ロリコン?
俺とエルは宿屋、食事処など拠点関係などを調べてみた。
しかし、エルの知っている有名どころや一般的なところにはやはりいなかった。
『路地裏とかの宿屋にいたりしそうなんだけどな』
「すまない。これでも私は箱入りなんだ。有名どころ以外は詳しくないんだ」
しょうがないだろう。
そう言うのは旅人とかの方が詳しいだろうし。
宿屋、食事処、酒場にいた人たちに「最近黒髪の美人を見なかった?」と聞いて回ったところ、数人が見たかもという程度の曖昧な返答であり、カナと思わしき人が、どこにいるのかは見当がつかなかった。
『あー、もう!カナはどこに行ったんだよ!』
「一つ聞きたいのだが、そのカナというやつはそんなに重要な人物なのか?」
やっぱり気になるよね。
重要人物と言われればそうだし、この帝国の存亡がかかっているとも言えよう。
『とりあえずは、カナがいれば大抵のことはなんとかなる!まあ、俺としては頼るんじゃなくて頼ってもらいたいんだけどな』
「だからそれはいいって言ってるじゃない」
『いや、でも男としてはーー』
って、え?
後ろからとても聞き覚えのある声が。
ギギギと音が出るようなぎこちなさで首を後ろに向ける。
するとそこにいたのはこの間となんら変わった様子のないカナの姿があった。
『カナ!探したんだぞ!』
「すぐに帰るって言ったじゃない」
『いや、もう一週間くらいいなくなってるじゃん!』
「あと数日で終わらせてたのに」
あと数日で帝国を滅ぼしていたと、流石です!
帝国はそんなことも知らずに呑気に日常を過ごしている。
それを唐突に反論する余地もなくただ一方的に崩すなんてラスボス感満載ですね!
「何を勘違いしているかは知らないけど、そこまで物騒なことはしないわよ」
カナは強さの桁が違うからその辺の基準もおかしかったりするんじゃないかな?
「なあロキア、紹介よろしく」
『えーっと、カナ・アークノート。俺の師匠。超絶強くて本気を出さなくても帝国なんて指先一つでちょちょいのちょい。あと、俺らが探していた人』
我ながら超適当な紹介になってしまった。
でも大まかにカナのことが伝われば今は十分だろう。
「ふむ、ならばよろしく頼む。私はエルシア。ロキアとは友達?仲間?みたいな関係だ」
「よろしくね第二皇女様?」
「む、知っていたのか?」
「情報収集は傾国を狙うには必須よ?変装していてもね」
傾国ね、カナなら傾世だと思う。
『カナはどこの宿屋に泊まっているんだ?俺らもそこに泊まるから』
「えーと、路地裏にあるいかにも怪しげな宿屋に泊まってるわ」
『危険はないのか?』
「……………勿論?」
「なんか今すごい間があったぞ」
でも、俺たちのメンバーからしてどうにかなることなんてないだろう。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
鈍く響く鐘の音が聞こえた。
リオとルシアと集合の時間だ。
『じゃあエル、案内よろしく』
「はいはい」
エルの案内のもと、時計台まで移動する。
♢
「カナお姉ちゃん!」
半泣きでカナに抱きつく幼女。
リオである。
集合時間ほぼぴったりに来たリオ達。
ルシアの性格がでている気がする。
「えと、リオ?どうしていつもと違うの?」
「うーんとね、変装してるんだよ」
「カナさんは変装しないのですか?」
確かに、カナは武闘大会で皇帝のよくわからん魔法をさらっと無効化したから一番マークされているはずでは?
「大丈夫よ。皇帝にだけは認識されないから」
『なにその魔法』
またチート魔法ですか?
本当、どれだけカナには引き出しがあるのだか。
「とりあえず宿屋に行きましょう。作戦会議とかやることもあるでしょう」
「じゃあついてきて」
そう言ってカナは歩き出す。
俺も、エルに日傘をさしてもらいながら移動する。
リオはカナにべったりくっつい付いている。
寂しかったのだろう。
リオに元気がないと俺も元気がなくなってしまう。
リオがカナにああも懐いているのは本当に姉のように慕っていることがよくわかる。
俺にもあんな風にくっついてくれないかな〜。
「ロキアさん、何か変なことを考えていませんか?」
『か、考えてない』
鋭い。
何でこうも鋭いのだろうか?
しかも、いま考えていたのはリオについて、ルシアとは関係なかったのだが、それでも勘づくのか。
『リオが俺にもあんな風になついてくれないかなと思ってただけだよ』
「ロキアさんはロリコンの方でしたか」
『ちげーよ、確かにリオは可愛いけど。ロリが特別好きなわけではない。リオだけだよ』
なんか結局はロリが好きみたいになっている。
ロリが好きなんじゃない!好きになったのがロリだったんだ!
「リオちゃんはロキアさんのことも大好きですよ。ただ、甘えているだけっていうのがあまり嬉しくないみたいです」
『リオと話したのか?』
「ええ。リオちゃん、子供なのにしっかりしてますね。女の子は好きな人に守られてるだけは嫌なんですよ?」
どういうことだ?
リオが俺のことを好き?んな馬鹿な。
年の差があるし。
でもそれが本当だったら超嬉しい!
大きくなったらお兄ちゃんと結婚するー、的な?
『リオも子供のままは嫌って言うことか。分かったよ』
リオのあの小さな背中に大きなものを背負おうとしているのか。
まだ早いなんて事は俺には言えない。
でも、背負うものは選ばなきゃ潰れちゃうぞ。
♢
カナの泊まっている宿屋に到着し現在は部屋割りでもめていた。
現在は部屋の一つの中なので俺も既に憑依をしている。
なぜもめているかというと、ルシアが俺とリオ、カナが同じ部屋に泊まるのはおかしいと言うのだ。
「だーかーらー、死霊族とは言え、男の人と同じ部屋で寝るのは危ないです」
「いつも同じ部屋で寝ているって言ってるじゃない」
リオは部屋違うけど。
リオが寝るときは、リオが寝るまで三人で川の字で寝て、リオが寝てから自分達の寝室で寝ている。
「それもおかしいんです!何かの拍子で貞操を奪われるかもしれないんですよ!?」
「ロキアにならあげても構わないわ」
マジで!?
「じゃあ下さい!」
「何言ってるんですか!」
「いいわよ。いまからベッドで」
「ダメに決まってるでしょう!」
ケチー。
「じゃあルシアでも」
「なっ、な、な、何言ってるんですか!?そう言うのはまだ早いですよ」
「まだ?ルシア、あなたこそ何を言っているの?」
自爆したな。
俺の策に見事にはまったな。
別に本音が混じってた、とかないよ?
ないったらないよ?
「ルシア、ロキアも年頃の男だろ?だったら女の体に興味を持つのは仕方がないんだよ。ということでロキア。私と既成事実をーー」
「お兄ちゃん。リオもう眠いよ〜」
「ん?じゃあ一緒に寝るか?」
「うん」
そう言って俺とリオは一つのベッドで横になる。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そう言うと、リオはすぐに眠りについてしまった。
早っ!でも、カナが戻ってきたってだけで安心したのかな。
そんなことを考えていると、女子三人組がなにやらヒソヒソと話し合っている。
「やっぱり最大の敵はリオちゃん?」
「リオもやるようになったわね」
「私はただ、この国にロキアを縛りつけようとしただけなのだが」
えー、カナとルシアはともかくエルは怖いよ!
そんなこと考えてたの?
俺の評価はエルの中でどうなってるんだ!?
でも、今はそんなことよりも、リオの寝顔を見ながら眠りにつくほうが有意義かもしれないなー。
だって、三人の視線が痛いし。
このまま夢の中に逃げよう。
リオの寝息を聞きながら俺も意識が遠くなってきた。
日常を取り戻すまであと少し。




