聖騎士の本気【ルシア・カラレス】
盛大に風邪をひいてしまいました。
これはストックだったので投稿できますが、次回投稿は遅くなります。
申し訳ございません。
さっきから驚かされてばかりだ。
ロキアさんとシュウ?さんの戦い。
カナさんとリオちゃんの戦い。
どちらも高レベルな戦いだった。
違いが一歩も譲らずに自分の全力を出し切ったような感じ。
なんというか、想い?が伝わった気がする。
リオちゃんは気を失っているので、家の中で眠っている。
そのリオちゃんの顔は、すっきりしたような顔だった。
私はそんな戦いに対する想いなんてない。
ロキアさん達とはまだ出会ってからそう時間は経っていない。
「でも、手加減する理由にはなりませんね」
「手加減なんかしたら、死ぬぞ?」
「殺しは無しだぞ!?」
私とエルの掛け合いにロキアさんが突っ込む。
冗談なのに。
エルさんは皇帝。
だからと言って手加減はしない。
それは失礼だろう。
互いの全力を尽くす。
私とエルさんには想いは無い。
でも、前の二組の戦いに影響されてか、久しぶりに全力で戦いたくなった。
丁度いいことにエルさんは私が本気を出すに足る相手。
先ほど見た銀の閃光。
アレは生半可な実力では到底扱えない代物だと見てわかる。
閃光だけが持ち札というわけでもないでしょう。
「久々の全力です。ワクワクしますね」
「同意だな」
互いに剣を構える。
動くことはせず、様子を見る。
閃光の仕組みを見極めろ。
ただの速さを極めたものとは違うのか?
それとも純粋に速さだけを追い求めたものなのか。
技の発動の瞬間を見極めろ。
ーーーー今ッ!
体を全力で逸らし回避行動をとる。
すると今まで私がいたところに銀の閃光が迸る。
これは距離を開けてはいけない。
直感でそう判断した私は足に力を集め一気に接近。
閃光の発動を少しでも阻止するため剣を振るう。
袈裟斬り、斬り上げ、横薙ぎ。
剣撃と剣戟の間を無くし連撃をエルさんに放つ。
だが、エルさんも余裕で捌いている感じ。
「やはり、この程度では準備運動と言ったところですかね」
「そうだな。でも驚いたぞ?私の《銀閃》を躱したからな」
「あの程度で驚かれちゃこの先耐えられませんよ?と、言うことでギアを一つあげます」
私が光の勇者と呼ばれる所以。
その力を解放する。
「《魔装》聖装」
光が私の体を包み込む。
すると私の服装は騎士団制服から光り輝くドレスのようなものへ。
《魔装》。自身の魔力を形にし、オリジナルの武具を作ることが出来る。
ロキアさんの霊力の鎌も魔装に近い物だ、
「おお、ルシアも魔装を使うのか」
「も、って事は…」
「ああ、《魔装》戦乙女」
エルさんも光に包まれ、光が収まるとそこにいたのは銀と、黒を基本としたドレス。
私のものと同じく魔力で編んであるので防御力は並みの鎧などとは比べ物にならない性能を誇り、同時に動きやすい。
「「さて、やりますか(やるか)」」
互いに準備万端なことを確認すると同時に地面を蹴る。
まずは剣を打ち合う。
防ぐ、避ける、追う、斬る。
それだねの動作なのに一つ一つが精神をすり減らすような攻防。
周りの景色など見えない。
互いが互いしか見ていない。
先ほどの銀の閃光よりも早く鋭い突きがくる。
それを逸らし踏み込み、胴を薙ぐ。
もっと、もっと速く、強く、鋭く。
まだ、まだだ。
私の限界はこんなものじゃない。
戦闘中でも学べ。
最高の相手じゃないですか。
自分をより高みへ連れて行ってくれる相手との戦いだ。
そんな戦い、私が力をつけてからどれくらいしていなかっただろうか。
自惚れるつもりはないが、私は強くなってしまった。
だが、その強くなった私と対等に渡り合える相手との戦い。
楽しくないわけがないじゃないですかっ!
「まだ、まだっ、もっといけますよねぇ!」
「ああ、やってやるさっ!」
戦闘中でも余裕に会話ができる。
そんなのじゃダメだ。
もっと、もっとギリギリの戦いをっ!
このスリルをっ、この痛みをっ、受け入れて勝つ!
エルさんを殺すつもりで本気で胸の辺りを抉りに行く突き。
しかし、それはエルさんの軽やかなステップで回避。
私が剣を振り切ったところを狙ってエルさんは腕を切り落としにかかる。
私は一度剣を手放し腕を下引く。
腕を狙って剣を振り下ろしていたエルさんに蹴りを入れる。
それを打点を逸らしながらも受け、少し後ろにエルさんが下がったところで、落ちている剣を拾う。
即座に態勢を立て直したエルさんが銀の閃光の連撃を放ってくる。
一つを処理するのでも大変なのにそれが複数ともなると手に負えない。
突きは一つ一つが的確に私を狙っている。
だったらっ!
複数の閃光のうちの数本を逸らし、体を強引に捻ることで残りの閃光の直撃を回避。
掠った部分が痛むが気にせずに、エルさんに剣を振り下ろす。
それをエルさんは体を半歩引くことで回避を試みようとしている。
それに気が付いた私は剣筋を曲げる。
それに驚愕したエルさんだったが冷静に判断。
私の剣を避けられないと見ると、一歩踏み込み剣を突き出す。
肉を切らせて骨を断つ。
そんな生易しいものではない。
骨を切らせて骨を断つ。
相打ち覚悟で剣を突き出している。
とっさの判断で狙いが定まっていないかのように見えるその剣は確実に私の戦闘力を落とすために腕を狙っている。
対して私が剣で狙っているのは脇腹。
これはマズイ。
私の腕は魔装に覆われておらず露出している。
エルさんの脇腹は魔装に覆われている。
一撃の攻撃力が同じでも狙う場所とその防御力によって結果は変わってしまう、魔装とは使用者の魔力に依存し力を発揮する防具、これでは私が負ける。
「しょうがないですね」
私の最後のリミッターを解放。
《半神化》
女神に愛された私は勇者、聖騎士となった。
そして、一時的にだが、女神の力の一部を引き出せるようになった。
それが半神化。
私の変化にいち早く気がついたエルさんは突きを放つ方向を強引に変え、その勢いで私の横を通り抜けるように前へ跳ぶ。
「あ、危なかった。なんだ今の。剣速が急激に上がったぞ」
「やはりすごいですねエルさん。今のを初見で対処するとは」
「マグレだよ。ていうかなんだよそれ。それが本気モードか?」
「その通りです。勇者兼聖騎士の実力というやつですよ」
「生憎だが今の私じゃそれには対応しきれない。…だが、私は私の本気でそれに立ち向かってやる」
互いに少し距離を取る。
「戦乙女 《銀花流星》」
「偽・聖剣《女神の審判》」
エルさんは上に飛び、剣を下に振り下ろす。
私はそれをカチあげるかのように上に向かって剣を振るう。
銀の閃光、いや、上から降り注ぐたくさんの銀の閃光は空を流れる流れ星のようで。
それを向かい打つは光の奔流。
光の質量、密度で強引に閃光を押し切り、エルさんを呑み込む。
手加減はしたので死んではいない。
ドサリと地面に落ちるエルさん。
「あなたの敗因は、一撃一撃に火力と、面の攻撃が足りなかったのです。あなたの攻撃は突きのような点が多いですからね」
「くそっ…次までにそんな技を考えとくよ」
エルさんはそう言うと瞼を下ろす。
「勝者、ルシア!」
「ふふふ、久々の本気を出せて嬉しかったです」
次も楽しみですね。
残りは二人。
発展途上なロキアさんか完成されたカナさんか。
どちらでも楽しい戦いになりそうだ。
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