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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
七章 名も無き幽霊
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vs.ロキア【カナ・アークノート】

意外に早く書きあがったので投稿します。

 ロキアが戻ってきた反応を捉え、即座に邪神族の墓地へ駆けつけたが、肝心のロキアの反応がない。


 領域テリトリーを展開しても、分かるのはここにロキアがいるということだけ。

 常に周囲に気を張らなければ、殺られる。


「気味の悪いところですね」

「墓地か、中々変なところにいるんだなロキアは」

「お兄ちゃんは隠れてるの?」


 三人とも、もう少し気を張った方が良いと思う。

 なぜか、お気楽ムード。


「ロキアが殺しにくるかもしれないのよ?そんなので大丈夫?」

「カナさんが見つけられないのであれば私たちにも見つけられませんよ。私は私なりに、大気の流れを掴んで索敵中です」

「リオも匂いはしっかり嗅いでるよ?」

「常に剣を抜けるようにはしてある。後はカナさえ初撃に反応してくれれば戦闘にはすぐに入れる」


 これは……気が張り詰める空気とどちらが戦闘前としては正しいのだろうか?


 だが、張り詰め過ぎて体が思うように動かせなくなる、なんてことになるよりは断然マシであることには違いないので、これ以上咎めるようなことを言うのはやめる。

 シリアスムードだと私もなぜか力を出せそうな気がしないし。


 私たちは私たちなりに気持ちを作ればそれで良いと思う。


 実際私は体が動かないなんてことがありえそうであったので、今の雰囲気に救われたのかもしれない。


 すると、途端に私の勘がピンと危険を知らせる。

 たかが勘、されど、戦闘においては一瞬の判断が状況を左右する。


「みんなっ、横に跳びなさい」


 判断を下すや否や三人にも命令。

 私の命令が耳に届くとほぼ同時に三人とも跳んだ。

 私も命令と同時にその場を離れる。


 瞬間、私たちがいた場所に何か黒い影のようなものが落ち、地面が陥没する。


「ロキアっ」


 その黒い影の正体はロキアであるとすぐにわかった。

 見た目はいつもと違う。

 人間とは言えないような姿形をしている。

 身に纏う雰囲気もいつもと違う。

 ロキアのとっつきやすい雰囲気ではなく、近寄るもの全てを殺す、そんなビンビンの殺意が伝わってくる。


 でも、私には確信めいた何かがあった。


 アレはロキアだと、私は確信した。


「さて、いくわよ」

「痛くしちゃったらごめんね?ロキアお兄ちゃん」

「全く、ロキアさんが敵になるなんて思ってもみなかったですよ」

「殺さない程度か、……半殺しか?難しいな。加減が出来ないからな、文句は受け付けないぞロキア」


 みんなもアレがロキアだと勘付いていたようだ。

 私だけではない、全員がロキアを少なからず想い、救おうとしている。


 それぞれがロキアに一言断るように言葉をかけると、戦闘を開始する。


 まず、先手を打ったのはエルだった。

 他の追随を許さない圧倒的剣速の銀の閃光がロキアに打ち出される。


 しかし、ロキアの周りがゆらりと揺らめき、その閃光は狙いがズレ、ロキアの背後の瓦礫に穴があく。


「ふむ、ロキアの周りの空間が多少歪んでいるのか?」

「遠距離からの攻撃はあまり意味をなさないのでしょうか?」

「じゃあ、試してみるっ」


 それを試すかのようにリオは質よりも量の遠距離魔法、《氷槍アイスランス》で槍を十数本ロキアに向けて打ち出す。


 狙いは正確に、全てロキアに直撃するコースだった。

 しかし、その氷の槍は数本はロキアが弾き、残りはまたもや狙いが逸れてしまった。

 だが収穫はある。


「そこまで大きくは歪んでいないみたいだから量で押せば攻撃が通らないことはないみたいね」

「そんな面倒なことをするくらいなら、近接戦闘の方が手っ取り早いです!」


 ルシアは駆け出し、剣を抜き放つ。

 市販で売っているようなものではなく、名のある刀匠が鍛えた剣なのが一目でわかった。


 ルシアもまた、対ロキアに備え、万全の装備で来たわけだ。


 ルシアの剣は正確にロキアの首筋を斬りにいったものの、上体を反らすことで回避、ロキアは反撃とばかりにルシアに蹴りを入れる。


 それを半歩身を引くことでルシアは紙一重で回避、剣を突き出した。


 バックステップで距離を取り、またもや回避するロキア。


 それを追うように、リオの氷槍がロキアに迫る。

 だが、やはり槍は逸れ、歪みを抜けた槍も弾かれる。


 私は背後からトップスピードで接近し、蹴りを放つ。

 だが、後ろに目があるかのように私の蹴りを跳ぶことで回避、リーデヴィッヒの使用していた禍々しいオーラで編まれた剣が私に飛来する。


 コレはマズイっ!


 擦りでもしたら、そこから侵食されるタイプの攻撃であると予測を立て、追撃よりも回避することを優先。

 剣を失われた楽園(ロスト・エデン)で薙ぎはらう。


 ロキアは私に追撃をしようと接近、掌底で私の顎を狙ってくる。

 剣を振り切った状態の私は回避ができる態勢ではない。


「一対一ならね」

「させるかっ!」


 エルは私の後ろから飛び出し五つの閃光を放つ。

 空間が歪んでいようと、届かない訳ではない。

 エルの閃光は確実に急所を抉りに行く。


「なっ!?」

「ぐっ!」


 ロキアは手のひらからオーラを放出、私を攻撃しつつ、ブースターの要領で後ろに飛び閃光を回避。


 そのままルシアに急接近。


「ケヒャッ!」


 奇妙な声と共に、蹴りを繰り出すロキア。

 だが、既に受け止める態勢をルシアは整えている。


 ガギィン。


 それを剣で受けるルシア。

 金属同士がぶつかったかのような音がする。


「いやいや、あいつの足は金属製か?」

「あの禍々しい力で強化してるんでしょう?」

「大丈夫か?さっきの一撃…」


 先ほど食らった攻撃は、大したダメージはない。

 戦闘にはなんの支障もないだろう。

 打撃というのもあり、傷口からの侵食も問題はなさそうである。


「大丈夫よ」

「気を付けろよ?得体が知れない力なんだからな」

「言われなくても」


 先ほどは体制を崩し、回避が不可能になっていた。

 ならば、翼があれば翼さえ動かせる状況なら回避が可能。


「さて、いきましょうか」

「ああ!」


 あの得体の知れないオーラで作られた剣を持ち、ルシアと打ち合っているロキアに上空から接近。


 そのまま頭に踵落とし。

 容赦なく振り下ろされた足に反応すると、剣の形状が変化し傘のように頭上に展開。


 ゴオォン!


 私のかなりの力を込められた一撃を微動だにせず受け止める傘状の盾。


 私の一撃が防がれるのは計算尽く。


「こっちがガラ空きですっ!」


 ルシアの剣がロキアの首を目がけ振り上げられる。


「ケヒッ」


 ズズズッ。


 ロキアの首が一瞬にして変色。

 ロキアの使用するオーラと同じ色へ。


 ガキイン。


 ルシアの一撃を軽々と弾く硬さ。

 弾かれた剣に体を持っていかれるルシア。


 ロキアは腕をひき、ルシアの体へと狙いを定める。


「させないわっ!」


 ルシアを狙うロキアの腕をロストエデンで狙う。

 腕を斬り落としにかかったが、既に腕はそこになく、私の剣はロキアの体を斬る。


 キィン。


 先ほどのような盾のような硬さはなく、少々皮を切ったかどうかという手応え。

 だが、それでロキアが止まるはずもなく、ルシアを狙うロキア。


 まずいっ。


「させないよっ!」


 ロキアと、ルシアの間に現れる氷の分厚い壁。

 ロキアの拳は壁に阻まれ減速。


 その間にルシアは体制を立て直し離脱。

 私はロストエデンをロキアの体に突き立て、柄を押し込む。


 ブシュウッ。


 突き立てると、すぐにロストエデンを抜き離脱。

 やはり硬いが、攻撃が通らない訳ではなさそうだ。


 シュワァー。


「あの硬さで再生とか嫌なことしてくるわね」


 私のつけた傷が音と煙を出しながら傷など初めからなかったかのように元通り。


「でも、私は負けないわよ」

「リオも負けないよっ!」

「そんなこと考えてもなかったです」

「さっさと終わらせて帰らないと怒られるんでな」


 この不利な状況でも、誰一人として士気を下げることはない。

 みんな、勝つ。

 それだけを胸に秘める。


そろそろ期末テストが近づいてきてしまいましたので、近日中に更新停止すると思います。予約投稿出来るように書き溜めようとはしてるのですが…。


感想評価お待ちしております。

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