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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
七章 名も無き幽霊
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喪失【カナ・アークノート】

さて、物語もそろそろ終わりへと近づいて参りした。

完結の目処は立っているのですが、第2部をどうしようか迷うところです。

 リオが正気を取り戻し、ようやく平穏が戻った。

 私の怪我も治り元の生活に戻った。


 そう思っていた。


 でも、すぐにその平穏は壊れた。

 戻った平穏は一日と持たなかった。


 ーーーロキアがいなくなった。


 ロキアは一人で邪神族の墓地へ向かった。

 しかし、どれだけ待とうともロキアが帰ってくることはなかった。


 最初はロキアが霊体なので墓地から出ることが出来ない。

 そう思って探しに行った。

 しかし、ロキアはいなかった。


 でも、ロキアは弱いわけではない。

 何かあってもきっと大丈夫。

 そう思って家でリオと二人待っていた。


 それから一月が過ぎた。

 ロキアは戻ってくることはなく、不安が募るばかりだ。


 私たちはロキアを捜索することにした。

 ロキアの匂いをリオに探させたり、私が最大範囲で索敵エネミーサーチを使って墓地から半径三百キロメートルを探したがロキアの反応はなかった。


 ルシア、エルにも捜索を願い出た。

 ルシアは騎士団の、エルは帝国の力を使って全面的に協力してくれた。


 ルシアは国民が行方不明、エルは国の機密情報を握る重要な人物が行方不明になったという名目で。


 二人の協力もあり、大陸単位でロキア捜索は始まった。

 私も、全力で捜索をしたが、ロキアの行方はわからなかった。


 リオも氷神滅狼アイスフェンリルの群れを頼ったりしたのだがやはり見つけることはできなかった。


 ルシア、エルも全力で手伝ってくれたというのに見つからない。

 私が密かにロキアに魔力でマーキングをしていたのだが、それも一切反応なし。


 一体どうしたのだろうか?

 なぜ?言っては悪いがロキアの実力で全力の私から隠れ切るなど不可能だし、理由もないだろう。


 それならばロキアが攫われたという可能性も考えたが、それなら捜索に引っかからないのは流石におかしいだろう。


 よほどの手練れ…それこそ私と同格の相手がロキアを隠した、ロキアが既にこの世に存在していないのどちらかでしか、この捜索で見つからない理由がなかった。


 でも、見つからなかった。


 なんで?ロキアが死んだ?嫌だ、ありえない、認めない。

 まだ私の事を嫌いになったとかの方がいい。

 ロキアが死ぬなんてことはあってはならない。


 ロキアが死んでしまったら私は今までの様に生きることはできない。

 私は一体どうすればーーー。


「お姉ちゃん、お客さんだよ」


 え?

 気がつかなかった。

 そんなに私はボーッとしていただろうか。


「ええと、誰だっけ、ネラって言えば分かるって」


 ネラ、服の注文はした覚えはない。

 なぜ私の家にまで彼女が来るのだろうか。


「しけた顔してるねぇ」

「放っておいて」


 リオの後ろからひょっこり顔を出したネラ。

 私の今の顔がひどい顔をしていることくらい分かっている。

 だが、そんなことよりも今はロキアを探す方が先決。


「用件は何かしら?早く済ませてくれる?」

「まあ、そう急かすな。せっかくあの時連れてきた坊やの話をしてやろうと思ったのに」

「話を聞かせなさい」


 私はすぐにネラに詰め寄る。

 たとえそれが藁だとしても今はそれにも縋りたい。

 それほどにロキアを失うことが怖い。


「ったく、せっかちだね。アタシは情報を与えに来てやったんだよ?もっとそれなりの態度ってもんがあるんじゃないか?」

「……教えてください。ロキアの居場所を、教えてください」

「ハハッ、邪神が敬語で頭をさげる光景なんて初めて見たよ」


 自分がやらせたのに何を言っているのだか。

 だが、今はおとなしく頭を下げた方がいいと判断した。


「正確な位置までわかっているわけじゃあない。アタシはこれでも数百年を生きる魔女でね、少し知識があったってだけ」

「知識って、何?」


 私は知らない。というか頭を下げさせといてそれか。数百年と生きてはいるが、私は現在の状況を把握しきれていない。


「鍵と箱、そんな感じかね、簡単に説明するとなると」

「鍵と箱?何を言っているの?」

「鍵は悪意、純粋で、黒い負の感情。それが鍵。その鍵を使用して開けることができるのが、箱。アンタも帝国で戦ったろう?」


 帝国、あのリーデヴィッヒが使っていた力の事を言っているのだろうか?


「アレは箱の中身の力のほんの一部にすぎない。その力に憑依して、反応消失っていう事だよ」

「でも、どうして私の索敵に引っかからなかったの?」


 そうだ、あれほど強大な力なのだ。私が感知できないはずがない。


「あの坊や、封印的な能力、いや、体質を持っているんだ。おかしいとは思わなかったかい?元とはいえ、邪神の体を使ってあの程度の実力。中身が未熟だからという点を差し引いてもおかしい。弱すぎる」


 それは薄々感じていたことだ。

 クレストという生物の中でも最上位に位置する彼の体を使い、地龍アースドラゴンごときに敗北するなど普通はありえないことだ。


 それなのにロキアは負けた。

 確かに、ロキアにはステータスにも反映されない何かを持っているのかもしれない。それか、体と魂が馴染んでいないか。


 だが、ロキアが憑依した体を弱体化させるのなら、シュウと同時に憑依、リオに憑依したと言っていたのはなんだったのだろうか?


 そのときは弱体化ではなくむしろ強化されているようにロキアは語ってくれた。


「で、憑依したはいいものの、箱に完全に飲み込まれた鍵は自らの力を弱体化、で力を隠しだってわけさ。それで、心当たりは?」


 ある。

 ロキアはクレストの体を埋めたら自分の本当の身体を取ってくると行って出て行った。

 ロキアのいう本当の体というのはよくわからないのだが、その際に憑依してしまったと考えてまず間違いないだろう。


「あるわ」

「やっぱりね。あの坊やも中々トラブルメーカーだね」

「本当に」


 でも、どうしてロキアの反応がないかも分かったし、ロキアの生存もほぼ確定した。

 ならば後は助けるだけ。


「情報感謝するわ。いきましょうリオ」

「うんっ!お兄ちゃんを迎えに行こう!」


 リオも、私たちの話を聞いていたようで、先ほどまで暗かった顔が明るくなっている。

 そういう私も、先ほどとは顔つきが違うのも感じていた。


「ーーー待ちな」


 制止の声がネラから掛かる。

 出鼻をくじくのはやめてほしいと思う。


「あの坊やを、ロキアを殺す覚悟は出来ているのかい?」


 ーーーえ?


 何を言っているのだろう?

 ロキアを殺す?誰が、私が?

 馬鹿な事を言っているのだか。

 私がロキアを殺すわけがないだろう。


「何馬鹿なことをって顔してるね」

「私がロキアを殺すなんてありえないことだわ」


 はあ、とネラはため息をつきこちらを見て、真剣な眼差しで言った。


「あの坊やはもう、手遅れだと思った方がいい。箱に飲み込まれちゃあ、自我なんて残りゃしないよ。今アンタに出来るのは、坊やの魂が入った化け物を飼うか、坊やを殺して解放してあげるか。どちらかさね」

「そんなわけないっ!」


 反論の声を上げたのは私ではなく、隣にいたリオだった。


「お兄ちゃんは強いんだもんっ!何があったのかリオはよく分からないけどっ!ロキアお兄ちゃんは絶対に負けたりしないんだよ!」

「あの坊やは弱い。子供だからってわからないわけじゃないだろう?」

「そうじゃないの。お兄ちゃんは戦いとかじゃなくて、こう、他に強いところがあるんだよ!」


 心、だろうか?

 だが、私にはロキアは強いようには見えなかった。

 ロキアが箱に飲み込まれたと聞いて、ロキアの自我がなくなっていると聞いて、私は諦めてしまった。


 だが、リオは違った。

 ロキアを信じていた。

 すぐに諦めた私と違い、諦めなかった。


 私よりも、リオの方がよっぽどロキアの事を信じているようね。


「ネラ、情報は感謝するわ。後のことは私たちでなんとかする」

「例えそれで、あの坊やを殺すことになってもかい?」

「ロキアは殺さないわ。化け物を飼ったりもしない。ちゃんと、ロキアを連れて帰るわ」

「不可能さ!出来るわけがない」

「私が何とかして見せる」


 なぜネラがここまでして止めるのかは知らないが、私はやらなければならないのだ。


「そうかい、だったらアタシを殺していくんだね!」


 瞬間、家の中が、濃密な魔力と殺気に溢れかえった。

久々登場ネラさん!

お忘れの方は「恋心」に登場しておりますので読んでみてください。


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