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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
三章 好敵手編
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地龍

 今、俺とシュウの目の前にいる動く大岩。

 これは岩などではなく岩のような甲羅を持った竜、地龍アースドラゴンと呼ばれている竜の一種である。

 今俺たちが目にしている地龍は岩などではなく、山と言っても過言ではない大きさの個体である。


「おい、やべぇぞ!竜族は体の大きさは強さの象徴だって言われてる。この大きさはかなり強いぞ!」


 シュウから、聞きたくなかった事実が明らかになった。

 竜ってだけでもうすでにピンチな感じなのに、追い討ちをかけるように、龍の中でも強いときた。


「ふぅ、逃げるか」


 幸いなことに、俺らがぶつかった程度では気にも留めない地龍。

 俺は早速回れ右。

 騎士団とは遭遇しないように気を付けて帰る。

 しかし、帰ろうとしたらシュウに肩を掴まれた。


「これ、倒そうぜ」

「いやいやいや、無理だろ」


 こんなでかいの無理だろ。

 王都からはかなり離れているのでそっちの方には被害は及ばないだろうし、時間が経てば冒険者ギルドの方にも依頼が行くだろう。

 わざわざ俺たちが倒す必要はない。


「これだけ体がデカいんだ、動きは遅いはず。倒せないと思ったら最悪逃げればいいだろ」


 それでも倒したがるシュウ。


「よし、じゃあお前一人だけでやれ。俺は帰る」

「それはダメだ。お前もやるんだよ」


 何その一緒にトイレ行こうぜ的なノリ。

 二人でやれば怖くないって?んなわけあるか。

 怖いものは怖い。

 カナと二人とかなら全然問題ないのだが、相手がシュウだから余計に不安なのだ。


 ていうか、お前今やばいって言ってたじゃん。

 やばいんだろ?逃げようぜ。

 こんなのを相手にするくらいなら騎士団と戦った方が数倍もマシだろう。


「一度格上と戦ってみたかったんだよ。共闘ってヤツもやってみたかった」


 完全に戦闘狂な頭してますねこの人。

 馬鹿なのか?それとも阿保?

 どっちでもいいから俺を巻き込まないでくれ。


「あっ、お前今刀持ってないじゃん。戦えないだろ?」


 我ながらいいところをついたと思う。

 これならばシュウも諦めて逃げるだろう。


「ああ、それならほら、こうやって布で隠してるんだよ」


 そう言ってシュウは自分の背中をごそごそやり始め、何かを掴んで剥がすような仕草をする。

 するといきなり見たことのある刀が二本出てきた。


「王都の中で持ってるとか騎士団に目をつけられるからな。こうやって魔法の効果がかかってる布で隠してるんだ」


 そんな後付けみたいな設定いいから早く逃げようよ。

 そんな俺の心の叫びも知らぬとでも言うようにシュウは刀を構え地龍に飛びかかる。

 そして山のような甲羅に覆われていない頭部に刀を振り下ろす。


 ガギィン!


 甲羅に覆われていなくとも龍の纏っている鱗は相当な硬さを持っているようだ。

 絶対防御というやつだろうか?


 しかし、今の攻撃は流石の地龍も気が付いたようでこちらに顔を向ける。

 そして、小さな集落くらいなら踏み潰せそうなほど大きな足を振り下ろす。


 俺とシュウはとっさに後ろへ跳び回避するが、足を下ろした時の風圧で周りの木々は揺れ、俺たちの体は吹き飛ばされる。


「本当にこれ絶対やばいから早く逃げよう」

「何言ってんだ、ここまできたらもう後戻りできないだろう」


 俺は自分の意思でこんな事したんじゃねー!

 全部お前のせいだろうが!


「ああ、もう!ヤケクソだ!」


 いつも通り体の身体能力を底上げ。

 いきなり本気モードだ。

 こんな相手、気を抜いたらすぐにやられる。


「おお!やる気になったか!」

「やる気はない!」


 だが、戦うと言ってもこんなにでかくて硬い相手をどうやって倒せと言うんだ。

 まずは部位破壊?

 ペイント玉とか投げとく?

 やっぱり捕獲が楽だよね。


「おい!ぼーっとするな!」

「え?」


 現実逃避をやめ上を見ると再び巨大な足が目の前に。


「やばっ!」


 全力で纏っている霊力を解放して足に集中。

 今できる限りの力で地面を蹴る。


 ドゴッ!


 足は回避できたものの、吹っ飛んで木に背中をぶつけた。痛い。


「オラァ!」


 シュウの方を見ると地龍の背中の上に乗り甲羅を何回も斬っている。

 すべて弾かれているが同じところを何度も傷つければそのうち甲羅も割れるだろう的な考えだろうか?


「《火弾ファイアブレット》」


 ならば俺は、シュウが甲羅をどうにかしようと頑張っているのを応援するために威力はないが色の派手な魔法で地龍の気をシュウから逸らそう。


 火弾も闇弾ダークブレットと同じようなもので属性が違うだけである。

 俺の火の魔法の適性は低いので威力はないが顔の辺りに当てればこちらの方を向くだろう。

 火力に関しては俺よりもシュウの方が高い。

 それならば俺がサポートに回るべきなのだ。


 案の定こちらを向いた地龍。

 だが、俺はそこから先のことを考えていない。

 こちらに気を引いたのはいいが、俺はそれ以外何をすればいいのかわからない。


「とりあえず、攻撃?」


 霊力で黒い槍を作り出し《付与エンチャント》で俺の魔法適性が一番高い闇属性を付与。

 そして槍を投擲。

 一本や二本ではなく絶え間無く何本も。

 コントロールはないので狙った所には飛ばないが、これだけ地龍の体は大きいのであまり関係ない。

 投げれば当たる、効かないけど。


 しかし、甲羅は当たっても弾かれ傷ついている様子はないが鱗は少し傷が付いているような気がする。


 時折甲羅の上に見えるシュウ。

 二本の刀を振るい、甲羅と甲羅の隙間をひたすらに攻撃しているようだ。


「グゥワァー!!!」


 物凄い咆哮。

 体は竦んで動かなくなる。

 だがそれを気合いでなんとか元に戻し一旦距離を取る。


 すると次の瞬間。地龍の甲羅がゴゴゴゴと揺れ、甲羅から無数の尖った岩が射出された。

 岩の雨が降り注ぐ。


 完全に回避は不可能だと一瞬で判断し、被害を最小限に抑えるために行動を開始する。


 まずは体に纏っている霊力の出力を全開にする。

 黒い霊力を壁のように作り体を守る。

 その壁を付与でさらにコーティング。


 その作業が終了すると同時に霊力の壁が揺れる。

 少しずつヒビが入り壊れていく。

 何本か貫通して壁に穴を開ける。

 その際俺の体を掠めていく。

 痛い、岩でごっそりとまではいかないが体が削られていく。


 やがて岩の雨もやみ、もはやボロボロの紙のような状態になった壁を解く。

 すると、目に入ったのは地面が抉れ、木々は倒れ元の森の面影も無くなった景色と自分の血で染まった手。

 そして、宙を舞う意識のない血で染まったシュウの姿だった。

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