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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
三章 好敵手編
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敗北を知る

 敗北。

 今までそんな事はあまり考えていなかった。

 今まで戦ってきた相手は少しは俺の実力でも対応できていたし、策を練ればどうにもならない何てことはなかった。


 だが、今回はどうだ。

 俺の体は傷つきひどい部分は抉られている。

 それに対し地龍アースドラゴンはほぼ無傷だ。

 更に共闘していたシュウも瀕死で意識が無い。

 もはやどうしようもない。

 完全な敗北。

 ここから勝てるビジョンが浮かばない。


 最初からわかってたじゃないか。

 勝てない何て事は。

 わかってたじゃないか、俺が無力なんて事は。


 地龍を見れば、大きく口を開けて、魔力を集中させている。

 ブレスだろうか?

 あんな攻撃が当たったら消し飛ぶな。


 体は動かない。

 残りの魔力や霊力も先ほどの岩の雨を防ぐために使ってしまった。

 それでもこのダメージ。

 さすが竜と言ったところだろうか高い攻撃力と防御力を兼ね備えている。


 ブレスならば広範囲、高威力だから一刻も早くここを逃げなければいけない。

 どうしよう。


「ゴァァァ!」


 発射準備完了とでも言うような竜の唸り声。

 地龍の口が光る。

 マズイ!


『くたばれぇ!』


 そんな声と同時に地龍の口が無理やり閉じられる。

 今使われたのは《念話テレパシー》つまりは言葉を発する事が出来ない者が好んで使う意思疎通魔法。


 目の前には俺の霊体とは違い輪郭がはっきりしていて顔、体などの区別がしっかりとしている幽霊。

 その顔は先ほどまで見ていた人間の顔とは違うがシュウだという事は一目でわかった。


 ブレスを吐こうとしていた地龍は無理やり口を閉じられた事で口の中で暴発。

 俺たちの攻撃とは比べ物にならないくらいのダメージを与える事ができたようだ。

 しかし、これも致命傷とはならず一時的に動きを止める事が出来るだけなようだ。


『ロキア!流石にコレは勝てねぇ。逃げるぞ』

「もっと早くその言葉を聞きたかったぜ」


 地龍の動きが止まっている間に回復魔法を発動させ、逃げられるくらいまでに怪我と体力を回復。


『悪いがオレの体も持って逃げてくれ。あの体が気に入ってるんだ』

「はいはい、分かったからさっさと逃げるぞ」


 シュウの使っていた体を持ち上げ走り出す。

 先ほどシュウと競争していた時ほどの速さは出せないがそれでも地龍の攻撃範囲からはすぐに逃げ切れる速さだ。


 シュウもかなりのスピードで浮遊しながら逃げている。


『流石に竜は強かったな。ハハハ!』

「笑い事じゃねぇよ!死にかけたんだぞ!」

『何言ってやがる。お前ももうすでに死んでるだろ』


 面白い冗談だと笑うシュウ。

 そうだったな。幽霊なんだから死んでるんだったな。

 死んだ覚えは俺にはないけど。


『さて、体が治ったらリベンジだな!』

「いやいや、無理だから。また死にかけるから!」

『んな事やってみなきゃわかんねぇだろ』

「ここは、一度修行かなんかしてから、リベンジだ。俺らにはあの甲羅を破る火力が足りない」


 ハハハ!とまたもや笑うシュウ。

 俺、何かおかしい事言っただろうか。


『お前も十分負けず嫌いだな!逃げようとか散々言ってたくせに』

「負けっぱなしは嫌なんだよ」

『そういえば、お前さっき回復魔法使ってたよな。オレの体にもやってくれよ』

「もう魔力も霊力も使いきっちまったよ」

『じゃあお前が住んでるところまで連れてけ。回復したら頼む』


 まあ、いいかな。

 地龍を倒すのは俺一人じゃどうにもならないし。

 シュウを殺すのもまだ先でいいだろう。

 この世界の俺の周りに男友達とかいないし、そんな感じのポジションにしておこう。






 ♢




「捨ててきなさい」


 シュウの体と、霊体を連れてカナの家に帰った途端にこの言葉である。


『いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇし』

「あなたには言ってないわ。黙ってなさい」


 なんかシュウに冷たいぞカナ。


「頼むよ、回復したら魔法をかけてそれで終わりだから」

「ロキア、あなたねぇ、そいつのせいでそんなにボロボロになったんでしょう?なのに庇うの?」


 おお!シュウに冷たいのは俺が傷付いたからなのか!?

 なんか嬉しい。


「俺も男だからな。しょうがないんだよ」

「男ねぇ。男はいつも勝手だってネラも言ってたわね」


 そ、そうなのか。

 ネラさん、まあその通りなんだけどな。


『それにしても羨ましいぜロキア!こんな美人に将来有望そうな嬢ちゃんと一緒に住んでるなんてな!』


 家の柱に隠れているリオにも視線を向けるシュウ。

 知らない人が来たから隠れているのだろうか?

 かわいい。


「もう、ちゃんと今日中に帰って貰うのよ」

「ありがとう、カナ」


 なんだかんだで優しいかなマジ女神。

 邪神だけど。




 魔量も回復し、シュウの体も治しシュウは帰宅。

 そして夕飯の食卓にて、軽い雑談をしていた。


 食卓にはやはり異世界のあまり見慣れない料理が置いてあるがカナの作る料理は美味しいので気にはならない。


「で?今日は何をしてたの?」

「ああ、ちょっと地龍と闘って負けてきただけだよ」


 カナは少し目を見開き驚いたようなそぶりを見せる。

 そんなに驚く事だろうか?

 カナもこの前冒険者ギルドで竜を倒しに行くとか言ってなかったっけ?


「それで回復魔法も少し使えるロキアもあんなにボロボロだったのね。地龍ね、そんなに強い相手だったかしら?」


 そりゃカナから見れば全部雑魚でしょうね。

 俺は弱者ですからそんな気持ちわかりませんが。


「カナとリオは何してたんだ?」


 そう口にするとリオは待ってましたとばかりに笑顔になり今日一日の事を語り始める。


「あのねぇ、リオは今日たくさん魔物を倒してきたんだよ!」


 あれ?カナさん勉強しに行くって言ってませんでしたっけ?


「魔物の生態と、習性、弱点とかを実際に戦って学んでもらったのよ。中々素質があったわ」

「えへへ」


 そのうち、二人で竜狩りに行ってくるとか言い出しそうで怖い。

 そもそも邪神と地球でも神殺しとかなんとかで割と有名な神滅狼フェンリルが一緒に行動してるとかヤバすぎない?


 俺とシュウのコンビなんかかわいいものじゃん!そっちの二人に比べれば。


 そうだ!この二人と俺とシュウのコンビで少し修行をしてみたらいい感じに強くなれたりしないだろうか?

 シュウなら強者との戦いってだけで飛びつきそうだし。


「なあ、カナ。頼みがあるんだけどーー」


 とりあえず、地龍を倒せるくらいには強くなる!


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