表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
二章 王都編
17/82

おしごと

 カリカリとひたすらに聞こえる音。

 いったいこの音を何時間聞いているのだろうか?

 いや、もしかしたらまだ一時間と経っていないかもしれない。

 だが、長く感じるほどにこの時間に嫌気が差してきた。


 ギルドで受けた計算力があれば受けられた依頼。

 少しでも人が欲しかったのだろう。

 現在は王城、リクレイフィア城の広い図書館のような所で、十人を越える人達がひたすらに机と向き合ってペンを動かしていた。

 ちなみにこの王都の正式名称は王都リクレイフィアである。


 軍事費、予算、税金の使い道等他にもたくさんの計算をさせられる。

 ちなみに文字は日本語ではないがなぜか読める。

 だがもう嫌だ。

 数学は苦手ではないが、ひたすらに計算だけをやらされても面倒なだけである。


 この国は教育にそこまで熱心ではないので計算を出来る人が少なく、王城でもこのような仕事は溜まっていたようだ。

 ギルドでは、受付嬢がこのような仕事をこなしているらしい。

 そりゃ、人手が欲しいわ。

 こんな仕事が脳筋が多いイメージの冒険者には出来るはずがない。

 だが、人が足りていないので、少しでもかじっていれば駆り出される。

 少しできる程度なのにバカみたいな量の仕事を任される。

 結果、脳は疲れ、精神的にも疲れていく。

 だが、報酬は少ないのでもっと働かなければいけない。

 この無限ループのせいで冒険者たちには元気がないのだろう。


 ふと隣を見てみるとものすごいスピードで計算をしているカナ。

 ついこの間まで現役高校生だった俺よりも計算早いってどんなけハイスペックなんだよ。


 だが、そのカナの計算スピードを持ってしても消化しきれないほどの書類。

 しかも、戦争と無関係の仕事まで入っている。

 王城でも経理の仕事が追いついていないのでついでにやらせている感じだろう。


「ふぅ、なかなか終わらないわね」


 カナはペンを置き、体を伸ばす。

 その際双丘が強調されているのだが周りはそんな事を気にしてる様子もない。

 いや出来ないほど集中しているの方が正しいか?

 でも今のは目の保養になった。

 これであと三ヶ月は戦える。

 最近は勉強なんて全くしていなかったが、大丈夫なはずだ。

 うおおおおおおー。


「すごいスピードね。私より速い」


 計算スピードを褒められてもなー。

 ぶっちゃけただの足し算引き算だし。桁が馬鹿でかいだけで。

 むしろ学生ですらないカナがここまで計算ができる方にびっくりしたんですけど。

 周りの冒険者や官僚達は見るからに計算が遅いのにカナだけ凄いハイペースなのだ。


「カナも十分速いぞ」

「まあ、一応勉強は出来るからこれくらいわね」


 カナは数学だけでなく全ての教科において高いレベルなのだろう。

 現役高校生レベルとかどんだけだよ。



 そんなこんなで俺とカナの分のノルマは終了したのだった。

 周りを見てみるとまだ必死に計算している人がほとんどである。


 ところどころ居眠りをしている人がいるがかなりうまく隠しているので監視をしている人には気付かれていないようだ。

 その中には先ほど声を掛けられた銀髪ロングの娘もいる。

 あの後結局ギルドに仕事を押し付けられた感じだろう。


 この仕事はノルマ達成制なので眠っていては永遠に終わらない仕事なのだが大丈夫なのだろうか?


「あの娘、計算は結構早くて最初は凄かったんだけど少ししたら飽きたらしくて眠り始めたのよ」


 カナも同じ事を考えていたようだ。

 カナ以外にもなかなかにハイスペックな女がいるなんて。

 この世界の男情けなさ過ぎなんですけど。


「ほら、私たちのノルマは終わったんだからさっさと帰るわよ」

「討伐系の依頼はいいのか?」

「今ギルドに行っても違う仕事押し付けられるだけでしょ」


 完成した書類を持って監視の人に書類を提出。

 周りの人がもう終わったのか!?的な感じで驚いているが気にしない。

 これでもかなり時間をかけた方なのだ。


 監視の人から、依頼達成の証明書を受け取る。

 依頼はこのように達成したと証明できるものがなければ依頼達成とはならず報酬も支払われない。


 王城を出るときに魔法の反応があった。

 これは霊力を使用した探索系の魔法?

 城内で誰かが使っている?

 密偵か?


「カナ、これはどういう魔法だ?」

「あら、あなたも気が付いたの?これはおそらく盗聴系の諜報活動をする時に使う魔法よ」


 可能性としては城の使用人か、依頼としてきた冒険者達の内の誰か?

 依頼とはいえ警戒しなさ過ぎだろ。

 素性もしれぬ奴を城に招き入れるなんて。


「近いうちにまた戦争が始まるかもね」


 それはまた面倒な。

 俺には関係ないけどな!







 ♢





 あの後、ギルドに依頼の達成報告をしてカナの家に戻ってきた。

 受付嬢にそんなに早く終わったんだったら他の依頼も!と言われたがどれも面倒な仕事ばかりだったので無視してきた。

 カナも討伐系の依頼が受けられなかったからか面白くなさそうな顔をしている。


 俺は、霊体になって体をいろいろな形に変えて遊んだり、霊力や魔力を体の中で循環させている。

 これらを行う事で何か役に立つかもしれない。


 カナは俺の修行の内容を考えてくれているようだ。

 基礎は教えたと言っていたので実践や応用についてをやろうとは言っていたがカナはその辺は感覚でやる天才タイプなので上手く口では説明できないらしい。


 すると突然カナは何かを思いついたように立ち上がった。


「迷宮に潜りましょう!」

『迷宮?』


 それはあれか?魔物や宝箱が存在し、冒険者が実力を試したり、魔法道具マジックアイテムを探しに行ったり、魔物を狩って素材を集めたりとかするやつか?

 奥に進むほど敵の強さが上がっていくやつ?


「ええ、迷宮。ギルドは変な依頼を受けさせられるからね、迷宮な大丈夫でしょ」

『近くにあるのか?』


「この家から王都を挟んだ反対側にあるわ。そこまで遠くはないから今からでも行けるわよ」


 今の時間帯は夕方。

 行けなくはないが帰りは夜中か下手をすれば早朝になってしまうだろう。

 別に俺は霊体になれば問題ないしカナも人間ではないので睡眠は一日くらい取らなくても大丈夫なのだが、寝ないで迷宮に潜っている冒険者がいるなんてよく分からない噂が広まって目立つのは避けたい。


 この王都リクレイフィアはあまり人間以外の種族は住んでいない。

 別に禁止しているわけではないのだが、歓迎されているというわけではない。


 俺たちがエルフや獣人のような種族ならばまだよかっただろうが、魔族ともなれば敵だなんだと追いかけ回されるかもしれない。


 そんな事になるのは避けたいので明日になるのを待ち、朝から夕方まで迷宮に潜るとかの方が怪しまれなくていい。


『今日は小難しい計算してなんか疲れたから明日でいいよ』


 なるべくこの事はカナに伝えない方向で行こう。

 最悪カナは国を敵に回しても圧勝できるだろう。

 それならそれでもいいのだが、世界的に危険な人物だとみなされ世界から追われるなんて事にもなりかねない。

 しかもカナはその追手すら軽く倒してしまうだろうから余計にタチが悪い。

 カナはきっと素でやらかす。

 日本のラノベでもダークヒーロー物などはあったが流石にヒーローですらない悪人になるのは勘弁だ。


「そうね、時間は全然あるんだから明日でも大丈夫よね」

『ああ、そうだよ』


 カナも一応納得してくれたみたいだ。


「じゃあ、明日は一日中迷宮に潜ってるつもりだから明日に備えて早くご飯を食べて寝ましょうか」

『りょーかい』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ