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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
五章 帝国編
52/82

信頼

夏休みももう終わりです。

宿題?………ん?

夏休み終了に伴い更新速度が落ちるかもです。

 オーバースペックな仲間達なので誰かが足手纏いになる事もなく、あの町から数分で帝国に到着した。

 案の定、東西南北にある門には門番が警備していた。

 エルなどは皇女なので変装してきてよかった。


 帝国の国民まではいかないが、皇帝の直属や、警備にはエルを見つけたら処分するようには言ってあるだろう。

 例えエルを馬車ごと川に流したと思ってはいても警戒はしているだろう。


「で?門番からは見えないところに来ましたが、ロキアさんは変装どうするんですか?」


 ルシアが疑問に思っていたらしく聞いてきた。

 憑依を解いて、ルシアに斬られないかは不安だが大丈夫だと思いたい。


「リオ、日傘よろしく」

「うん」


 俺の合図で日傘を開く。


 憑依解除っと。

 崩れ落ちる体は収納ストレージに入れる。


 ルシアとエルを見ると口を開けて唖然としている。

 まあ人間、少なくとも人型の種族だと思っていたら死霊族アンデッドなのだから驚愕するのも無理はない。


「…え、えと、ロキアさん、でよろしいのでしょうか?」

『ああ、びっくりしたろ?これで、俺の能力を使うと人からは基本見えなくなるから便利なんだ』


 霊体ではしゃべることができないので、《念話テレパシー》で会話する。


「そ、そうですか。別にロキアさんが死霊族だろうと何か変わるわけではありませんが驚きました」


 ふーん。こういう人はやっぱりいるもんなんだな。

 ルシア、恋愛関係で悩んでたけどモテるよ。

 いい娘だもん。


「ろ、ロキア!幽霊ってどんなんだ?やっぱりすり抜けとかポルターガイストとか出来るのか?」


 エルは興味津々である。


「憑依状態で子作りとか出来るのか?」

『本物の幽霊に何聞いてるんだよ!』


 子作りとかそんな大事?もっと聞くこととかあると思うんだけど!


「「まあ、ロキアさん(ロキア)に対する感情には何の変化もありません(ない)から心配しないで下さい(心配するなよ)」」


 すこし心の中で心配してたのが馬鹿みたいなんですけど。

 リオの時は子供だからかすんなり終わったし、どうなるかと思ったよ。


「体のあるお兄ちゃんはかっこいいけど、お化けのお兄ちゃんはなんか可愛いよ!」


 ありがとう。

 でも、お化け状態は褒められてもあまり嬉しくないな。


『とりあえず"邪神族の墓地の孤独幽霊ぼっち"これで基本はバレないから』

「分かりました。それにしても、姿、気配は感じないのに声だけ聞こえるなんて変な話ですね」


 ルシアにも気付かれないほどの気配消し。

 これは自信を持っていいのだろう。


「じゃあ、門を抜けるぞ」


 エルの先導で門番のところまで移動。

 その後、疑われることなく無事に帝国内に侵入できたのだった。






 ♢




『で、カナはどこにいるのだろうか』

「私たちが知るわけないでしょう。その辺はロキアさんやリオちゃんの方が詳しいのでは?」


 カナって結構自由気ままだからどこにいるとかは全く想像もつかない。

 未だにカナについては俺はたいして知らないのだ。


「手当たり次第に探せば見つかるんじゃないんですか?」

「それは時間がかかりすぎるぞ。帝国はかなり広いからな」


 うーん。でもカナだから結構目立つ気がする。

 騒ぎを起こす何てことはなさそうだが、美人なので人目をひくという意味では注目されやすい。

 ただ、カナも馬鹿ではない。

 ローブを着たりしているはず。

 そうなると、余計に探すのが難しくなってくる。


『市場とか、人が集まるところに行って聞き込みとかはどうだろう?カナの容姿なら記憶に残るし、一人くらい覚えてそうだけど』

「それならまあ。カナって女の容姿を私は知らないが、いいだろう。だが、日傘は邪魔だぞ?帝国の市場は人でごった返してるんだ」


 ここに来てまさかの仲間外れ!?

 ヒドイ!信じてたのに〜グスッ。

 まあ冗談は置いといて常識的に考えてそうだろう。

 人の集まる市場で雨も降っていないのに傘をさすなんて迷惑極まりない。


『じゃあ、こうしよう。ルシアとリオは市場で聞き込み。エルは変装しているとはいえ、バレる可能性もあるから、俺と一緒に別の場所で情報収集。あと日傘もエルに頼みたい』


 とりあえずは最善のチーム分けだろう。

 単独行動はもしものために避け、エルは人が多いところには連れていけない。


『あと、リオは匂いにも気を向けといてくれ』

「わかった!お姉ちゃんの匂いならいい匂いだからすぐわかるよ!」


 カナの匂い。

 何だろう、例えるならば…優しい匂い?全然具体的ではないが、花とかで例えることも、俺は花に詳しくないのでできない。

 カナの匂いは母親とはまた違う安心する匂いというやつなのだ。

 それは置いといて、集合時間、場所を決めなければいけない。


「じゃあ、あそこ、帝国の中央には大きな時計台があるんだ。見えるだろう?あそこは一定時間ごとに鐘が鳴る。一時間後くらいに鐘が鳴るから、鐘がなったらあの時計台の下に集合だ」

「わかりました」

「おっけー。じゃあ、エルお姉ちゃん日傘。」


 本当にすいません。

 俺って迷惑?

 俺も変装したほうがよかったかな?

 でも、俺たちの財布ってカナから貰ったお小遣いなんだよな。

 養ってもらってる身としては、無駄遣いは避けたいので、俺とリオは変装に金はかけなかったのだ。


「私はロキアと付き合いも短いし、異性だからな。親睦を深めるいい機会だよ」


 そう言ってもらえると助かる。


『よし、じゃあ解散!』


 そう言うとリオとルシアはエルから帝国の見取り図をもらい、市場に向かった。


「よし、じゃあ私たちも行くか。日傘はこれでいいか?お前の姿が見えなくてよく分からないんだが」

『ありがとう。丁度いいよ。まずは宿屋とか、酒場みたいな衣食住関係の場所から回ってみよう』

「分かった。じゃあまず有名なところから回っていくか」


 俺もエルと肩を並べて歩き…浮いて移動する。


「…その、ロキアから見て私は皇女に見えるか?」


 どうしたのだろう?

 いきなり俺にそんなことを聞くなんて。

 エルの顔は真剣である。

 ならば適当に答えるのは失礼というものだろう。


『皇女って言うより元気でたくましい騎士って感じだけどな。どっちかっていうとルシアの方が皇女らしい』


 正直に答えた。

 これが間違った選択なのかもしれない。

 でも、エルが真剣ならば、こちらも真剣に答える。

 嘘はいらない。

 これで、エルとの関係が悪くなってしまうかもしれない。

 でも、嘘をつくよりは正直に答えたほうがいいとこの場は判断した。


「くくくく、正直だなお前は」


 正解か?

 笑ってはいるが、失礼な奴だ!とか言って斬りかかってこないよね?


「今までどいつもこいつもお世辞で貴方はだれが見たって皇女ですとか、皇族の気品がにじみ出てるとかしか言われなかったから新鮮だったよ」

『俺がそういう風に言ったらどうしてたんだ?』


 俺がそう言うと、懐から先ほどの町でルシアの金を使い購入した短剣より少し刃渡の長い剣を取り出し言った。


「そういうやつは大体隠し事か、野望とか腹黒かったりするから斬ってたよ。信用に足る相手が怪しいからな」


 どうやら疑っていたのはお互い様のようだ。

 それも当たり前だろう。

 実の兄に騙され川に危うく流されるところだったのだから。

 家族に騙され、他に誰を信じればいいと言うのだろうか?


 最悪、今やこの国の全員がエルを反逆者として見ているかもしれない。

 そんな状況下で人を疑わない方がどうかしている。


 いまの彼女は墓地にいた時の俺と似ている。


 味方など一切いなく、友達、家族でさえ頼りにならない。

 武器や金もなく希望のない状況で、差し込んだ光。

 しかし、その光もあやふやの物。

 その光の先に言っていいのかどうかもわからず手探りの状態。


 俺はカナがいたから乗り越えられた。

 でも、エルはまだ、手を差し伸べてくれる人がいない。

 俺たちの関係は利害が一致しているにすぎない。


 ならばせめて、俺が手を差し伸べてもいいのではないのだろうか?

 カナのようにとは言わない。

 かっこ悪くても、頼りにならなくても、一人と二人では全く違う。


『エル、こんな状況だ。内心で俺を疑うのは分かるよ。仕方がない。でも少しでいいから信じてくれないか?不審な行動をとったら斬っていい』


 言葉は不安定で、通じないこともあるかもしれない。

 でも、何もないよりはマシだと思う。


「別に今までが上っ面って事でもないぞ?でも、少し警戒はしていたって程度だ」

『でも壁はないほうが、あったとしても薄い方がお互いにいい時だってある。特に今のエルは誰か支えてくれる人が必要だと思う。俺が支えるなんてカッコつけたことは言わない。でも、迷った時に背中を少し押してやるくらいはできるよ』


 俺がそう言うもフッとエルは笑う。

 今のなんか変だった?いいこと言ったと思うけど。


「それでも十分カッコつけてるよ。でも、一人よりかは気が楽になるよ。ありがとう」


 少しは打ち解けただろうか?

 こんな状況なんだ。少しくらいカッコつけても構わないと思う。


『どういたしましてって言いたいところだけど、全部終わってからだな』

「ああ、今はやる事がたくさんある。全部終わったらたっぷり礼をしてやるよ。なんだって私は皇女様なんだからな」

「皇女らしくないって認めてたくせに」

「らしくはないさ。でも事実そうなんだ。私は使えるものは使う主義でな。たとえそれが私に似合わない皇女としての権力だってな」

「ちがいない」


 仲良くなれただろうか?

 たとえなれてないとしても、まだ時間はある。

 少しずつお互い歩み寄っていけばいい。


「さて、行くか!」

『おー!』


 皇女一人と幽霊一匹。

 奇妙なコンビの完成である。



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