戦闘狂
皆様のおかげで累計PV10000を突破しました。
楽しんで頂けているのなら幸いです。
これからもよろしくお願いします。
男の服は黒を基本としているので闇に紛れられるはずなのにそれをしない。
この男は頭が悪いのだろうか?
それに先ほどの会話からしていかにも戦闘狂な感じだ。
漫画で言えば主人公のライバル兼親友的な立ち位置になるかもしれない。
「オラァ!考え事してる場合かぁ!」
口調からもわかるような荒く力強い二本の刀を使った剣技。
しかし荒々しくも無駄はない。
俺は大鎌の刃や柄でそれを受けていく。
一撃一撃が重い。
さらには剣戟の間に時折体術も混ぜてる。
致命傷を避ける為、刀を気にし過ぎれば確実に一撃を入れてくる。
打撃でも急所に当たればそこから局面をひっくり返されるので打点を少しずらしているのだが痛いものは痛い。
刀の方も少しでも気を緩めれば腕ごともっていかれる。
「オイオイ、守ってばっかか!」
「うるさい!まだ準備運動だよ!」
振るわれた刀を鎌で斜めに受け、軌道をずらす。
もう片方の刀を鎌でおもいっきり上に弾き飛ばす。
そのせいで俺の体も開ききってしまうが、バック転の要領で後ろの地面に鎌を突き刺し回転。
回転する際に男の腹を蹴る。
着地すると、腹を蹴られ体制を崩している男に鎌で横薙ぎ。
男は咄嗟に後ろに跳び回避するがこちらの方が少し早く、掠ったくらいだった。
それでも光属性を付与しているのでそれなりのダメージはいくはずだ。
「《闇槍》」
リオの得意な魔法の一つが氷槍なのでコツを教えてもらい習得した闇属性中級魔法である。
リオとは違い三本しか出せないが上出来だろう。
黒い槍が三本男目掛けて飛んでいくが、男が刀を振るうと消えてしまった。
この男には魔法が効かないのだろうか?
それならばと、クレストの使っていた投擲を使う。
鎌と同じ要領で剣を霊力で作り出し、投擲。
男はいきなりの遠距離攻撃にギョッとしたようたったがすぐに反応し回避。
その後も何十本も投擲するも数本が掠った程度だった。
「くっ!意外にやるじゃねぇか。オレに傷をつけるとはな!」
え?何それ。今まで傷つけられたことなかったのか?
カナと戦闘でもしたら、一秒と経たず、戦闘とも呼べないくらい簡単ににやられるよ?
「こんな事なら最初から本気出しておけばよかったぜ」
「まだ本気じゃなかったのか?」
こういう事には本気で取り組みそうな奴なのだが意外に色々考えてるのか?
それとも俺を殺さないようにしているのだろうか?
根は優しいタイプだったり?
「まだ六割だな!」
「じゃあ俺は五割だ」
「いや、間違えた。オレは四割だった」
「少し謙遜しちゃったからな、実は三割」
あ、違うわ。こいつ馬鹿だ。
優しいんじゃなくて馬鹿だから誰も殺さないようにしてるとかそういうタイプだわ。よくわからんが。
子供のようなやりとりが終了すると同時に再び接近。
刀を振るわれれば鎌で受け流し、鎌を振るえば受け流される。
そんなやりとりが幾度となく続く。
どちらかが先に受けそこなえば即終了。
互いに先ほどとは速さも力も段違い。
だが見える、戦える。
カナやリオの鬼畜のような攻撃に比べれば何てことはない。
このままではジリ貧だと感じ後ろに跳ぶ。
それは向こうも同じのようで距離を取った。
「お前、名前は?」
「聞く前に自分が名乗れよ」
「それもそうだな。オレはシュウ」
「・・・ロキア」
本当に戦闘狂のような発言に驚いた。
戦闘狂なんて漫画の中だけだと思っていた。
「ロキアだな。覚えたぜ。じゃあ続けるか」
「当然!」
再び接近ーーーしようとしたところで、周りが騒がしくなる。
「そこの二人!今すぐ武装を解き投降しなさい!」
国の治安と平和を守る騎士団のお出ましである。
戦争の時は何の役にも立たなかったくせにこういう時だけ仕事するんだから困る。
騎士団の中には一つだけ飛び抜けて強いオーラを放つ人間がいる。
聖騎士だろう。
「チッ!騎士団か。攻撃的な魔力を感知して来やがったな。おい、ロキア。今日はこれで解散だ。また来い!」
そう言ってシュウは暗闇の中に消えていく。友達か!
え?ていうか俺囲まれてない?騎士団に。
シュウ逃げた?
俺、捕まるパターンじゃね?
イヤイヤ、それは困る。
「武装を解かなければ実力行使で行かせてもらう!総員戦闘準備!」
「えっ、いや、ちょっと待っ」
「逃げるわよロキア」
え?俺の影の中から声が聞こえたと思ったら、いきなりカナが出てきた。
「《影渡り》」
カナに掴まれ、地面の中に引きずり込まれる。
視界が暗転した。
一瞬視界が暗くなったと思ったらもう既にカナの家に戻ってきていた。
「特定の影を繋いで移動できる魔法よ。転移の劣化版みたいなものね」
「助かったよ。ありがとう」
礼には及ばないわ、と笑顔で返してくれたカナだがその笑顔がいきなり恐ろしいものになる。
目が笑ってない。なんか聖騎士なんか比べ物にならないくらいのオーラが出ている。
「こんな夜中に出て行ってなにやってたの?怒らないから言ってごらんなさい」
いや、それ絶対怒るじゃん!
だってなんか怖いし!
「大丈夫よ。リオも寝ているし、そんな大きな音も出せないでしょう?」
「え?なんか手にすごい魔力を込めてない?絶対最上級魔法以上の魔力込めてるよね!」
「大丈夫。痛いのは最初だけだから」
何も嬉しくないよ!
そういうのは男が言うものだろ!
ていうか最初だけって何!?
段々快感に変わってくるとか嫌だよ!?
え?なにその手。
デコピン?おでこに?
なんだ、それならそんなに痛くないーーー
バッチーーーン!!!
・・・首から上が吹っ飛んだかと思った。
♢
時刻は昼頃。
カナとリオは二人で何処かに行ってしまった。
リオはお勉強〜♪とか言っていた。
俺はと言うと、料理ができない俺は王都に昼食を食べに来ている。
実を言えばまだこちらの世界の食べ物がイマイチわかっていないのでなにを食べるか迷っているところなのだ。
カナが作る料理はとても美味しく、俺が日本の料理や、洋食、中華に至るまでリクエストしてどんなものかを伝えれば完璧に再現してくれるのだ。
トコトンハイスペックである。
「それにしても、まだ額が痛いんだが。赤くなってたりするのかな?」
カナのお仕置きは意外に容赦なかった。
ただのデコピンだったのだが、一撃で気絶した。
めっちゃ痛かった。
この世界に来てから一番の痛みだった。
それにしても腹が減った。
「何かうまいものないかなー」
「オレが教えてやろうか?」
げ、背後から聞こえてくる昨日聞いたばかりのこの声は。
「オレの行きつけに連れてってやるよ!」
上から下まで黒の服装なのは変わりないが、昨日のような戦闘用の服装ではなく、おそらく私服だろうと思われる服を着ているシュウだった。
お前、センス悪っ!
異世界ファンタジーの服装がいまいちイメージ出来ません。
みんな冒険者とかで鎧やらローブやらを着てるからモデルとかも特にないですし。
ダレカオシエテクレナイカナー(棒読み)




