憑依者
意外に早く書けたので本日2本目です。
この前のリオの事件で自分の弱さを再確認した。
もっと強くなりたい。
カナは俺が強くなったと言ってくれる。
リオは俺の特訓に付き合ってくれてアドバイスもくれる。
でも、それじゃあダメなんだ。
自分の居場所を守るためには力が必要なんだ。
俺の時間は無限にある。
だが、この居場所にいられる時間は無限ではないのだ。
いつ終わりを告げるかもわからないのだ。
終わりを告げられそうになった時、俺は無力で何もできない。そんなことはあってはいけない。
短期間の間に強くなる。
幸いな事に俺は"死霊使い"だ。
死霊を殺した分だけ強くなる。
だが、それは弱いものを殺してもあまり意味はない。
自分よりも強いものをたくさん殺す必要がある。
この前の戦争で死んだ人達の霊を狩ろうとしたのだが、氷神滅狼は魂ごと相手を殺すらしく、霊など一人も残っていなかった。
近くにいい感じの心霊スポットなどがあればいいのだが、カナはそのような情報に疎く、リオもおばけは苦手らしく、手がかりがない。
王都に出てそのような場所がないか探してはいるのだが一向に見つからない。
今は一人ギルドへ行って情報を集めようとしている。
「あーあ、そんな場所あるのかなぁ」
冒険者ギルドは、前来た時よりも活気があり、冒険者たちも顔に生気がある。
戦争の後始末などの依頼はもうあまり来なくなったようだ。
うーん。どんな人に聞けばいいだろうか?
一番ギルド内で情報通な人とかいないのかな?
とりあえずはおなじみの受付嬢に話を聞くことにしよう。
「ちょっといいだろうか?」
カウンターに座り書類仕事をしていたのだろう。
ペンを動かしていた手を止め、顔をあげる。
すると受付嬢は眼鏡をしていた。
これが意外と似合っている。
「はい、なんでしょうか?」
受付嬢も疲れがそこまで溜まっていないようで安心した。
今回は仕事を押し付けられるなんてこともなさそうだ。
「この近くに心霊スポットや、墓地なんかはあるか?」
「心霊スポットですか、死霊族の巣窟という事でしょうか?それはこの近くにはありませんね」
うーん、やはりないのかな?
でもこんな王都なのだから一つや二つくらい心霊現象的なことが起きていてもおかしくはないと思うのだが。
「死霊族ではありませんが、この王都の中央に位置する、死者を安置している慰霊碑があるのですが、そこに夜行くとなにかが出るとかでないとか?そんなことを冒険者が言っていたような気もしますが確証はありません」
王都にそんな場所があったのか。
この王都よ王城がは微妙な位置にあるのだが、慰霊碑からなるべく遠ざけたかったとかならかわいい理由だと思う。
「慰霊碑か、ありがとう。ちょっと行ってみるよ」
「え、何しに行くんですか?ていうか依頼は受けないんですか?」
「依頼はまた今度カナと一緒に受けに来るよ。カナは大型の強力な魔物を狩りたがってるから、用意しておいてくれよー」
そう言ってギルドを後にする。
ギルドを出る際、受付嬢がいきなり大型から!?などと言っていたが無視しておいた。
慰霊碑か。あれか?
昔の英雄が蘇ってきたーとか?
それなら嬉しいな。倒せる自身はないけど、そういう奴らがいるということだけでもわかれば十分だな。
霊ならば夜まで待ったほうが良さそうだな。
♢
王都の中央に位置する慰霊碑。
時間は深夜と言ったところだろうか。
カナにはちょっと出かけてくるくらいな感じに言っておいた。
見た感じ何かおかしい点があるというわけでもない。
耳をすましてみたり、目を凝らしてみたが、うめき声や人魂が出てくる何てこともない。
ガセネタか?
もともと信憑性が高かったわけでもないし、一度《索敵》を使って、何もいないのを確認したら帰るか。
霊力の薄い膜を自分の体を中心に広げていく。
しかし、半径約五十メートルまで範囲を広げた瞬間に霊力が掻き消えた。
「え?」
おかしい。俺の索敵は最大三百メートル以上の範囲を調べられる。
いきなり掻き消えたのは誰かの介入があったとしか考えられない。
「お前、オレと同類か」
いきなり背後から男の声が聞こえた。
咄嗟に前に跳び、体を反転させ声の聞こえた方に注意を向ける。
「最初はただの冒険者かなんかだろうと思っていたがなんだ違うじゃないか。と同じ死体に憑依している中身だけの存在」
俺の事を見抜いている。
目を凝らすと、一人の男が現れた。
髪は銀色で少々ツンとしている。
顔はかなりのイケメン。
背は普通。体はゴツくはないが、ほどほどな筋肉。
服装は上から下まで黒。
腰にはこの世界では珍しい刀を二本携えている。
「オレと同じことをしているやつがいるとは思わなかったぜ」
「ハッ、世界ってのは広いからなそんなこともあるだろ」
同じことをしている。つまりはこいつも霊なのだろう。
雰囲気でわかる。こいつも強い。
カナのようなチートではないが、俺が全力で戦って勝てるかどうかといったところだろう。
「こんな時間にこんなところに何しに来たんだ?この時間にオレ以外でこんなところに来るやつ普通いないぜ」
「別に、今日はそんな気分だったんだよ」
一触即発と言った雰囲気ではなく、普通に会話をしているだけ。
すぐに襲いかかってくる感じてはないので安心したがこれではこれの戦闘力アップには繋がらない。
だがこの暗闇の中で戦闘をするのは俺にとってはかなり不利だ。
向こうは全身黒の服なので暗闇に溶け込まれるとまずどこにいるかわからない。
索敵を使っても先ほどのように掻き消されてはなんの意味もない。
「どうやって索敵の霊力を無効化したんだ?」
「なに、魔法も斬れる。それだけの話だ」
うわあ、魔法を斬るとか剣を使う主人公とかがやりそうなヤツだわー。
そのうち斬れない物なんかねぇとか言いだすかもしれない。
「お前の魔法、弱かったぜ。ちょっと刀を振っただけで消えちまった」
「へぇ、あの程度なら俺にだって簡単にできるさ」
「でもお前、弱いだろ?」
は?なんかイラついた。
挑発してんの?
ちょっと魔法を斬ったくらいで調子に乗ってんの?
「少なくともお前よりは強いよ」
「へぇ、言うじゃねぇか!だったらどっちが強いか試してみるか?」
《限界突破》、《五感強化》、称号"邪神族の墓地の孤独幽霊"発動。
続けて霊力を具現化し黒い大鎌を作る。もちろん完成度は最大。
《付与》、体と鎌に霊力と光属性の魔力を最大まで体に纏う。
光属性の魔力を纏ったことで俺の周りが少し明るくなる。
完全に戦闘モード。
手抜きなんてしない。
あいつも刀を二本抜き、二刀流の構えというやつをしている。
主人公属性なのがすごいむかつく。
「「・・・」」
一瞬の静寂。
ズガンッ!
二人同時に地面を蹴り、接近。
小細工なしの真剣勝負が始まった。
くたばれイケメン!
三章の2話目にしてバトルパートの雰囲気。
さて、ここからどうなるかお楽しみに。
感想等いただけるとありがたいです。




