」

「他に誰が作るの?」

「そ、そうだな。…いつもわるいねぇ」

「あはは、それは言わない約束ですよ」


 最近はリオのノリがよくなってきている。


「「いただきます」」


 二人で手を合わせてそう言ってから箸を手に取る。


 まずは、何肉かよくわからない肉を焼いて、トマトソースのようなものをかけた料理。


 こんなに綺麗な見た目なのだから不味いわけがない。

 リオが作ったものなら不味くても完食はするけど。


 食べやすい大きさに切って口に運ぶ。


「ーーーーんまい!!!!」


 口に入れた瞬間に口いっぱいに滲み出る肉汁、完璧な塩加減、上にかかっているトマトソースのようなものと、にくいとのバランスも完璧。


「そう?嬉しいなぁっ!」

「これならいくらでも食べられそうだよ!」

「じゃあ、リオが毎日作ってあげようか?」


 これはアレですかね、毎日味噌汁をーってやつですかね?

 もうリオルートでいいよね?

 メインヒロインリオでいいよね?


「そうだな、リオならいいお嫁さんになれるよ」

「じゃあ、お婿さんはロキアがいいなっ!」

「お、おう」


 純真無垢なリオの笑顔に何も言い返せなくなり、そのまま食事を続ける。


 数分後には、料理が美味しかったからか、すぐに完食してしまった。


「ふぅー、美味しかったごちそうさま」

「お粗末様でした。ーーお兄ちゃん、ソース付いてるよ」


 恋人のように、俺の頬に付いていたソースを指でとると、そのままリオは口へ運ぶ。


 もう、ダメ人間でいいかもしれない。






 ♢ルシア




 リクレイフィア噴水広場。

 リクレイフィアの中央に位置する、老若男女問わず人が集まる場所である。


 その噴水付近で俺は辺りを見回す。

 ルシアとの待ち合わせ場所がここなのである。


 ルシアが、自分の休日に俺を誘って遊びに行きたいと言ってきたので、了承したところ、デートのような感じになってしまった。


 まあ、ルシアが相手なら全然構わないけどね。


 なんて馬鹿なことを考えていると、タッタッタと駆け足で近づいてくる女性がいた。

 本日のデート相手、ルシアである。


 ルシアの今日の服装は、いつものような騎士団制服ではなく、純白のワンピースに、肩から鞄を下げている。

 簡素な格好といえばそうなのだが、とてもルシアに似合っている。

 超可愛い。


 実際、周囲の男の目はルシアに釘付けである。


「あっ、すいません、お待たせしました」


 俺が既に噴水前で待っていることに気がつくと、謝りながら近づいてくる。


 その動作に周りの男の視線はルシアではなく、俺へと変更された。

 ついでに視線の種類も可愛いものを見る目から憎い者を見る目に変わったが。


「いや、大丈夫。今来たところだ」


 嘘です、三十分くらい前からここにいました。

 カナが「デートで女性を待たせる男は最低限よ」なんて言って、さっさか家を追い出されてしまったので早く来てしまっただけなのである。


「ふふっ、デートっぽいですね」

「デートだろう?」

「へっ!?」


 ルシアの顔が赤く染まっていく。

 仕事で色恋沙汰に乏しいルシアは初々しい反応をする。


「じゃあ、行こうか」


 俺はルシアの肩に腕を回し、エスコートする。

 その際、周囲の妬ましげな視線を送ってくる男どもを一瞥してーー、


「はっ」


 鼻で笑っておくことも忘れない。


 ゴオオオオォォォと周囲から恐ろしいほどの怨念と、呪いの言葉が放たれる。


「ふ、ふえっ!?」


 ルシアは普段なら周りの異様な空気に気がつくのだろうが、俺が肩を寄せたこともあり、そんなことにまで頭が回らないようだ。


「もう、ロキアさんって意外に大胆だったんですね」

「俺は普段はもっとヘタレだよ」


 そんな日常的な会話をしながら俺とルシアは、リクレイフィアの街の中に溶け込んでいった。






 ♢エルシア



 目がさめると、知らない天井に、もう寝た感じで分かる超高級なベッド、天井から下がっている豪華なシャンデリア。


「ここは……どこだ?」


 カナ、リオの二人とシクラ帝国へ遊びに来ていて、城下町を散策していたはずだった。


 はずだったのだが……急に視界が暗転して、気がついたらここにいた。


 ガチャリと部屋のドアが開く。

 そこから入ってきたのはーー、


「おお、ロキア、起きたか」


 所謂ネグリジェというものを着たエルだった。


「な、なんで?」

「ああ、私がロキアに会いに行こうとしたら部下に止められてな、じゃあそっちから来てもらおうという事で、眠らせて私の部屋に連れてきた」

「眠らせる必要は?」

「ない」

「おい!」


 なんで誘拐みたいなことしたの?

 えー、スゲーびびったんだけど。


「で、何するんだ、こんなところに連れてきて」

「何ってナニだろう?」

「いや、一国を背負う人間がそんなことしていいのか!?」

「そりゃあダメだろう」


 いやいや、エルは自由すぎると思う。

 国を背負う王がそんな自由な結婚が出来るはずがない。

 だからこんなことをしてるのか?


「でも、せめて初めてはロキアがいい。私の周りにいる男の中でお前だけなんだよ」

「性格がイイやつがか?」


 自分の性格が良いと言う訳ではないが、思い当たるのがそれくらいしかなかった。


「私を『エルシア』として見てくれる奴が、だよ」


 確か、前にも似たようなことを言っていたような気がする。


「そう、か」


 いつかいい男が現れる。

 そう言おうとして、やめた。


 そんな保証はできないし、それでエルが幸せになれるかといったらわからない。


「今は、それには答えられない」

「知ってたさ。カナが先だろう?それともリオ?ルシアだったりするか?」

「ハーレムだな」

「私は構わないさ」


 なんと心の広い!

 ハーレムを許容してくれるなんて。

 男の夢(ロマン)が実現可能か!?


 でも今は。

 チュっと、エルの額に唇を落とす。


「これで我慢しといてくれないか?」


 クスッとエルは笑顔になり口を開く。


「仕方ないな。気長に待つさ」


 その後は一つのベッドで寝たものの、ベッドの上では何事もなく、二人で次の日の朝を迎えるのだった。






 ♢




 チャプンと、水音がする。

 場所は前回同様エルに借りた大浴場。

 壁の向こう側には今回はカナ、リオ、エル。


 一番お堅いルシアがいないのでチャンス!と思ったらーー、


「ふー、いい湯ねロキア」


 カナが乗り込んできた!?

 風呂に入りに来たので当然のごとく全裸。

 その完璧な肢体を隠すのは バスタオル一枚。


「そ、そそそ、そうだな」


 落ち着け、落ち着くんだ俺。

 いや、俺の息子も落ち着け!


 自分の中でひたすらに暴れるロキアのロキアに静止の声をかける。


 幸いな事にお湯は乳白色なのでカナには気づかれていないようだが、バレるのも時間の問題だろう。


「なんでそんなに離れているの?もっと近づきましょう?」


 やめてーー!これ以上近づいたらぁ!!


 ピトッ、とカナが俺の腕に胸を押し付けるように抱きついてきた。


 ギャーーー!!!


 いつもなら喜ぶとこだけど、今はー!!!


「いいのよ?このままナニしても」


 誰だーー!カナにそんな言葉教えたやつ!!!


「か、かか、考えとくよ!」


 タオルで股間を隠し、さっさと風呂から上がり逃げるのだった。




 場所は変わり、シクラ帝国王城の屋根の上。

 夜中ということもあり、眺めもよく、人も来ないので落ち着くのに最適な場所だ。


 俺はカナ好きだと思う。

 いや、好きだ。


 アルテアにカナを頼むって言われた時は嬉しかった。

 でも、それで俺がカナに手を出してもいいのだろうか?


 所詮は元人間と、絶対無敵な邪神。

 そんなの、一緒にいられるわけがーー、


「こんなところにいたのね、探したわよ」

「…カナ」


 俺の隣に腰を下ろすカナ。

 今度は俺は逃げるようなことはしなかった。


「どうしたの?ロキア、私に言ってみなさい」


 そうだな、アルテアのこともまだ話してないし、ここは話すべきなのだろう。


「アルテア、カナの父親に会ったんだ。それで、カナを頼むって言われた」

「へー、私の父ねぇ。どんな人だった?」

「優しくて、強くて、馬鹿な人だったよ」

「ロキアにそっくりね」


 そう言ってカナはふふっと笑う。

 アルテアの事で何か思いつめたりはしないようなのでよかった。


「で、それがどうしたの?」


 ここは、男らしく言うべきだろうか?

 いや、ここで言わなきゃ男じゃないと思う。


「俺はカナが好きだ。アルテアもそれを知ってて俺にカナを頼むって言った。…でも、俺なんかがカナの隣に立てるのかって思い始めた」


 もう、カナが俺のことを好きな前提で話を進めている気がするが気にしない。


「それで、私が迫っても逃げたのね」

「そういうこと」


 視線をカナから街の方へ外しながら言った。


「ロキア」


 名前を呼ばれ、再びカナの方へ顔を向けるとーー、


 カナの顔が目の前にあり、唇になにやらこの世のものとは思えない柔らかい感触。


 カナの顔が少しずつ離れる。


 たった数秒間が何分、何時間にも思える時間だった。


「そんなの私は気にしないわ」

『そうね、私も気にしないわ』

「「へ?」」


 突然聞こえてきた第三者の声。

 だが、周りには俺とカナ意外誰もいない。


 ピカッ!


 カナのつけているペンダントが光っている。

 その光はペンダントから分離し、女性を模る。


 だれ?

 超絶美人で少々カナに似てるかなーって感じの女性。


『ネラはしっかりカナにペンダントを渡してくれたようね。っと、まずはこういうべきかしら?…久しぶりね、カナ。と言ってもあなたは覚えてないのでしょうけど。あなたのママよ』


 カナの母らしい。

 アルテアの事もあり俺はそこまで驚きはしなかったが、カナは驚愕で目を見開いている。


『ロキアさんならカナを任せてもいいわよ。アルテアもカナをロキアさんに任せたって話だったしね』

「ほら、私の両親公認よ。もう大丈夫よね?」

「えー、今その話?もっとこう、母娘で話すこととかないの?」


 両親公認なのは嬉しいのだが、今その話をするかな?

 感動の再開だよね?


 そんな俺の顔色を察したのかカナが言った。


「だって私、母の顔知らないもの」

『まあ、そうでしょうね。むしろ知ってたら怖いわ』

「それでいいのか!?」


 雑じゃないか?せっかくの再開なんだし。


『私はアリア。カナの母。で、その私がGOサイン出してるんだからロキアさんは今日この後ベッドの上でカナを押し倒しちゃいなさい』

「母親、それでいいのか!?」


 もっと仲を深めてからとかいうべきところだと思う。


「さすがね母さん。わかってるわ」

『ふふふ、娘のことだもの。よく分かってるわ』

「カナも母親なんて顔も知らない的なこと言ってたのに仲良いな!?」


 先程からツッコミしかしていない気がする。


「いいじゃない。母の事はネラから聞いていたし、なんとなく分かってる。この人が私の母さんなんだなって」

『すぐ消えるけどね。もう時間もないし。さて、ロキアさん。アルテアからも言われたようだど、私からもう一度。カナを頼むわよ。私の自慢の可愛い娘、泣かしたら殺すわよ?』


 その言葉には娘を想う、母親としての気持ちが強く込められていた。

 だから、俺も真剣にこの言葉に向き合わなければいけない。


「分かりました。だから、俺から言う言葉は一つです。カナ、娘さんを俺にください」


 しっかりと正座をしてから頭をさげる。

 これが日本式。

 母国のしきたりとも言えるものだと思う。


『ふふふ、任せたわよ。それとカナ、ロキアさん、大事にしなさい?』

「当然よ」


 それは母娘の短いやり取りだった。

 それでも、二人の間にはこの短すぎる時間の中でしっかりと家族としての繋がりが見えた気がする。


『カナ、愛してるわ』

「私もよ。母さん」


 ふわっと、光を放っていたペンダントから光は霧散し、アリアさんも薄くなっていく。


「母さん、私は今とても幸せ。だから安心して?」


 カナの言葉に、アリアさんは言葉を返さず、天使のような優しい笑みを、カナと俺に向けた。


 フッ。


 アリアさんの姿が消える。


「……カナ」


 たった一、二分。

 でも、カナはアリアさんを母親として認識していたのだろう。

 カナの顔は下を向いている。


 声をかけようと、肩に手を置き、名前を呼ぶとーー、


「さて、ロキアベッドに行きましょうか」


 顔を上げたカナは満面の笑みでそう言った。


「えっ」


 カナは俺の首根っこを掴み、ズルズルと引きずっていく。


「さっきも言ったけど両親公認よ。もう迷うことなんてないわよね?」

「えっ、ちょっ、まっ」

「ハイハイ、聞こえなーい」


 俺はそうして、カナと二人、裸で次の日の朝を迎えた。

これにて、『転生したら幽霊だったのだが』完結です。

本編最終話でも言いましたが、今までお付き合いいただき誠にありがとうございました。


また次作でお会い出来れば幸いです。

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