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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
六章 異変編
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暴露

 なんで?どうしてカナが倒れているんだ。

 どうして、リオがカナを襲ったんだ。

 どうして、カナがーー。


「カナァ!」


 考えている暇などない。

 カナにすぐさま駆け寄る。


 駆け寄ろうとすると、氷の槍が飛んでくる。

 リオの魔法だ。


「リオ!」

「……………」


 これじゃあカナに近づけない。

 カナは見るからに重症、リオはなぜか敵に。

 カナは俺と戦闘していたことによって背後の注意を怠った。

 というよりはリオがカナを襲うなんて思ってもみなかった。


「リオ、ゴメンッ!」


 リオに向かって霊力の槍を投擲。

 これならリオは回避するためにカナから離れるはず。

 そう思ったのだが、リオはそんなことお見通しだ、と言うように槍を素手で捕まえ俺に投げ返してくる。

 それも寸分のズレもなく的確に俺の心臓部を狙って。


「くそっ!」


 槍を回避したのはいいのだが、これではカナのところにたどり着くことができない。


 リオ、本当にどうしたのだろうか。

 リオの雰囲気がいつもと異なる、そんなことは分かっている。

 今はカナの治療とリオ暴走の原因ほ解明が最優先。


 そのためにはまずリオにおとなしくしてもらわなければ困る。


「ロキアさん!リオちゃんは私が抑えます。早くカナさんを!」

「わかった!ありがとう」

「ロキア、私も手伝おう」


 ルシアは剣を抜くとリオに接近し蹴りでその場から吹き飛ばす。


「今です!」


 吹き飛んだリオにさらに追いつき追撃するルシア。

 ルシアなら最低でも足止めしてくれるだろう。


 カナからリオが離れた瞬間にカナに駆け寄る。


「っ!なんだよこれ!?」


 カナの背中は肩のあたりから背中の中心部までザックリと斬られており、その傷はカナの体を蝕むように毒のようなものを流し込んでいる。


 俺とエルの二人がかりで回復魔法を傷口に行使する。

 しかし、極端に傷の治りが遅い。

 だが、カナを蝕んでいる呪いのようなものは少しずつ抜けている。

 これは多分、呪いを治さないと傷が治らないという感じのものなのだろう。


「呪いが回復魔法で治るのが不幸中の幸いだな」


 漫画やゲームだとこの呪いを治すのに何か特別な物が必要だったりするが、そんなものがなくて助かった。


 だが、カナの出血量は多い。

 早く治さなければカナが危ない。


 俺はありったけの霊力と魔力を回復魔法に注ぎ込む。

 すると、呪いはスウッと抜けていき、徐々に傷も治っていく。


「いいぞロキア!この調子ならーー」


 エルの声が聞こえる、だが、魔力と霊力を体から全て絞り出したので、視界が暗くなる。


 くそっ、カナとの戦闘に魔力を多く使ったのが失敗だった。

 こんなことになるならもっと温存しておくべきだったと後悔する。

 エルも少し時間がたったとはいえ、ルシアとの戦闘後なので回復魔法をカナの傷を完治することは出来ないだろう。


 俺がカナを助け…る。…だめだ、意識が。


 カナ、リオ………。






 ♢




 目が覚めると、俺は家のベッドで寝ていた。

 その隣にはカナも寝ている。

 その寝息は落ち着いたもので、とりあえずは命の危険はなさそうだ。

 俺をここに運んでくれたのもエルかルシアだろう。

 ルシアとエルに感謝しなければ。


 まずは現状確認をするためにルシアとエルに話を聞かなければ。

 リオはどうなったのだろうか?


 リビングに入るとエルとルシアが向かい合って座っていた。

 二人に一声かけてから席に座る


「あ、ロキアさん!体は大丈夫なんですか?」

「力の使いすぎで倒れるとはびっくりしたよ」


 二人にはそれなりに心配をかけてしまったようだ。


「心配してくれてありがとう、俺は大丈夫。で、現状は?」

「カナさんは命に別状はなさそうです。時間が経てば目をさますでしょう。で、リオちゃんなんですが、すいません逃げられました。今はシュウさんが追跡しているところです」

「リオ…どうしたんだよ」

「それは分からない。どうしてカナをいきなり襲ったのか。そもそも私はリオの事はあまり知らない」


 どうしてカナを襲ったのか?

 リオの本能というやつなのだろうか?

 リオはカナとの戦闘で、かなり本能的に戦っていた。


 リオの氷神滅狼アイスフェンリルの本能が神殺し。

 邪神であるカナを殺そうとしたのではないだろうか?


 神滅狼、神を滅する狼。

 その特性としてカナの傷口を蝕んでいた呪いがかかったのかもしれない。

 回復魔法で治ったのは、あくまで神殺しの力、神の魔力は弾くことができてもそれ以外は弾くことができない物なのだろう。


 結論としては現在リオの理性が崩壊している。

 その原因はまだ不明。

 だが、カナの邪神としての魔力に当てられたのかもしれない。

 カナが、俺との戦闘で使った翼、失われた楽園(ロスト・エデン)、禁忌の楽園。

 あれからは異質な力を感じた。

 アレが原因な可能性も低くはない。


「シュウが戻って来たらリオのところに行って連れ戻すか」

「それもいいですが、まずは説明してくれますか?」

「あれだけカナを慕っていたリオが、カナを襲うなんて普通に考えたらありえない。その辺、説明しろよ?」


 二人はリオや、カナの事をしっかりと想ってくれるいい奴だ。

 そんな二人にならカナとリオについて話してもいいかもしれない。


「…カナは邪神で、リオは氷神滅狼なんだ」

「「は?」」


 予想通りの反応だった。

 いきなり、神話級の種族名が出てきたらそうもなるだろう。


「カナは邪神、俺とカナが戦闘してる時に使ったあの漆黒の翼や固有能力、あれは多分カナの邪神としての力の一部なんだと思う。で、神滅狼は神を殺すために作られた種族らしい。それの派生である氷神滅狼のリオは本能的にカナを襲ったんじゃないかって思ったんだ」


 カナとリオは生物兵器にもなり得る強大な力を有している。

 ルシアとエルは、方や国を守らなければいけない騎士。

 方や国の皇帝。

 こんな危険因子をどう扱うか、そんなことは分かっている。


 これはもう賭けに近かった。

 俺の実力ではおそらくリオを止めることは不可能だ。

 リオを止めるには二人の力が必要不可欠だ。


 この二人の立場は理解している。

 二人の立場なら、カナとリオをどうしなければいけないかも知ってる。


「二人の立場ならカナとリオを処分の対象に出来る。そしてカナとリオはその対象になれるだけの危険因子でもある。そんなことは百も承知だ。でも、頼む。見逃して欲しい」


 席を立ち、床に頭を擦り付けるようにして頭を下げる。

 俺が出来るのはこれくらいしかない。

 これで二人が拒否したら俺は二人の敵に回るかもしれない。


 でもルシアとエルならって思ってしまう。


「…邪神に神滅狼ですか。見事に神話の宿敵同士ですね。あの実力にも納得です」

「どうりで見たことのない能力だと思ったよ」


 あ、あれ?考えていた反応と違う。


「カナさんとリオちゃんを処分だなんてしませんよ」

「私たちじゃあ処分できるだけの実力を持っているかも微妙なところだしな」

「ありがとう」


 もう一度しっかりと頭を下げる。


 よかった。

 敵対するようなことはなさそうだ。


「そんな処分がどうこうよりも、今はリオちゃんを連れ戻すのが先でしょう」

「そうだな。リオを元に戻す方法とかは知らないのか?」

「そんなの知ってたらとっくにやってるよ」


 そうだ、今はリオを元に戻さなければ。

 どうすればいい?


 カナのように特殊な魔法などが使えるわけでもない。

 メンタルケアのようなこともできない。


 俺がリオを元に戻すにはどうすればいい?


 考えろ。たとえ俺の体を犠牲にしたとしてもリオは助ける。


 リオの笑顔をもう一度見たい。


 カナと俺と手を繋いでまた一緒に笑っていたい。


 どうする?俺のできることはなんだ。

 リオと会話する?そんなことが理性を失ったリオとできるのか?

 リオの心と直接会話できるようなものとかないのか?


「………ぁ」


 そうだ、あるじゃないか。

 一度似たようなことをしたじゃないか。

 なら、あとは実行するだけだ。


 バタン!と、ドアを壊すのではないかというような勢いでシュウが戻ってきた。


「幼女の居場所がわかったぞ」

「ナイスタイミングだ!」


 待ってろリオ。





カナがここまで傷付いたのはリオが神殺しだからです。リオじゃなければ傷付きはしても致命傷にはなりません。


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