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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
三章 好敵手編
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食事

 この世界の食文化も日本とそう変わらない。

 シュウに連れられ来た店のメニューに目を通しているとそのような印象を受けた。


 週に連れられて来たのは王都の大通りにある普通の店だった。

 シュウのような奴は森にまで狩りに行くぜ!とか言い出しそうだからヒヤヒヤした。

 席に着き周りの客の食べているものを見てみると日本で見たことがあるような料理がちらほら。


 確かにこの世界と地球とでは生態系が大きく異なる。

 だがそれに合わせ自然界を生きていくために、植物や動物も進化して行っているのだろう。


「オレのオススメはオークカレーだぜ」


 オークカレー?ポークカレーみたいな感じで言わないでほしい。

 オークといえばファンタジーには必ず存在している豚人間。

 そんなものの肉を使っているとか考えたくもない。


「・・・他はないのか?」

「他は、テリヤキハーピーとか?」


 テリヤキチキン?というかいちいちファンタジーな魔物を使うんだこの世界の料理は!

 もっと普通な感じのものはないのか。


「それもダメならサラダとかどうだ?マンドゴラのサラダ」

「うん、もういい。ちょっとメニュー貸せ」


 シュウは全部美味いのにな、と言いながらも渋々メニューを渡す。

 メニューに目を通す。

 すると、シュウが悪意があって変な食材を使っている料理を選んでいたわけではなく、基本そんな感じの料理ばかりだった。


「・・・じゃあオークカレーで」

「おお!わかってるじゃねぇか!」


 好きで選んだわけではない。

 この中ではマシな方だと思いこれにした。

 なんだよ、スライムの漬物って!


「そう言えば聞きたかったんだけどお前も憑依者なんだよな」

「ん?そうだぜ。最初に言っただろ?」


 それならばこいつも中身は幽霊なのだろう。

 だが、こいつは邪神族の墓地で目が覚めたのだろうか?

 それとも死後普通に死んだところで目が覚めたのだろうか?


「シュウは死んだ後どこで目が覚めたんだ?」

「?そりゃあ、普通に自分の墓の前だろ」


 普通ならばそうなのだろう。

 だが俺は突然この世界に来た異端者。

 俺は例外なのだろう。

 生き物が幽霊になれる確率はどうなのだろう。


 死ぬ前に後悔した人?

 そんな人、この世界には死ぬほどいるだろう。


 いまだに自分については謎だらけ。

 自分について何か判明すればどうにかなるかもと思ったがダメらしい。


 シュウを殺すか?

 今殺せば、また騎士団に目をつけられてしまうだろう。

 夜ならば問題ないだろうか。

 シュウはおそらく戦闘狂と言うやつだ。

 ならばいきなり勝負をふっかけても問題はないはずだ。

 シュウを殺して得られるものはなんだ?


 《万能眼》



 名前:シュウ

 性別:男

 種属:人間 (憑依時)

 ランク:B+

 クラス:豪剣士

 称号:戦闘狂

 固有能力:憑依、身体強化、魔法無効化マジックキャンセル



 おお!こいつも意外に強い。

 やはり魔法無効化系の固有能力を持っている。

 万能眼が効いている事から任意発動なのだろう。

 ランクは俺とさほど変わらない。

 こいつを倒しても魔法無効化くらいしか得られるものはない。

 対象の能力を受け継ぐ確率はそこまで高くないのだ。

 うーん。どうしよう。


「おい!ロキア、料理が来たぜ。何ほーっとしてんだ」

「ああ、ん?意外と美味しそうだな」

「当然だろ。オレのオススメだぜ」


 オークカレー、見た目は普通のカレー。

 さてお味の方はと。

 スプーンで肉とカレーを口に運ぶ。


 パクッ。


「う、うまい」


 オークなどという魔物の肉だと言われても全くわからない。

 肉は柔らかいし、味もしっかりしている。

 カレーもスパイスが日本にいた頃のものよりも全然効いている。

 日本の、いや、インドのカレーよりも美味しいかもしれない。インドのカレー、食べたことないけど。

 異世界、恐るべし。


 その後もスプーンを止めることなく口に運び続け、シュウを殺そうなどという物騒なことは一切考えなかった。







 ♢




「ふぅ、うまかったな。ありがとなシュウ。この店を教えてくれて」

「別に大したことじゃねぇだろ」


 シュウはそう言うと顔を背ける。

 素直に礼を言われて照れたのだろうか?

 意外に可愛いところがあるやつだ。


 こいつとは宿敵と書いて友と呼ぶ的な感じのかんけいになれるかもしれない。


 そんな少し恥ずかしい事を考えていると、かなりいい鎧だと見ただけでわかる男が数人の鎧を着た男を引き連れて話しかけてきた。


「なあ君たち、昨晩、慰霊碑の辺りで戦闘が確認されたのだが何か知らないか?」


 やっベー。表面ではただ聞いているだけだが目は完全にこちらを疑っている。

 どうする?そういう視線をシュウに送ると、頭に直接声が聞こえてくる。


「こういう時は、逃げるに限るぜ!」

「あっ、おい!置いてくな!」


 とりあえず逃走。

 昔の人は言いました、逃げるが勝ち。


 走りながら後ろを振り返ると鎧を着ているのが仇となったか追いかけてくる人の動きが鈍い。

 これなら危なげなく逃げられるだろう。


 隣を走るシュウも警戒はしているが気配を消す方に集中している。

 つまり、追いつかれる確率はそこまで高くないので隠れる方に力を入れたのだ。


 俺も気配を消すため称号"邪神族の墓地の孤独幽霊ぼっち"を発動させる。

 霊力も軽く纏い身体能力の底上げをして城下町から出るため走る。


「ハッ、なかなか速いじゃねぇか。だがオレの方が速い!」


 シュウはそう言うとスピードをぐんとあげ俺との間を広げる。

 それにムッとしたので、身体強化と纏っている霊力を全開にして地面を蹴る。


 どんどん加速しシュウと並走。

 更に追い抜くかと思いきや、シュウもスピードをあげてくる。

 景色が流れるように変わっていく。


 王都の入り口の門を通過する時に門番などが何かを言っていたが無視し、高さ五メートル近くある門を飛び越える。


 もう追っ手は来ないだろうが男には意地というものがある。

 もう追手が来ないからといって気を抜いていてはいけない。

 初めから敵は騎士団などではなくシュウだったのだ!


「ハハハハハ!やるじゃねぇか!いいねぇ、やっぱ最高だロキア!」

「言ってろ、すぐにその首貰ってやる!」


 お互いに戦闘狂のようなことを言いながらひたすらに走る。

 ついにはレース?は森の中へ。


 生い茂る木々をかわし走る。

 目的地などなくどちらかがついてこられなくなった時点で終了だろう。


 同じ男として負けられない。

 ランクがシュウの方が高い?

 関係ないね。ランクなんて所詮は目安。

 ましてや俺とシュウのランクの差なんて誤差の範囲だ。

 BとB+なんて大して変わらん。


「「げっ!」」


 そんなおかしなレースの途中、俺とシュウは同時に危険を察知する。

 しかしもう手遅れだ。


 ドゴォン!


 二人揃って目の前の巨大な大岩に突撃。しかし、とっさに前方に魔力を放出したので大した怪我もない。

 しかし、俺たちがぶつかったのは大岩などではない。

 俺とシュウがぶつかったもの、それはーー


「「竜?」」


 岩のように硬い甲羅を持つ竜。

 地龍アースドラゴンだった。

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