共闘
カナの家の前の修行場。
俺とシュウは向かい合い会議をしていた。
「では必殺技もとい、高火力な技を開発したいのですが何か案はあるでしょうかシュウ君」
「なんだその喋り方」
気分だよ気分。
まあ面倒臭いから元に戻すけど。
「で、必殺技だよ必殺技!何か高火力な技が欲しいんだよ!」
「確かに何かあの地龍の甲羅や、あのクソ強い女の障壁をぶち破れる技が欲しいな」
「必ず殺す技で必殺技・・・どんな技だよ!」
必殺技とか使ってるのに相手が全然やられない漫画とかよくあるよね。
「なんかな、オレらのできる事でそんな高火力を生みだせる物なんかあるか?」
「・・・ない、な」
二人同じ憑依している者。
できる事も大体同じ。
「諦めるか?」
「それはオレのプライドが許さねぇ!」
「だよなぁ」
とは言ったものの本当に高火力を生み出すにはどうしよもない。
魔法も、俺はたいした適性なんてないし、シュウなんて魔法自体が使えない。
俺の現在のランクと適性ではせいぜい闇属性の中が限界である。
俺のランクが上がれば上級やそれ以上も覚えられなくもないのだろうが、今それに期待はできない。
「いっその事必殺技無しで、ひたすら地龍の甲羅を叩きまくるとか?」
「どんだけ時間がかかるんだよ」
自分で提案しておいてなんだが、確かに非効率的だしこちらが地龍を相手にそこまで攻撃出来るのかも怪しい。
こちらの防御が薄い以上、なるべく一撃で倒したい。
「逆に聞くが、地龍の甲羅をぶち破れる高火力ってどんなのだ?」
シュウにそれを聞かれ、なるほどと思ってしまった。
自分よりバカだと思っていたやつが意外に頭がよかった時と同じくらいの衝撃を受けた。
でも確かにそうだ。
この世界の魔法や固有能力は術者の想像力によって発動される。
つまりは、必殺技のイメージがなければ再現のしようもないし、たとえ作れたとしても地龍の甲羅を貫けるほどの物ができるかも怪しいという事だ。
イメージ。
だが、実物を見たとしても俺たちがそれを再現できるかは全くの別。
イメージがあっても再現出来なければなんの意味もない。
高火力の魔法や技などはカナに頼めば見せてくれるだろう。
だが、カナに見せてもらっても再現出来ない確率がかなり高い。
カナなら、パンチ一発で「地龍の甲羅って案外脆いのね」とか言い出しそうである。
冗談ではなく本当にやりそうなのだからタチが悪い。
俺とシュウの力を合わせてもそれだけの火力を出せる事が出来ない。
二人の力を合わせるね。
そもそもシュウは俺と力を合わせる事をしたがらないだろう。
共闘までは許しても合わせ技とかはやりたがらないだろう。
「で?どうするんだよ。そろそろ休憩時間も終わってあの幼女と鬼強い女に追いかけ回されるぞ」
「本当になー」
シュウの口は微妙に悪いのだが言っている事が事実なので悪口かがわからなくなる。
「もし、もしだぞ?俺と合わせ技的な感じで協力して戦わない?って言ったらどうする」
「あ?お断り・・・っていつもなら言う所だがなあの女ども、地龍に弱いと思われたままやられるのは癪だからな。今回に限って受けてやるよ、その提案をな!」
意外な答えが返ってきた。
でもこれなら火力を出すための方法の幅が広がった。
具体的な方法はまだ決まっていないが。
俺らができる事。
近接戦闘
威力の微妙な魔法
魔法無効化
念力
浮遊
憑依
クラスの固有能力
称号による特殊効果
俺と、シュウのステータスを見た限りでできる事はこれくらいだろう。
この中のものを見る限りでは高火力を出せるものは無い。
でも、意外性的なものを求めて何かできる事はないだろうか?
高火力まではいかなくても何かできる事はないだろうか?
とりあえずはカナとリオに一矢報いるくらいは!
「はい、休憩時間終了。また続きやるわよ」
げ、まだ何も思いついてないのに!
「よーし、よーいどん!」
待ったをかける前にリオの軽快な声で開始の合図。
突然の事とはいえ、咄嗟に俺とシュウは身を翻し逃走。
後ろは毎度おなじみ魔法の雨。
撃たれれば即終了の物量と威力。
とりあえずは逃げなければ作戦すらもたてられない。
しかし、カナとリオのスピードはかなりのもので手加減してもまだ俺らについていけるスピードなのだ。
到底逃げ切る事など不可能。
つまりは、あの魔法の雨を打ち破り、更にその先の障壁も突破しなければいけない。
それ以外に俺たちの勝利条件は存在しないのだがかなり難しいのだ。
「シュウ!今度は俺があの弾幕に穴を開ける。お前の魔法無効化で障壁をブチ抜け!」
「おう!任せろ!」
前回は障壁に阻まれて失敗した。
ならば魔法を無効化出来るシュウならば越えられるはずだ。
あの弾幕に俺が穴を開けるにはーーー
霊力を使って鎌を作るように、シュウが通れるようなトンネルを作って送り届ける!
「いけぇ!」
「おう!」
霊力のトンネルで、シュウに当たるはずの魔法を防ぎ、道を作る。
俺に当たりそうな魔法は直撃を避ける。
魔法が掠っているので、痛みと衝撃がくるが、シュウを送り届けるまでは霊力のトンネルは崩さない。
「よくやった!ロキア!くらえええええ!」
シュウはトンネルを抜け、魔法の壁の向こうへ。
シュウの声だけが聞こえる。
「やれ、シュウ」
俺は魔法の雨に撃たれ、視界が暗転した。
「幼女も、女も反則だろ」
俺は数分後に目が覚め、シュウに結果を聞いた所、障壁は破ったものの二人の圧倒的な近接戦闘能力により、敗北したらしい。
「魔法だけだと思ってたら両方完璧にこなすとかずりぃよ」
「本当にな。やっと一矢報いる事ができると思ったんだけどな」
カナはうなだれている俺たちに笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「いいえ、あなた達は頑張ったわ。ここまで来れるとは思ってなかったわ。あなた、シュウと言ったかしら、これからもロキアをよろしくね」
シュウは、なっ!とうろたえたもののすぐにカナに返答する。
「ふん、言われなくても。お前はカナだったか?」
「ええ、よろしくね」
今まで仲があまり良くない感じだった二人が仲良くなった?
悪い事ではないのでよしとしよう。
魔法の雨の攻略はなんとかなったが、火力の方はまだ解決していない。
まだまだかかりそうな気がするが、シュウとならやれる気がする。




