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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
七章 名も無き幽霊
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決戦前【カナ・アークノート】

今回はシリアス成分は含みません。

 もうすぐだ。

 もうすぐ、ロキアが帰ってくる。

 いや、無理やり帰らせるといった方が適切だろうか?


 邪神族の墓地には常に私の領域テリトリーを遠隔で展開している。


 ロキアが戻ればすぐにわかる。


 カタカタカタ、貧乏揺すりが止まらない。

 時間が過ぎるのがひどく遅く感じる。


「私ってこんなにロキアに依存していたのかしら?」

「少しは落ち着いたください。カナさん。待てる女が良い女ですよ?」

「へー、リオは待てるよっ!」

「私も待てるわ。あと…三時間くらいなら」


 私は気が短い方なので、そんなに長いこと待っているのが苦手なのだ。


「はあ、そんなんじゃ、ロキアさんに愛想つかされちゃいますよ?」

「待つわ!いつまででも」


 それは嫌だ!

 ロキアがいなければ私はもう生きていけないかもしれない。


 リオがいて、ルシアがいる。

 友達も、いもうとのような存在もできた。

 この場にロキアがいないだけでなにか空虚な感じがする。


 ロキアがいない。これだけでこんなにも悲しくなるのか。

 なら私はもう二度とロキアを手放さないようにしなければならない。


 ロキアが私を拒むのならば黙って身を引くがそうでない限り、私はロキアのそばに立ち続ける。


「今はゆっくりして、対ロキアに備えておきましょう」

「備えるって言っても私は分からないんですが」

「リオも分かんなーい」


 対策。

 実際には私もよくわかっていない。


 ただ、ロキアが使うであろう能力は万能型。

 どの方面においても準備はしておいて損はしないはずだ。


「取り敢えず、万全の状態で戦えるようにしておいて。ロキアの場合はリオの時とは違って、最悪中の霊体だけ取り出せれば良いから」

「中身だけってそっちの方が難しくないですか?」

「傷つけたくはないけど、そんなのが通じる相手じゃないのよ」


 私だって、できることならロキアを傷つけることはなるべく避けたいのだが、リーデヴィッヒとの戦闘経験をもって言わせてもらうと、油断すればすぐこちらが持って行かれる。


「今分かるのは、ロキアが尋常じゃないくらい強くなっている。それだけよ」

「それ、結構危なくないですか!?」

「カナお姉ちゃんがいれば大丈夫じゃない?」

「他力本願!?私とリオちゃんは必要なんですか?」

「必要よ。二人とも私に及ばずとも相当な実力者よ?」


 いや、実際、ルールなしの全力勝負ならば負けはしないが、戦闘に制限を付けられると、私はぐっと負けに近づく。


 つまりは、制限がついたか否かで、勝敗が別れるほどの差しかない。


「それに、私が本気を出したら、ロキアを魂ごと消しとばしちゃうかもしれないし…」

「やらないでくださいね!?私たちも頑張るのでそれはやめてくださいね!?」


 流石の私もその辺は弁えている。

 私の攻撃でロキアが消滅なんて洒落にならないどころか、やらかしたら私は自殺する自信がある。


「私もそこまでは出来ないので気をつけるのはカナさんとリオちゃんだけじゃないですか?」

「リオも魂まで消滅とかは相手が神様以外にはできないよー」

「神族相手だったら出来るんですね…」

「ルシアも本気を出せば魂ごと消滅くらい使えるようになるわよ?もう既に強さは人外レベルなんだし」


 ルシアのあの強さは人間にしては異常すぎる。

 いかに聖騎士兼光の勇者といえどもあの圧倒的戦闘力は以上の一言に尽きる。


「魂消滅なんて使えなくて良いんです!私は騎士なんですよ?守る側なんです!そんな危険極まりない技なんて必要ないんです!」

「そう?つい人を殺しちゃったときとか、証拠隠滅に便利よ?肉片どころか魂まで消滅させるから、殺したなんてわからないだろうし」

「やらないでくださいね?それを使って証拠隠滅とかしないでくださいね!?」

「やらないわよ。私をなんだと思ってるのかしら」


 なんて失礼なのだろう。

 私も人を殺したらそんな姑息なマネはせずに堂々と殺したと言い切るくらいはできる。


「やりそうだから言ったんですけど…」

「リオもそう思う」


 リオまでそんなことを…。


「私だって、やって良いこととやっちゃいけないことの区別くらいつくわよ」

「区別はついても、それが正しいかどうかは別ですよね。個人の価値観は人それぞれですし」

「なんなの?私に喧嘩売ってるの?いいわよ、ロキアの前にルシアをボコボコにしてあげましょうか?」


 結局ルシアとは戦えなかったし、それも良いかもしれない。

 準備運動にはなるだろうし。


「遠慮しておきます。私の力は体力の消費が高めなので今使っていたら後でバテます」

「そう、残念だわ」

「カナさんとの決着はいずれ付けますよ」

「そうね、ロキアが戻ったら審判をしてもらいましょうか」

「リオも!リオもルシアお姉ちゃんと戦ってみたい!」


 リオはルシアと戦ったことは暴走時以外はないので、今度はしっかりと戦いたいそうだ。


「面白そうな話をしてるな。私も混ぜてくれよ」


 会話の輪にまた一人加わる。

 国が違うということで遅れてきたエルだ。

 結構急いで来たようで、息は荒くなり、身体が熱を持っている。


「エルさん、大丈夫ですか?だいぶ息が上がってますけど」

「大丈夫だ。結構本気で走ったから少し疲れてるだけだ。休めばすぐに戻る」

「そう?じゃあ座りなさい」


 私は椅子を引いて、エルに座るよう促す。

 それに、エルはありがとうと、一言答え、着席する。


「で?さっきの女子会的な話、続けてくれよ」

「女子会と言うには内容は戦闘系でしたけど…」

「細かいことは気にしないさ」


 たしかに、戦闘の事など基本的には女子がするようなものではないはずた。

 だが、なぜか私の周りにはそんな話ができるような強者の女子しかいない。


 …男が弱いのだろうか?

 守ってもらうというのが女の一つの憧れなはずであるのに、それができない。

 少し残念な気がする。


「女の子らしい話?だったら料理とかの話はどう?」


 リオの発言にルシアとエルがピシッと音を立つかのようにして固まった。


「どうしたの?二人とも」


 二人とも何かブツブツ言っている。

 騎士と皇帝がおかしくなった。


「ははっ、仕方がなかったんですよ。田舎から出てから騎士としてすごい忙しかったですし、それこそ男が捕まえられないくらい。だから、炊事洗濯ができなくても仕方がないんですよ」


 あー、つまり?


「ほら、私って皇女だから。料理人がいたから自分で料理する機会なんて全くなかったし、考えたこともなかったんだ。ほら、皇族だとさ、その辺仕方ないだろう?お姉様は料理とかなぜか出来たけど…私がおかしいんじゃない。皇族なのに料理ができるお姉さまがおかしいんだ」


 二人は料理ができないと、そういうことね。


「大丈夫よ、逆玉っていうものもあるのよ」

「それは女として負けた気がするので嫌です!」

「私の場合はおそらく政略結婚だからなぁ」

「リオは料理できる大人になろうね?」

「うんっ!美味しいもの作れるようになるっ!」


 ルシアとエルはもう手遅れ気味だが、リオはまだまだこれからなので問題ないだろう。


 リオは良い女になる。

 私が保証しよう。


「私、この戦いが終わったら家事が出来るように頑張るんだぁ」

「そうだな、私も人任せじゃなくて、自分でやってみようかな?」


 二人が所謂死亡フラグというものを立てている気がするが、二人は強いので死にはしないだろう。


「じゃあ、私が家事ができるようになるためにも、ロキアさんには戻ってきてもらわないと」

「そうだな、ロキアに見てもらうとするか」

 そのためにも、早くお兄ちゃんを連れ戻さないとねっ!」


 ああそうだ、このメンバーで負けるはずがない。

 たとえ相手がロキアだろうと、ボコボコにして連れ戻す!


 ビビッ。


 おっと、なんと都合の良いタイミング。


「ロキアが来たわ。行くわよ、みんな!」

「「「おー!」」」


 掛け声とともに全員家を飛び出し、全速力で墓地の方へ駆けて行く。


申し訳ございません。次回投稿は少々遅れる可能性があります。


感想評価を切に求めております。

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